210 第19章第13話 カメさん勝利のミッションクリア
「カメ君! 凄いな~、あれ、何て言う技なの?」
誰よりもカメはんに駆け寄ったんは、ウサギはんやったわ。自分は負けたのに、とっても嬉しそうにカメはんに話しかけとるんや。
「え? ああ、えーっと、『大回転走法』って言うらしいの……あのね、かぐやちゃんに教わったの」
「そっかー、凄い技を身に付けたんだね。これじゃ、しばらくは勝てそうにないな。……でも、私も頑張るから、また一緒に競走しようね!」
「うん! ありがとうウサギ君!」
でも、ウチはちょっと不思議やったんや。勝ったカメはんが大喜びするのは分かるんや。せやかて、負けたウサギはんまで、なしてあないに喜んでるんや?
「なあ、ウサギはん。何がそないに嬉しいんや?」
「ええ、私は、嬉しいですよ。だって、自分の全力を出して戦える相手がいるんですもん。今日は、負けましたが、次は絶対私が勝ちますよ!」
「いいや、ウサギ君、次だって僕は全力で頑張るさ。そして、また僕がきっと勝ってみせるよ」
「ほらね、カメ君は、ちゃんと全力で私の相手をしてくれるんです。嬉しいじゃありませんか。もう、カメ君は、戦う前にあきらめたりは絶対しないと思うんです。私だって、あきらめませんよ!」
そうなんや、ウサギはんはあきらめなかったカメはんのことが、大好きなんや。カメはんがあきらめんからこそ、自分もあきらめんで最後まで頑張れるんやね。
なんて、いい仲間なんやろ……。それに、比べ、ウチらはどうやったんやろ?
青い地球を取り戻すことをあきらめてええんやろか? 今が、良ければそれでええんやろか?
いや、ほんまもんの地球で暮らしたことがないウチやさかいに、あきらめたらいかんとちゃうやろか? ウチがあきらめたら、異次元探偵社のみんなはどうするんやろ? ここで、ウチらは青い地球をあきらめてしまうんやろか?
ここで、あきらめたら、人間は再び地球で暮らすことは無いんや。青い地球を知らん人間ばかりになったら、ウチらのお伽噺かて忘れられてしまうんや。そしたら、ウチらだって存在しなくなるんや。
ウチは、そんなんはイヤヤ!
「社長はん、ウチらの会社に帰ろ! そして、ウチらはウチらのやらんならんことをやろうやないの!」
「僕達のやらなければならないこと?」
「そうや。ウチらしかでけへん事や!」
「ひょっとして伽供夜、お前、まだあきらめてないのか?」
「そうや、頑貝はん。ウチは、あの続きを調べたいんや!」
「うん! 俺だって、あのままだったらすっきりしないんだ! 誰が、この俺達の生活を支えているか? 誰がベスタに資源を集め、俺達のために生産資材を供給してくれているか?」
「多分じゃが、そんなことができるんなら、別に地球を脱出する必要が無かったんじゃないかと思うんだ」
「博士はんのゆう通りや。あの、赤い地球には、そないな秘密もまだ隠されとるんとちゃうか? ウチらは、調べなあかんのや。ここであきらめたら、何も分からんで終わってしまうんや」
ウチは、1人でも頑張ろうと決意したんや。ウチかて、あのウサギはんやカメはんには、負けてられんのや。
「伽供夜、お前、何一人で張り切ってんだよ。俺は、言ったろ。絶対、お前には負けないって!」
「何言ってんの。あたしだって、徹やかぐやちゃんには負けないわよ!」
「わ、わたしだって、頑張ります!」
「おいおい、ワシを忘れちゃこまるよ。ワシのタイムトラベルの秘密が関連してるかもしれんのじゃ、調べるに決まっとろうが!」
『ふん、ワタチが、カグちゃんから離れる訳ないじゃない。どこまでも一緒なのよ!』
「なーんだ、じゃあ、みんな僕と一緒じゃないか! それじゃあ、我が異次元探偵社は、あのベスタの謎をとことん追い求めて調べて、絶対に青い地球を取り戻すってことでいいよね!」
「み、みなはん! ホンマやの? あの続きを調べるってことでええの?」
「何を言ってるんだね……伽供夜君。我々は、みんな異次元探偵社の社員なんだよ。もちろん君だってね。だから、僕の……社長の方針には従ってもらうよ! うふっ」
笑顔の社長はんの顔を見て、ウチは涙が出て来たんや。悲しいんじゃないんや、嬉しいんや。この涙は、嬉しい時も出るんやね。そっか、さっき、ウサギはんとカメはんも、2人で抱き合って涙を流しとったけど、……そうやったんやね!
(第19章 完 ・物語はつづく)
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