226 第20章第16話 不意の幻惑?
「ハ~、ハ~、ハ~……フゥー(X﹏X)。なあ、伽供夜? お前、まだ乗るのか?」
「ここに来て、まだ3時間やで、せっかく半分は制覇したんや。頑張ればもう少しはイケるかも!」
「あのなー……残った分は、今度俺がまた一緒に来てやるから、今日はもうこれでカンベンしてくれよ~俺は疲れ果ててしまったぞ~」
観覧車を降りたウチと頑貝はんは、手当たり次第に遊具に乗ったんや。ムーンカップ、ムーンバイキング、ムーンカート、ムーンゴーランド…………。それに、遊具に乗る間につまみ食いもしたんや。食堂に入ったら時間が掛かるんで、ワゴンや露店を制覇しようと思ったんや。美味しかったで~ムーンタコ焼き、ムーン団子、ムーン綿菓子、ムーンお好み焼き、ムーンコーン……。でも、良かったわ~ムーンコースターに最初に乗っとって! 食べてからムーンコースターやったら、エライことになっとったかもしれんし。
ところで、え? 今度?
「頑貝はん、またウチを連れてきてくれるんか?」
「お、おお……お前、ここ、気に入ったんだろ?」
「うん、ウチ、ここ、すっごく気に入ったわ」
こんだけ、いろんなもんと闘えたらウチだってもっと強くなれるんや。
「そ、それじゃ、こ、今度の休みも2人で、ここ来るか?」
「ホンマけ? ウチ、めっちゃ嬉しいわ。今度こそ、全部制覇して見せるからな!……なあ、そしたら今日は最後にもう1回あのムーン観覧車に乗りたいんやけど……」
「お、おお、いいぞ。じゃあ最後にムーン観覧車でお終いにしようか」
「うん、分かった。今日は、これでもう帰るんか?」
「いや、今日はもう1か所行くとこがあるんだ」
「ふーん」
頑貝はん、まだ乗りたいのかな。他にも遊園地ってあんのかな?
よし、ムーン観覧車に乗るぞ!
「うんしょっと……あ、頑貝はん、ウチ、隣に座ってええか?」
「え? と、と、隣に? う、うう、うん、構わないよ」
「それじゃあ、よっと……失礼しまーーす」
やっぱ、狭いかな。頑貝はんと2人で座るとぎゅぎゅうやね。でもな、向かい側の席やと眩しいねん。さっきも少し眩しかったんやけど、もう太陽がだいぶ動いたから、最初から最後まで目つぶしに合うねん。あれじゃあ、せっかくの景色も見えへんし。
「あ! あそこをムーンコースターが通ってるわ。見て見て! 頑貝はん」
「あ、ああ、ウウ、……」
「それに、こっち、あそこでムーンカートに乗ってる人、すっごい小さく見えるやん。まるで、豆粒みたいやね」
「あ、ああ、あははは……」
「どうしたん? 頑貝はん。見えへんか? ほら、あそこやよ」
ウチは、頑貝はんの前から手を伸ばして窓の下に見えるムーンカート乗り場を指さしたんや。
「だ、だい、じょうぶだ。よ、よく、見えるから……はは」
なんや頑貝はん、キョロキョロしおって。反対側の窓を見たり、天井を見たりしちょる。ゴンドラの中を見ても、なんも面白いことなんかないんやと思うねんけど。
(つづく)
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