222 第20章第12話 天の川
「ふ、ふああーー……ウチ、もう食べられへんわ。お腹いっぱいで、はち切れそうや!」
「いやあ、ワシらも美味しくいただいたなあ。こういうのは、1人じゃなくみんなで食べるとさらに美味しくなるもんなあ」
「私も伽供夜さんにつられて食べちゃった! もう、動けないくらいよ」
ラビちゃんなんか、よっぽど美味しかったのか、無言で食べてたんや。そして、さっきから動かんなあと思ったら、カニの爪をしゃぶりながら、もう寝とるんや。やけに静かやったけど、ラビちゃんに手が掛からんかったんで、なおさらウチらは満足してご馳走をたいらげてしもうたんやね。
外はもう真っ暗で、夜もだいぶ更けたみたいや。時計を見たら、10時を回っとったわ。ウチは、そろそろ家に帰らなあかんなあと思ったんや。テーブルも食べるものが無くなったので、記誌瑠はんは少しずつ食器類を流し台の方へ運び出したんや。
「ウチも、片付けをするわ。これ、運べばええんか?」
「あ、伽供夜さんは、そんなことしなくていいのよ。今日は、お客様なんだからね」
「そうだよ伽供夜ちゃん。後片付けなら、ワシが手伝うから大丈夫だよ」
「え? みんなでやった方が早く終わるんやない?」
「大丈夫だよ、夜は長いからね。ワシと記誌瑠ちゃんで、ゆっくりやるから。……それに伽供夜ちゃんは、明日の予定もあるんだろ?」
「うん、まあ。明日は、なんか頑貝はんが、開けとけよって言っとったんよ」
「じゃあ、伽供夜さんは、早く帰って寝た方がいいわ。きっと、明日の朝も早いかもよ。それに、ラビちゃんももうお眠むみたいだし」
ラビちゃんなんか、ゆすっても全然起きんのよ。仕方ないので、ラビちゃんをまた籠に仕舞って、帰ることにしたんよね。
「本当に、博士はんも記誌瑠はんも、ご馳走様でした。とっても美味しかったよ。今日はとっても楽しかったわ。それに、あの包丁もありがとうな」
ウチは、お礼を言って、記誌瑠はんの家を出たんや。玄関では、博士はんと記誌瑠はんが、ウチが角を曲がるまで手を振って見送ってくれたんや。
記誌瑠はんの家から、ウチの家までは歩いて15分ぐらいかな? ご馳走を食べすぎて体が重くなったような気がするウチにとっては、ちょうどいい食後の運動になるんやと思うたんや。
歩きながら空を見ると、やっぱり赤くて大きな地球が見えるんよ。紺色の宇宙に浮かぶ、赤くぼやける地球は、ちょっと異様やなあ。やっぱり、地球は青く輝く方がええと思うんやけど……。
『ねえ、カグちゃん? 天の川……見える?』
いつの間にか、籠の蓋を開け、首だけ出したラビちゃんが、空を見上げて話しかけてきたんや。
「なんや、起きたんか?」
『ワタチ達、あそこに行って来たのね』
確かに、この間ウチらが行って来たのは、アステロイドベルトにある小惑星ベスタやったなあ。アステロイドベルトって、日本語で天の川のことやもんな。
「そうやね、こうやって遠くから見たら、ホンマ綺麗な天の川なんやけどね……」
『……カグちゃんの彦星さんは、見つかったの?』
「彦星? なんのことや?」
『もう、カグちゃんはお姫様なのよ。……それに、今年もそろそろじゃないかしら?』
そうやね、もうそんな季節なのね。やけに、天の川が綺麗に光ってると思うたわ。
(つづく)
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