225 第20章第15話 伽供夜のがんばり
「ほら、これでも食ったら目が覚めるんじゃないか?」
「う、うん。……あ、4色ソフトやね」
「ここの名物だ。バニラ、チョコ、イチゴ、メロンの4つの味が楽しめるんだ」
ウチは、4回立て続けにムーンコースターに乗って……バテテしもうたんや。仕方なくドリームランド内のベンチに腰掛けて休んでたら、頑貝はんが美味しそうなソフトクリームを買ってきてくれたんや。
「うーーーっ、冷たくて美味しいわ!」
「そりゃ、良かったな。そころで、この後もいろんな乗り物に〔勝つまで〕乗り続けるつもりなのか?」
「う、うーーん、そうしたいのはやまやまなんやけど、そないなことしてたら今日中に乗り物制覇できんやね」
「え? 伽供夜、今日だけでここの乗り物というか、アトラクション全部制覇するつもりなのか?」
「いかんか?」
「あのなあ~この月面ドリームランドにはどのくらいの遊具があると思ってるんだ?」
「知らんわ、そんなこと!」
「ここにはな、大小200の遊具があって、売店やレストランだって50軒、メニューだって100種類以上あるんだよ。そのすべてを1日で回ろうなんて、無茶もいいとこだぞ!」
「そうなんか? うーん、じゃあどうしようか? ここに泊まり込まなあかんかな?」
「うーー、お前なあ~」
なんか知らんが、ウチ、頑貝はんにあきれられてしもうたみたいや。
「伽供夜、今度はちょっとゆっくりあの観覧車にでも乗ってみるか?」
「ああ、ええなあ。あの天辺なら、ゆっくりやさかいに、落ち着いて下を眺められるわな」
ソフトクリームを食べ終えたウチと頑貝はんは、大きなムーン観覧車のゴンドラに乗ったんや。ひと回りするのにだいたい15分は掛かるみたいやね。ゴンドラは4人乗りやったけど、ウチと頑貝はんの2人で乗ったんや。中はそんなに広くなくて、向かい合って座ったらウチの膝と頑貝はんの膝がくっ付きそうやったわ。
観覧車のゴンドラの中でウチは、外ばかり見てたんや。どんどん高くなるゴンドラから下の方を見るんはえらい気持ちよかったなあ。
半分ぐらいの高さまで登った時、頑貝はんが静かにしゃべり出したんや。
「そんなに一生懸命にならなくてもいいんだ」
「え? なんのことや?」
「お前さ。何をやる時でも一生懸命だろ?」
「ええやん、別に」
「ああ、確かにそれはお前のいいところだよ。でもな、やり過ぎると心配なんだよ」
「ああ、ごめんな。ムーンコースターには乗り過ぎたわ」
「そうじゃない! ムーンコースターぐらいなら何度乗ってもかまわんさ。俺が、ちゃんと背中を押さえてやるからな。……でも、今取り掛かってるミッションは、そういう訳にはいかないぞ。俺だって精一杯な時がある。無茶して、走り過ぎると思わぬ危険に合うかもしれない」
「…………」
いつもと違う頑貝はんやったわ。えらい真面目な顔しとる。確かに、ウチは青い地球を取り戻したくて無茶なことばっかりしとったかもしれんなあ。
「俺だけじゃないんだ。みんな心配してるんだ。だから、今回、伽供夜にはちゃんと2日間の休暇を過ごして欲しくてな。みんなで相談したんだよ」
「ええ? そうなんか? せやから、あないにみんなしてご馳走したり、楽しませてくれたりしたんやね。……そっか、頑貝はんも、ウチのムーンコースターに付きおうてくれたんやね」
「う、あ、いや……俺も楽しみたくてな……」
その時、丁度ゴンドラは一番高いところに来たんや。
「見てみろ、伽供夜。あの赤い地球……誰も、あのままでいいなんて思ってないんだ。みんな同じ気持ちなんだよ。だから、あまり1人で頑張り過ぎるな。みんなの力を合わせよう」
「う、うん……分かった」
ウチは、赤い地球を見つめながら、目の前にいる頑貝はんにはなんだか恥ずかしくて目を向けられんかったわ。
(つづく)
最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




