218 第20章第8話 美味しさの追求
「さあ、着いたわよ。どうぞ入って!」
ウチらは、鮮魚ドームで食べたい魚を買ったんや。店の人に、「今晩はお寿司を握るんや」って言ったら、おまけでワサビと醤油とお吸い物をサービスしてくれたんや。
その後、家に帰って準備をするちゅうから、てっきりウチは博士はんの家、……つまり会社の地下室へ行くんやと思うとったんや。
「うっわー、何? ここ。えらい広い……台所やん!」
「うふふ、どう? 伽供夜さん。私の自慢のお部屋よ。この家ね、社長の口利きで安く借りてるの。大家さんには好きなように改築していいって言われていたので、1階は全部台所にして、寝室や浴室など、台所以外は全部2階に上げたのよ」
「それで、こないに広い台所が、玄関入ってすぐにあるんやね。記誌瑠はん、よく改築できたなあ?」
「え? 伽供夜さん、私がこんなことできる訳ないじゃない! 私にできるのはお料理だけよ。改築はね、ぜーんぶ博さん、……えっと、博士にしてもらったの!」
「やっぱり、そうなんやね。……なあ、記誌瑠はん?……もう分かったから、博士はんのこと名前で呼んでもええよ。記誌瑠はんと博士はんも、大分仲ようなったんやないか?」
「うふっ、ありがとう伽供夜さん!」
ウチらは、記誌瑠はんの家に来たんや。こないに広い台所があれば、なんでも作れるんやな。それに、壁際にはぎょうさん棚があるし、あちこちに大きな機械があるんや。きっと、あの機械も博士はんが作った調理機械なんやないかと思うたんや。
ピンポー~ン!
「お、来た来た! 鮮魚ドームの配達員だぞ。記誌瑠ちゃん、水槽の準備はいいかい?」
「大丈夫よ、博さん」
博士はんが、何やら台所の隅に置かれている縦横高さがそれぞれ5mぐらいありそうな水槽を確認してから、玄関で買った魚達を受け取っていたんや。
博士はんは、それを自分で種類ごとに持って、台所の水槽に入れに行ったんや。
サンマやヒラメなどは、小さいんで生きたまま小さなバケツで運んだやけど、大きなマグロやカツオなんかはどないするやって、心配になったんや。
したら、大きな魚は電気ショックで一時的に仮死状態で運ぶんやて。もちろん、博士はんは重力調整手袋をはめてるさかいに、どないに大きなマグロかて片手で運んどったわ。
ま、大きいゆうてもマグロは1.5mほどの小ぶりのやつやけど、さすが水槽に入れたら気がつきおって、我が物顔でゆうゆうと泳いどるわ。さすが、マグロやわ。
水槽の中は、緑色の網で仕切られているさかいに、大きな魚と小さな魚は分けて入れられるんや。他にも、貝類や甲殻類なんかも別にしてるんや。
こうやってみるともう水族館みたいやね。なんか、食べるのがもったいない気がしてきたわ。
「さ、伽供夜ちゃん、お寿司のネタを作ろうか! 記誌瑠ちゃんは、ご飯の準備をお願いしてもいいかい?」
「もちろんよ! このために、〔ユメピリカ〕を買ったんだもん!」
「お、いいねえ~ユメピリカは、北海道のお米だね」
「お酢は、砂糖や塩が調合済みを使うから、お米ぐらいは奮発したのよ!」
「さすがだよね、記誌瑠ちゃん。100年前の幻のお米、ユメピリカを見つけて来るんじゃからのう」
「うふふ、博さんったら。栽培ドームに行ったらね、希少価値のお米がいろいろ売ってたのよ」
「ほんとに、そこまで探しに行くんだから、凄いんじゃよ記誌瑠ちゃんは」
「うっふふふ……」
あれ? ここでも仲良しなんやね。……社長はんと香子はんと、同じやわ。こういうんをイチャイチャってゆうんかな、やっぱり?
(つづく)
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