249 第21章第21話 赤い地球を見上げて
「むううー、うぎゅううーー、ぷぷぷぷぷーー……」
『きゃははは……、うきゃややや……、あはははは……。カグちゃんの頬っぺたって、やっぱり柔らかいのね。ワタチの手でも摘まみやすいわ』
「むぎゅっーー……って、はあはあはあ。もう、やめて欲しいんやけど、ラビちゃん!」
いつまでも、ウチの頬っぺたで遊ぶラビちゃんをいい加減に引き離して、香子はん達に聞くことにしたんや。
「なあ、香子はん。寝太郎はんの言ってたことをもう少し分かり易く教えてくれへんか?」
「そうね……。あたしも大体分かったけど、自信は無いのよ。他のみんなにも聞いてみましょうよ」
「何でもええんやけど、なんも分からんのウチだけみたいなんは、もういややわ!」
「えっと、じゃあ、みんなもう帰るってことでいいよね」
「ああ、社長。今回の“寝太郎を起こせ”っていうミッションはクリアしたんだ。もう、月の会社に帰ってもいいんじゃないか」
「ワシもそう思うよ」
「あ、じゃあ、ちょっと待って! ウチ、村のみんなにお礼を言ってくるわ。いっぱい世話してもらって、黙って帰るんはいややし」
「そしたら、あたし達も一緒にみんなで行かない?」
香子はんが、そうやって提案してくれたんで、ウチらはみんなして村の人達の家をまわってお礼を言って歩いたんや。そんなに大きな村でもなかったんで、すぐに終わったんや。中には、ウチらと別れるのが寂しいっていってくれたおばあはんもいたんや。
なんか、ウチらも寝太郎はんと同じ立ち位置で面倒見てくれてたんよね。約1カ月もの間、食べたり飲んだり、お風呂や洗濯なんかも面倒みてくれたんや。ホントに世話になったわ。
ウチらは、シャトル・ドリーム・スリーパーに乗り込んだんや。
「みんな、準備はいいか?」
博士はんの確認の声を聞いて、ウチらは「……準備完了!……」って、声を揃えたんや。
「博士、会社への着陸は、屋上広場に出来るかな?」
「社長、それは大丈夫だと思います。同じ異次元探偵社の社屋なので問題ないじゃろ」
「それじゃ、月の異次元探偵社に帰還!」
「了解!」
ウィイイイーーーン!
ウチらはすぐに帰って来たんや。ホントに、異次元からはほんの数秒で帰って来れるんや。これも、ミッションをクリアした証拠なんやろな。
てっきり、ウチはいつものように、地下の倉庫に戻るんやと思ったんやけど、屋上に着いたんや。
「伽供夜君、ちょっと外に出て、アレを見てみないか?」
「アレって……」
「赤い地球さ……」
ウチらは、シャトルを降りて、空を見上げたんや。誰もが、一瞬動かなくなったわ。これは、いつものことやね。月から見る地球は、とても大きいんや。今は夜やから、濃い濃紺の空がとっても深く見えるんやけど、そこにぽっかり浮かぶ地球は、ヤケに真っ赤やわ。
「なあ、見慣れた地球だけど、やっぱり赤いよな……」
頑貝はんが、しみじみというんや。ウチは、「当たり前や!」って言おうと思ったんやけど、他のみんなも黙って頷いて見てるんや。
「あんなに近いのにね~……あたしらの手じゃ届かないのね~」
香子はんが、そんなことを言うねん。「近い? 届かない?」……え? じゃあ……。
「気が付いたかい? 伽供夜君。多分、寝太郎君が言っていたのは、きっとあそこに在るんだと思うんだ」
そっか、寝太郎はんの言ってた、「近くて、届かない」ってゆうんは、赤い地球のことやったんか! じゃあ、あそこに、今のウチらの生活を支えているコピーAIのもと、オリジナルAIがあるちゅうことなんか?
「どうする? 伽供夜ちゃん。あの地球に行ってみるか?」
もの凄いことを言ってるんやけど、博士はんの顔は少し微笑んでいたんや。きっと、ウチなら「行く!」ってゆうと思ってるんやろな。
「もちろんや! ウチは、とにかく調べてみたいんや! ……せやけど、行けへんやろ?」
「あははは、伽供夜ちゃんは、そんなこと心配しなくていいぞ。後は、ワシに任せてくれよ」
「博さん……」
記誌瑠はんが、博士はんに寄り添ってその腕をぎゅっと掴んでたんや。何があっても博士はんを離さんちゅう気持ちなんやろな。
「大丈夫よ! あたしも、懐君も同じ気持ちよ」
「おいおい、俺を仲外れにしないでくれよ。俺だって、ちょっとばかり自信はあるんだぜ!」
『ふん! 何よカタガイ。何が自信よ。アンタだけじゃないわよ! この異次元探偵社のみんなは、自信の塊じゃない。……ね、だからカグちゃん、次はやっぱりあの赤い地球へ行くのよ! みんなの力があれば、何とかなるわよ!』
やけに、ラビちゃんがみんなの肩を持つんやね。そやけど、ウチにはまだよう分からんこともいっぱいあるんやけど、何となく次のミッションに進めそうな気がしてきたんや。
よし! 次は、あの赤い地球へ絶対に行って見せる!
(第21章 完 ・ 物語は続く)
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