273 第22章第24話 考えるより行動や!
「……そ、そうだね。さ、流石、伽供夜君だ……」
あれ? 社長はん、なんか顔が引きつってないか?
「社長はん、何を驚いてるんや? 別に、宇宙人や無いんやから……ま、会ってみんと分からんけどな……多分地球人が乗ってるんやから嬉しいんとちゃうんか?」
「う、うん。でもね、伽供夜君、今の時代は宇宙に行ける人間っていない事になってるんだよ。我々は、地球を脱出した時から、宇宙船を作ることが禁止されたんだ。もしも、作れたとしても、その惑星圏から抜け出すことができなかったんだよ」
「ああ、それは、ウチらは体験してるやさかいに、分かるわ」
「だからさ、今、目の前に、大きな宇宙船が居てさ、しかも地球の衛星軌道を飛んでるなんてことを見ても、素直に人間が乗ってるなんて考えられなかったんだよ」
まわりを見ると、他のみんなも社長はんと同じ意見らしくて、思いっきり頷いてたわ。
「……でもな、あないな大きな宇宙船だったら、誰かが操縦しないといかんのやないか?」
「うーん、確かになあ~伽供夜ちゃんの言うのももっともだなあ。……人間か……。ワシは、少し複雑じゃな~」
「え? なんでや? ウチらの他に人間が、この宇宙に居たら、凄いんやないか?」
「あの宇宙ステーションは、基本的な部分はワシが設計したんじゃ。……でもな、ワシは作れなかったんじゃよ」
「え? でも、それは、博士がタイムスリップしたからじゃないの? 作ろうと思えば、今だって作れるんじゃないの?」
「ああ、ありがとうな記誌瑠ちゃん。……でもね、あそこを飛んでる宇宙ステーションは、ワシの想像を遥かに超えてるんじゃ。付属のエンジンだったり、翼のように見える太陽光パネルだったり、それにな、中央部分の居住区は、ここから見るだけでも物凄い技術力なんだよ。今のワシでも、あの宇宙ステーションは絶対に作れんかな……」
「そ、そんな~……博士~…………」
博士はんも少し落ち込んでるように見えたんやけど、傍にいる記誌瑠はんは何倍も悲しそうな顔をしとるわ。記誌瑠はんは、博士はんの技術力が、天下一品だと思ってるから、ガッカリしたんやろか?
『カグちゃん、その顔は、またポンコツなこと考えてるわね』
「なんやラビちゃん。ウチは、ただ記誌瑠はんが可哀そうかなって思っただけやし……」
『違うのよ。……キシルちゃんはね、博士が可哀そうだと思ったのよ』
「え? だって、悲しそうにしてるのは、記誌瑠はんやで?」
『あのね、キシルちゃんは博士を信用してるの。だから、どんなことがあっても、博士に作れないものなんて無いって思ってるのよ。でもね、博士は、自分で勝手に自信を無くしてしまっているの。それが悔しいのね。きっと、自分がついていながら、何もできないことが悲しいのよ』
「……そうなんか……」
ウチには、あんまり理解できへんかったけど、“博士はんを信用してる”ってことは、よう分かったんや。だって、ウチだって博士はんを信用してるんや!
「なあみんな、あんまり細かいことを考えんと、行って見ようやないか? あの宇宙ステーションちゅうやつに、乗り込んでみようや! そしたら、いろんなことが分かるんとちゃうか?」
ウチは、難しいことはよう分からんけど、自分の目で見て確かめることが一番ええと思ってるんや。だから、みんなにも、そう言ってみたんや!
「そうだな……。僕らは少し臆病になっているかもしれないな。“自分の目で確かめないと分からない!”……まさしく、伽供夜君の言う通りだ。みんな、少しは伽供夜君を見習おうじゃないか!」
「うん、そうしましょう! あたしだって、かぐやちゃんに負けないわよ!」
「俺だって、自分を信じて頑張るぞ!」
「そうじゃな、ワシは過去に縛られ過ぎたかもしれないな」
「いつでも、私は、博士を信じてます!」
『あらあら、みんなも考えるより、行動あるのみで行くのね。ふふっ……いいんじゃないかな、時にはポンコツになるのも……そうしないと……』
「よし、博士、記誌瑠君、あの宇宙ステーションにドッキングするぞ! 準備を頼む!」
「任せてください! ドッキングシステムを考えたのは、ワシじゃからな。オチャノコサイサイじゃ~…………記誌瑠ちゃん、ドッキングビーコンを発射してくれ!」
「了解です、博士! ドッキングビーコン発射!」
なんやウチらの船の先端から、赤い光線が宇宙ステーションに向けて照射されたんや。そして、その光線が宇宙ステーションに届くと、何と横のハッチが開いたんや。
「みんな、しっかり掴まっててくれよ。これから、あのハッチに突っ込むぞ!」
「「「「「 了解 」」」」」
ブッブー…… ブッブー…… ブッブー…… ブッブー…………
なんや? こないな時に、これ、人類委員会らのメール着信ブザーやないか? こんな時に異次元での仕事依頼か? 社長、どうすんのや?
(第22章 完 ・ 物語は続く)
最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




