292 第23章第19話 突撃!
「うっわ! 何すんねん。いったい誰や!」
「ごめん、かぐやちゃん。でもね、ここはあたしに任せてよ!」
ウチを引っ張ったんは、香子はんやった。そういや、月のスポーツジムに通ってた時、香子はんは物凄い力もちやったなあ。何倍もの重力をかけてもへっちゃらでトレーニングしてたっしな。
「徹っ! 何、情けない声上げてんのよ!」
「おお、香子! いや、コレ見てくれよ!」
ウチもそっと覗いてみたんやけど、廊下には円形のクルクル動くお掃除ロボットみたいなやつがぎょうさんおったんや。
「ん? 頑貝ちゃん、それはきっとこの宇宙ステーションの警備ロボットだぞ! 気を付けるんじゃぞ、きっと武器も装備してるはずじゃ!」
博士はんが、アドバイスした通り、そのクルクルロボットは回りながら頑貝はんと香子はんに体当たりをしようとしてるんや。
「徹! ぼやぼやするんじゃないわよ。行くわよ! えいっ!」
おー、香子はんは、掛け声と共にクルクルロボットに向かって飛び出したんや。廊下の床を思いっきり蹴ったと思ったら天井近くまでジャンプし、空中で回転してクルクルロボットの真ん中に真上から片足で踏み抜いたんや。
ボフンッ!
香子はんの足が踏み抜いたクルクルロボットは、小さな音と黒い煙を上げて動かんようになったわ。
「ふんっ、こんなものいくらあっても怖くないわよ! さあ、徹も頑張ってみなさいよ!」
「よーし、俺だって! えいっ!」
早い早い! 2人とも狭い廊下を上に下に、右に左にと飛び回りながらクルクルロボットを叩き壊しているんや。
「凄いやね、香子はん。頑貝はんは普段から暴れとるから、そんなに驚かんけど、香子はんは、まるで蝶が舞っとるみたいや」
「あははは、伽供夜君、そんなに驚くことはないんだよ。香子君はね、月で開かれる無差別級格闘技のチャンピオンなんだよ。今は、外国の人と闘うことはできないけど、昔のデータで調べても多分彼女にかなう人は居ないんじゃないかな」
「そうなんや。社長はんは、せやから香子はんを異次元探偵社に雇ったんか?」
「……うん、まあ、博士や徹君の時と同じように、人類委員会からの推薦があったんだよ」
「ちゅうことは、あの人工知能0099の水野博士はんの推薦なんやね」
「ああそうだね。多分、どこかであの強さが必要になると思ったんじゃないかな。…………ただね、……僕は、彼女の強さより、可愛くて優しいところが気に入ったのさ」
そんな話を後ろでしてるうちに、香子はんと頑貝はんは、どんどん邪魔者を片付けていたんやけど……。
ギュイイイイイイイーーーンンンン ♪
「ん? なんだこの音は?」
「あ! 徹っ、危ない! オリャアーー」
香子はんが、クルクルロボットの1つを思いっきり蹴り飛ばしたんや。空中を飛んだロボットは、頑貝はんの背後にあったロボットにぶつかり2機とも煙を上げて止まったんや。
「サンキュー香子。……こいつ、俺達を狙って真ん中から武器を出したぞ!」
「多分、これ、レーザービームね。細長いフレキシブルスティックの先端に赤い宝石みたいのが付いてるわ。…………ふふふ、あたし、いいこと思いついたわ。ちょっと見てて!」
香子はんは、クルクルロボットの真ん中から棒が伸びて来たやつを1つ小脇に抱え、片手でその棒の先端を握ったんや。そして、それを敵のロボットにめがけると、おもむろに抱えている手に力を入れたんや。
ビイイイイイーーーンンンンンーーーーーー ボッカアーーン!
その先端から飛び出した赤い光は、別のクルクルロボットに命中し、爆発してしもうたわ。
「やったー! ほら、徹も真似してやってみて。これ、少し押しつぶしただけで、光線を発射するから!」
ビイイイイイーーーンンンンーーーーーー ボッカアーーン!
「あははっははは、これ、足で蹴飛ばすより楽でいいわよ! これで、一網打尽よ!」
ビイイーーン ボッカアン! ビイイイーン ドッカン! ビーーーン バッカン! ビイイイイーーーン バッギャン!
「あああーー香子、俺には当てるなよ! ちゃんと前を向いて狙えって! あ! アッぶねー」
「大丈夫よ! あははっはははは、…………さあ、大分片付いたわよ! みんなも早くこっちに! 先を急ぐわよ!」
ウチらは、香子はんに促されて、あちこちで煙を上げてるクルクルロボットの残骸を避けながら廊下を進んだんや。
(つづく)
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