295 第23章第22話 時空を超えて
「よし! じゃあ、改めて全員で出発するぞ! 行き先は、地球西暦1970年の3月1日じゃ。場所は、大阪府吹田市千里丘陵の万博会場にある人工知能研究展のメインデータ保管室じゃ」
「なあ、博士はん? なんで、3月1日なんや? 1970年が大阪万博の年やというのは、何回も聞いたんやけど、日付が出たんは初めてやね」
「えっとな、大阪万博は1970年の3月15日~9月13日まで開かれたんじゃ。ただな、ワシのタイムマシンはなかなか仕上げが出来んで、3月までモタモタしてた。そして、3月1日にワシは忙しさのあまり、人工知能研究ブースの端末デバイスを持ち帰ってしまったんじゃ」
「とゆうことは、3月1日にあの人工知能試作機0099は、博士のデータを取り込んだってことですか?」
「多分、あの日の夜に間違いないはずじゃ。ワシは、次の日の朝には端末デバイスをちゃんと返したからな」
「なあ、ところで博士はんは、いつタイムマシンの事故に遭ってとばされてしまったんや?」
「ん? ワシか? それはな、大阪万博の開幕の前日に、最後の試行実験をしようと思って自らタイムマシンに乗ってボタンを押した時なんだ」
「つまり、3月14日ってことなんやね」
「ああ、確かに、この時は間違いなくタイムマシンは動いたんだ。ただ、現在の月の世界に到着したら機械にセットされていたはずの貴重な金属キューブが無くなっていたんだよ」
「……そっか、そういうことなのね!」
「え? 記誌瑠ちゃん? 何か分かったのか?」
「ええ、博士! きっとタイムマシンのキューブは最初から人工知能によって、偽物とすり替えられていたのよ! 1回使ったら消滅するものにね。しかも、回路も微妙にいじられていて、半異次元転送回路が組み込まれていたみたい」
「記誌瑠君、それはどういうことだい?」
「社長! だから、博士は月まで来れたんですよ!」
「なあ、記誌瑠。俺にも分かるように話してくれよ」
「あ、えっとね……タイムマシンって時間を行ったり来たりするものだから、本来場所の座標は固定なの。もしも、過去に戻ったり未来へ行ったりしても、現在の同じ場所に出現するものなのよ」
「え? おかしいじゃないか、記誌瑠よ。博士は、地球にいたんだぞ。いくら事故だといっても、タイムマシンでは地球以外に行かないだろう?」
「そうよ! それであの0099は独自の回路を組み込んだの。つまり異次元転送のね。異次元なら場所は自由に選べるわ」
「だけどよ、俺達の居た月の世界は、異次元じゃないんだろ? なあ、社長? そうだよな?」
「落ち着きなさい、徹君。僕達は異次元に居る訳じゃないから。ね、そうですよね、記誌瑠君」
「も、もちろんです。それで、私は“半異次元転送”って言ったんです」
「そういうことか、いやあーさすが記誌瑠ちゃんだな。これで、すべての辻褄が合うぞ! ワシは、異次元転送に似た装置で、時間と場所まで、移動させられたんだな。……そっか、だからワシはすぐにあのタイムマシンを基にして異次元移動シャトルが作れたんだな。そっか、これも奴の、0099の予定のうちじゃったのか」
なんか、また、ウチだけがポンコツになってるような気がするわ。せっかくラビちゃんがウチとドウキしたのに、やっぱりウチにはチンプンカンプンなんや。
「……えっとな、いくら聞いてもウチは分からんから、早よ、出発しようや!」
「あははは、そうじゃな。それじゃあ、みんなしっかり椅子に掴まっててくれよ。今回は、タイムマシンにワシの異次元転送回路も組み込まれていたから、場所も移動するぞ! 時間は……そうだ、ワシが帰った夜の7時じゃ!」
すぐに博士はんの秒読みが開始されたんや。
「10秒前…………5秒前……4……3……2……1 時空跳躍開始!」
ひゅうーーーーんーーーーーーーーーーーーーー……………
(つづく)
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