278 第23章第5話 宇宙でも異次元ミッション開始!
「……起きろよ! おいってば! 起きろよ、伽供夜!」
「う、うう……ん?」
「みんなも、起きろってば! ……あ、椅子からは立ち上がるなよ!」
「な、なんや? ここはいったいどこなんや?」
「キャアアアアアー、息は、息は?」
「僕に掴まって!」
「床がないわ! 私達、浮いてるの~?」
「壁も天井も……どこに行ったんじゃ~?」
『きゅるるるるる?』
「だから、みんな、落ち着けって!……ほら、ヘルメットを脱いでも息はできるぞ! ただな、床は無いみたいなんだ。だから、椅子から勝手に降りるなよ!」
なんや? 頑貝はん、今までは自分が勝手なことばかりしてはったのに、なんか偉そうやね。
まあ、とにかく先に目覚めて、多分勝手にいろんなことを自分で試したんやろな? きっと、椅子からも勝手に降りて、危ない目に遭ったやないかな?
とにかくウチらが座っとる椅子だけは見覚えがあるんや。あの宇宙ステーションでウチらが閉じ込められた部屋にあった椅子や。部屋の中央に7脚の椅子が横1列に綺麗に並んどったんや。座った順は、頑貝はん、ラビちゃん、ウチ、香子はん、社長はん、博士はん、記誌瑠はんやった。
せやけど、椅子以外には何もあらへんのや。床も壁も天井も。もちろん、近くに宇宙ステーションなんてもんは、さっぱり見えへん。ここは、宇宙空間そのものなんや!
「あ、ホントね。ヘルメットを脱いでも息ができる!」
「そうさ、……あ、香子、ヘルメットは離すんじゃないぞ! いつ、また使うことになるかもしれんから、しっかり持ってるんだぞ」
「ええ? そんな~あたし、うっかり落としてしまいそうだわ」
「なあ、頑貝ちゃん。ヘルメットは被ったままにした方がええと思うんじゃ。息苦しいと思ったら、このヘルメットの横のボタンを押すといいぞ。これを押すと、ヘルメットの前面のシールドが格納されて、脱いだ時と同じ状態になるんじゃ。因みに、長押しすると遮光シールドが自動でかかるから、眩しかったら試してみておくれ」
「さすが、博士はんの発明した宇宙服やね。隅々まで行き届いとるわ!……そういえば、社長はん、人類委員会からのミッション内容って、なんやったの?」
「そうそう、落ち着いたらみんなに説明しようと思ってたんだけど、徹君が次から次へと先走って進めてしまうから、もうすっかり1つ目のミッションに入ったみたいなんだよね~」
「ええ? 俺のせいなの? 俺、ひょっとしてミッションのボタンを押してしまったの?」
そういえば、頑貝はんの椅子にだけ、変なボタンが付いてたなあ。ひょっとして、あの椅子には社長はんが座らんといかんかったのやないか?
「さっきも言ったけど、あの宇宙ステーションのワシらが入った部屋には、異次元転送装置があったんじゃ。ワシが作ったものと同じ構造をしとったわ。……多分だけど、頑貝ちゃんの椅子に付いてたボタンが、異次元ジャンプの起動スイッチだったんだよ」
「やっぱり頑貝はん、勝手にあちこちボタンを押すから……もうー、予定が狂ったらどないするねん!」
「いいじゃんか、別に……予定なんか、最初から分からんかったんだから。……それより、社長、今回のミッションの内容を教えてくださいよ!」
「ああー分かった。今回のミッションは…………“月のウサギを泣かせるな!”だ」
「見て! みんな! あそこに月があるわ!」
香子はんが、斜め上の方を指さしながら叫んだんや。そこには、大きな月が浮かんどったわ。地球から見えた月の何十倍も大きかったと思うわ。濃紺に染まる宇宙空間に、ひと際黄色く光るまあるいお月様やった。
ウチが元々住んどった月にも似てるけど、異次元探偵社がある月にも似てるような気がしたんや。でも、どことなく蛍光色に光る様は、まったく違った月の世界を見てるような気もしたんや。
しばらくウチらは、綺麗な月をボンヤリと眺めていたんやけど、ラビちゃんの声で異次元に来たことを思い出したんや。
『……あれ……ケイちゃんじゃないかしら………………』
ラビちゃんの見てる方に目をやると、そこには大きな月に浮かぶウサギの姿があったんや。その綺麗なウサギは、耳に大きな花の飾りをつけておったわ。
(つづく)
最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




