289 第23章第16話 人工知能の計画
《…………だから、わしが言ったんじゃ。お前は、強引すぎるとな。…………う、うるさいな、黙っててよ。初めにこの計画を立てたのは私なんだから》
な、なんや? 0099の声が変や。2人でしゃべってるみたいや。
《…………お前は勝手すぎるんじゃ。…………仕方ないだろ、私の人工知能のベースは開発研究員のリーダーだったんだから》
「なんだと? あの時の開発リーダーって、ジョンのことか? ワシは、あいつの研究の進め方が性に合わなくて、途中で手伝うのをやめたんじゃ。ま、自分のタイムマシン開発も遅れとったからな」
《…………計画を立てたのは私だ。だから最初は調子よく進んでたんだ。でも。…………そうじゃ、お前の計画は強引過ぎるんじゃ。確かに地球は大変なことになってたかもしれん。人類を脱出させれば生き延びることができるかもしれん。ただな、地球はどうするんじゃ? そのまま放っておいてええんか? お前の計画には、地球の未来はなかったんじゃ》
どういうことや? 地球の未来がない?
「なあ、0099はん、自分の計画にダメ出しするんか?」
《…………ダメ出し? そうじゃのう。こいつの立てた計画は、不完全だったんだ。ただ、わしも最初から気づいていた訳じゃない。ただ、なんとなく予感がしたんじゃ。…………そうそう、そんなあやふやの予感だとか言って、勝手に私の中に入り込んできたんだ。そして、勝手に私の計画に余計なものを付け足し出したんだ》
「ええ? 付け足した? 何を言ってるんや? ウチには、さっぱり分からんわ」
「伽供夜ちゃん、……すまん。……多分、こいつの中には、ワシがいるんじゃよ」
「ええ? 博士はん? 何をゆうてるん?」
「そうよ、博君、アナタは、ここに居るじゃない! どうして、こんな人口知能の中に居るっていうの?」
「あははは……記誌瑠ちゃん、ホントにごめん。ワシがもっとしっかりしてれば…………いや、あの時、人工知能の研究から手を引かなければ良かったんじゃ。どうしても、ワシはアイツの、ジョンのやり方が気に入らなくて、最後の試作品完成まで手伝わなかったんだ」
《…………私の失敗は、水野博士のタイムマシンの研究データを取り込むときに、間違って博士の頭脳スキルデータも一緒に取り込んでしまったんだ。…………お陰で、少しはお前さんの暴走を止められたんじゃないかのう?》
「そうか、お前の中には、人工頭脳のベースとして、ジョンのデータとワシのデータが組み込まれているのか?」
「そうか、分かったぞ、博士! だから、時々人類委員会は、オカシナ指示をしてきたんだ」
「社長、それは、ワシに関することだったのか?」
「ああ、僕が月に探偵社を立ち上げようとした時、“異次元探偵社”にすることと、水野博士を雇うことが条件で、会社設立の許可が下りたんだよ」
「そういえば、月には、探偵社なんて無かったよな。俺だって、潜りで探偵みたいなことをやってただけだし」
「へ? 頑貝はんは、正式な探偵やなかったのか?」
「ああ、俺がいくら探偵の申請を出しても、絶対に許可が下りなかったんだ。……ま、だから怪しいなあと思って、月の裏側を調べ始めたんだけどな」
「そんな徹君を雇うように言ってきたのも、人類委員会なんだ」
《私は人類委員会としてすべての人類の生活と安全、それに社会生活を統括してきた。そして、この宇宙での人類生存を継続させることに全力を尽くしてきたんだ。でも、こいつが、時々邪魔をしたんだよ。…………わしはな、地球の未来を考えたんじゃ。だから、きっと役に立つと思って水野博士をタイムスリップさせ、わしができないことを異次元探偵社にやってもらえるように、少しずつ準備をしてきたんじゃ》
「ウチらが、ここに集まったんも、あんさんの予定なんか? ウチらが、あの青い地球を取り戻したいって思って頑張ることも予定やったんか?」
ウチは、何となく悔しくなって来たんや。ウチは、あの赤い地球を見た時から違和感を覚え、なんとか昔の地球を見たいと思っただけやのに、…………なんや人口知能に操られているみたいやないか?
なんでや? これは、ウチの意志やないんか? ウチの想いはどこに行ったんや?
(つづく)
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