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276 第23章第3話 頑貝はんの失敗?

「……ここで行き止まりだ。香子(かおるこ)、どうするんだよ? この先には行けないぜ!」


「えっと……ちょっと待って。……あのね、左側に何か部屋があるようになってるんだけど?」

「左か?……うーん、やっぱり四角い切り込みのような跡はあるんだけどなあ~」

「そういえば頑貝(かたがい)はん、この行き止まりの廊下の壁にも四角い切り込みがあるんやけど……」


「そうか、やっぱりそうなんだ! ここは行き止まりなんかじゃないぞ! 見ろ、あの切り込みを。きっとあの切り込みの向こうには部屋や廊下があるんだ!」


 なんか頑貝はんが、力いっぱいに叫んでるけど。……うん、これは“知ったか”ね。……じゃあ何とかしてほしいんやけどね~。




「なあ香子はん、その地図ではここはどうなってるんや?」

「えっとね……そうね、やっぱり地図では、この突き当たりの左側が部屋になってるわ。それに廊下だってまだ先に続きそうなんだけど……」


「え? 続きそうって?」

「あのね、あたしが見ている地図は、ここで切れてるの。……うーん、切れてるっていうか、この廊下の先の地図は無いのよ。なんか、あたし達に見せないようにしてるみたい」


「そういえば社長、その地図って、人類委員会からのメールに添付されてたって本当なんですか?」

「ああ記誌瑠(きしる)君、間違いないよ」


「と、言う事は、この宇宙ステーションは、人類委員会の管理にあるということなんじゃないんですか?」


「そうね、記誌瑠ちゃんの言うように、人類委員会は、私達の暮らしに入り込んでいろいろなものを管理してるわね。……それじゃあ、あのベスタで見たいろいろな惑星の資源やエネルギーなんかも、きっと管理してるんじゃないかなあ」

「確かにな、香子ちゃんの言う通りだと、ワシも思うんじゃ。ただ、それを裏付ける証拠というものが無いんだよ」


「博士、何を言ってるの? この宇宙ステーションの内部の地図が、人類委員会からのメールに添付されていたということが、もう証拠じゃないですか!」

「ただなあ~それと、我々のすべてが人類委員会に管理されているというのは、どうも結びつかないんじゃないかなあ~」



 確かに記誌瑠はんや風見はんの言う事も分かるんやけど、博士はんは科学者やから確かな証拠も無しに感だけで決めつけれんちゅうことも分かるんや。



「……でもな、博士はん。人類委員会が、ウチらにこの宇宙ステーション内の地図をよこしたちゅうことは、少なくともウチらには、行って欲しい場所があるちゅうことやないやろか?」

「行って欲しいところ?」


「そうや、香子はん。その地図で、何か印が付いてるところは無いんか? 丸印でも、何でもええんやけど、他と区別できそうなもんはないんか?」



 香子はんは、もう1度タブレットの地図を眺めとったわ。画面のあちこちを触ってみたり、スイッチを切ったり入れたりもしてたんやけど…………。



「香子はん? いったい何をしとるんや?」

「何って、このタブレットね、カメラが付いてるのよ。このカメラで、この行き止まりの壁をちょっと映してみようかなって…………」


 香子はんは、タブレットを正面に向けて見てんのや。カメラを起動させて、ただ何もない壁を画面に映し出してるだけなんやけど……。



「あ! ああああ!」


「どうしたんだ? 香子君!」

「見て! アナタ!」

「こ、これは……」



 社長はんが香子はんの持っているタブレットを覗き込んで、えらい驚いてるんや。ウチもすぐに傍に駆け寄って、その手元を見てびっくりしたんや。


 なんと画面には、実際には壁にない赤いボタンが映っとったんや。それは丁度、この廊下の突き当りの左側の壁やった。

 さっき、香子はんが、地図ではこの辺りに小さな部屋があるみたいやってゆうてた場所や。


「ほら! やっぱり俺が言った通だろ! ……えっと、この辺かな、それポチッと!!!」


「あ? あ! 頑貝はん、押してしもうたんやね!」

「え! (とおる)ってば~」

「頑貝君、なんてことを!」

「あああああ~」


「どうしたの? みんな。ここの部屋を開けるボタンだよ、きっと……」


「もう、頑貝はん。そないなこと調べんと分からんやないか! もし、そのボタンが、何か別な物のスイッチだったりしたらどうすんのや?」

「え? 別な物って?」


「例えば、爆弾とかやったらどうすんのや!」


「ええええ? 爆弾! かぐやちゃん?…………あたしの持ってる画面の赤いボタン、引っ込んでるわ!」

「そりゃあ、頑貝はんが、ボタンの付近の壁を押したさかいになあ~」



 ウィイイン……ウィイイン……ウィイイイン……



「え? 何? この音?」

「落ち着くんだ、記誌瑠ちゃん」

「え! いやよ~ 博~君! 私、こんなところで爆発したくないわ!」



 そんなに大きな音やないけど、確かに頑貝はんの押した“赤いボタン”に連動してるみたいやね。ウチらは、壁や天井、床ンなんかもキョロキョロ見渡しながら、いつでも逃げれるように準備したんや。


『逃げるって……ワタチ達の逃げ場は、もうないみたいよ!』

「え? ラビちゃん、なんやて?」


『だって、ワタチ達が来た方向の廊下を見てみなさいよ。もう、壁のような物が出来あがって、引き返せないわよ!』


 なんと、ウチらは廊下の行き止まりのところで、後ろ側にも壁が出来て、閉じ込められたみたいやね。ウチらが、前の方ばかりに気をとられていたんで、後ろの変化には気づかんかったんや。


 ギュウウウウイイイイイイイイイ…………


 異様な音が、少しずつ大きくなってきたんや。いよいよ、ここが爆発するかも知れんわ! ウチもみんなも、もう立ってられんようになっとる。これから起きることを想像すると、腰が抜けてしもうたんやね。もう、ダメや…………。




(つづく)


 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
え? え? 閉じ込められたのでしょうか? やはりこれは委員会の罠だったのか……。 (。ŏ﹏ŏ) 早く切り抜けられると良いのですけど……。
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