235 第21章第7話 補い合って
「あ、ああ……そうやね。人類委員会の方は、そのうちってことで。……せや! 小惑星ベスタや貨物船が、同じAIで稼働してるちゅうことに、何か意味があるんか?」
「そうだね……まあ、人間で言うと1人が全部を掌握できているということかな」
「1人で全部? 博士、そりゃ凄い能力じゃないか!」
「まあ、頑貝ちゃん、落ち着いてくれんか?」
「だってよ~、あの資源回収から必要な資材やエネルギーの配布まで1人でやっちゃうなんて、まるで神様みたいじゃないか?」
「ふっ、神様か~……でも、神様じゃないと思うんだ、ワシはな」
「なんでや? 博士はん」
「だって、考えても見てくれよ。もし、神様だったら、せっかく地球で仲良く暮らして来た地球人をこんなバラバラに生活などさせんと思うんだがのう」
「確かに、博士の言う通りかもしれませんね。僕も、今の我々の状況は、決して理想のものじゃないと思うんですよ」
「そっか、だから社長は、現状に疑問を持っていろいろ調べていたんだよな~」
「そう、だから、僕は水野博士や君をこの異次元探偵社設立に誘ったんだよ」
「まったく、徹ったら、今更何に気付いているのよ。懐君ってホント、真面目なのね! だから、人類の未来についてもそんなに真剣なのね。それに、徹も博士も似たようなものなのよ。でもね、男3人集まったってだたのムサイ集団になっちゃうじゃない。だから、あたしも参加することにしたのよ。この美人のお姉さんが居ないと、やっぱり男だけじゃダメじゃない!」
「あははは、……美人のお姉さんか?」
「何よ! うるさいわよ! 別にいいじゃない!」
「いや、香子君が月の武術大会で優勝したのを見て、僕は絶対我が社に必要な人材だって思ってスカウトしたんだよ!」
「ええ? 香子はんって、そないに強かったんか?」
「あれ? かぐやちゃんには言ってなかったけ? あたしに敵う人間は、この月の世界じゃ誰もいないのよ! ここ10年、連続チャンピオンなんだから!」
「僕の調査を進めた時、どこで妨害が入るかもしれないんだ。絶対に香子君の技術は役に立つと思っていたんだけど……ああ、僕、君にそんな危ないこと、させたくないなあ~」
「もう、大丈夫よ懐君ったら! あたしが、全部を守ってあげるから! もちろん、懐君は絶対に離さない! うふっ!」
あれ~、香子はんが社長はんに抱き着いてしもうたんやけど、確かに香子はんは強いからな~。お酒さえ飲んで酔っ払わなけりゃ、多分世界で敵う人はおらへんやろ。
「オッホン! でもね、そんな異次元探偵社でも、あれは酷かったわよね~」
「なんや、アレって?」
「私が、家政婦のアルバイトでこの会社の清掃に来た時、会社の中がもうゴミだらけだったのよ。書類はぐちゃぐちゃ、食べ残しはそのまま、床や壁はほこりまみれだったわ」
「あはははは……でも、記誌瑠君は、そんな我が社をたった1日で、蘇らせてくれたんだ!」
「この会社、せっかく大きな台所と食堂を備えてあるのに、作ってたのはインスタントラーメンだけだったのよ! もう、台所が泣いていたの!」
「あははは、まあ、男3人だったからね~」
「うーん、でも、あの時は香子さんも居たわよね~」
「えーっと、……あたしは、料理が苦手でえ~」
確かに、香子はんやったら、下手に料理とかしたら、ヨゴレ倍増やからな。
「ま、それで、僕は記誌瑠君に声を掛けたんだ。我が社で働かないかってね」
「私は、別にどうでもよかったんだけど、あの食堂と台所を自由に使っていいって言ってくれたんで、すぐにOKしたのよね。その後のミッションもとっても楽しかったし、この会社に入れてホント良かったわ!」
「そうさ、記誌瑠君は、料理だけじゃなくて性格も几帳面でお金にもしっかりしているから、経理も任せられて大助かりなんだ。なんせ、あの頃の僕らは金銭感覚なんて無かったからね、あはははは」
いやあ、今更なんやけど、この会社、誰が欠けてもダメなんやね。情熱と希望と、そしてちゃんと一般常識を持った会社になったんは、みんなが集まったからなんやな。
あ、そっか。そういう人を社長はんが、集めたっちゅうことなんやな。
ホンに、社長はんはしっかりしとるんか、いい加減なんか、よう分からんわ。
(つづく)
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