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224 第20章第14話 挑戦する意気込み

「うっわー、えらい広いんやね!」

「まあな、この月面ドリームランドドームは、月面最大規模なんだ。広さだけなくて、高さにも余裕をもって作ってあるから、見ろ! あの観覧車!」


「うっわー、あの観覧車のとこだけ上に飛び出してるんやないか?」

「まあな、建物で言うとだいたい20階ぐらいのビルの高さはあるかな」

「そりゃやっぱり凄いんやね。月のドームじゃ、建物の高さ制限があって高くても4階ぐらいやって聞いたんやけど……20階とは。ここは特別なんやね」


「まあな、この月面ドリームランドは最近になってできたらしいんだけど、誰が作ったかは知らされていないんだよ。まあ、毎日の営業とメンテナンスは、『夢の国』っていう会社がやってるみたいだけど」


 この月面ドリームランドも正体不明なんやね。こないに大きなものを誰が作ったか分からんなんて、ホンマにどないなっとんのやろ。ひょっとして、この月にあるいろんなドームも誰が作ったか分からんのやないかなあ。


 だから、やっぱりウチらはあの小惑星ベスタの秘密をもっと探らなあかんのやわ。


「ん? どうした伽供夜(かぐや)? あんな高い観覧車見て、怖気づいたか?」

「な、なにをゆうてんのや、頑貝はん? ウチは、早いのも高いのも怖い事なんかあらへんわ! 早くアトラクションに行こうやないか!」


 とにかくウチは、頑張って謎を解かんとあかんのやけど、……まあ、今はこの月面ドリームランドを楽しむわ! 何より、ここは眺めがいいんや。昼間でもドームの天井は透明なままやから、宇宙がそのまま見えるんや。

 なんか、これだけ大きいとドームの天井がビジョンスクリーンにはなっていないんやて。きっと大きすぎたんやね。



「よし、伽供夜、最初はあのムーンコースターに乗ろうか! ドームの外を通って来たんで朝一の開店に間に合ったわ。まだ、お客さんもそんなにいないから、並ばないで乗れる今がチャンスだ!」


「乗り物の券は買わんくてもええんか?」

「ああ、大丈夫だ。俺が、ちゃんと半日乗り放題の券を買ってあるんだ!」

「ほな、ウチの分は頑貝(かたがい)はんに払えばええんか?」

「いらねえよ! 今日は全部、俺のおごりだ! 途中でお腹がすいたら言ってくれ。好きな物何でも食わしてやるから。ここのソフトクリームは上手いんだぞ!」


「へー、おおきに!」


 ウチ、またご馳走になるみたいやね。昨日の社長はんと香子はんはお腹いっぱいスウィーツをご馳走してくれたし、博士はんと記誌瑠はんは手巻き寿司と美味しいお鍋を食べさせてくれたんや。そして、今日は頑貝はんが遊園地乗り放題と食べもんやて、ホンマにみなはんどうかしたんやろか? まあ、ええか、美味しいんやからな。





 〈安全ベルトの着用はよろしいでしょうか? 本日は当月面ドリームランドのムーンコースターにお乗りいただきありがとうございます。このコースターは、月面ドリームランド一周のハラハラドキドキコースとなっております。どうぞ、最後まで気を抜かぬようにお楽しみください。 それでは、ゴールでお待ちしています〉





「ウチら、一番前なんやね」

「ああ、見晴らしが良くていいじゃないか。さあ、動き出すぞ、しっかり掴まってろ!」


 プオーーーンーーーー!



 ガタン…ガタン…ガタン…ガタン…


「さ、さいしょ、は、上に上るんやね」

「お? 伽供夜、お前、怖いのか?」

「こ、こわく、なんか、ないんよ! ただ……」


「お、天辺についたぞ! それ、急降下だ!」

「うわああああああああーーーーー! か、か、かた、がいはんーーーー!」


 ウチは、怖がり屋やないんよ。ただ、このムーンコースターが、き、きゅう、急降下するとき、お腹のあたりがヒュウウウウウーって力が入らんようになったんや。何だかお尻も浮いたような気がして、慌てて掴んだんや!


「あははははは。大丈夫だよ、伽供夜。そんなに強く掴まなくても」

「せ、せ、せやけど……体が浮いたら、あ、あ、危ないやないか!」


「ほら、右カーブだぞ!」

「フギャ!」


 その後も、ウチは、「ギャア」とか「ダダアアア」とか「ボギャアアアア」としか叫んでないような気がしたんや。



 キーキキキキーーーイイイイイイイイ





 〈ご乗車ありがとうございました。どうぞ、お足もとにお気をつけてお降りください。再度の挑戦をお待ちしております〉





「伽供夜? 伽供夜?」

「は! ああ、あい!」

「着いたぞ、大丈夫か?」

「だ、だい、大丈夫や。降りるんか? はよ、降りよか」



 ウチは、何とか自力で立ってムーンコースターから降りたんやけど、腰のあたりを頑貝はんが押さえてくれてたんやろね。しばらくはフラフラして真っすぐに歩けんかったんや。



「どうだった? 伽供夜。ムーンコースターから見る地球も良かっただろ?」

「へ?……ムーンコースターから見る? ウチ、見る余裕なんかなかったわ。地球どころか、まわりの景色すら覚えておらんわ」


「あはははは……そりゃあ、まあ、最初は仕方ないかな? なんせ、伽供夜は、こんな遊園地で遊んだことはないんだろ?」


「ううううーー………」



 確かに、ウチは遊園地なんかで遊んだことはあらへんわ。ウチの月にはこないなもんなかったし。地球に家出した時やって、まだこんな遊園地なんてもん出来てなかったんよ。


「なあ、頑貝はん……」

「ん? どうした? 伽供夜?」

「ウチ、もう1回あのムーンコースターに乗るわ!」


「ええ? なあ、今度は違うのにしたらいいんじゃないか?」

「いいや、ウチ、あのムーンコースターに負けたくないんや! あそこから地球も見ないかんし、まわりの景色だって見んことには、……頑貝はんにも勝てへんわ! それに係の人もゆうとったわ〈再度の挑戦をお待ちしています〉ってな。ウチ、あの係員にも負けてられんのや!」


「あはははは、相変わらず負けず嫌いなんだなあ~……ま、いいっか。俺も付き合ってやるよ」




 ウチは、その後3回連続でムーンコースターに挑戦したんや。どうしても叫び声は出るし、隣の頑貝はんは掴んでしまうんやけど、なんとか赤い地球も見れたし、天辺からの景色も見ることができたんや。


 せやけど、再挑戦の3回目が終わった時は、もうムーンコースターから降りる時は、頑貝はんの背中にいたんやね。あんまり、記憶はないんやけどな。




(つづく) 


 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
ミンキー○モは観てましたよ〜。 徹くんは周囲に働きかけて、上手く二人きりのデートにしましたね。 ムーンコースターは楽しそうだけど、乗るのは大変そう……絶叫系は苦手なもので。(苦笑) てっぺんから見る…
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