200 第19章第3話 貨物船の行き先
「えっと、これが小惑星ベスタじゃ。今回、ワシらが目標にした星じゃが……」
「そうや、ウチ、船の中から見たわ。遠く離れていても、大っきく見えたなあ~」
「そうじゃのう……楕円形じゃから長い方の径は約570㎞、短い方の径は約450㎞ってとこじゃろ」
「月との比較を計算すると……大きさで約6分の1、体積では約300分の1ってとこですね、博士」
「お! 記誌瑠ちゃんは、計算早いね~。……うん、そうだな、小さな惑星じゃないか」
「せやけど、ウチは大きく見えたんよ!」
「伽供夜、それだけあのアステロイドベルトの中では大きな惑星なんだよ。それでも、月よりは小さいんだぞ!」
頑貝はんに言われて、改めて月の大きさについて考えてしもうたわ。月は、大きいんやね~。
「因みに、地球の大きさは、月の直径の約4倍、体積の約50倍、質量の約80倍と言われています」
「ほー、記誌瑠君、さすがですね。そこまで詳しいとは……。」
そうなんや、地球はもっともっと大きくて重いんやね。ウチらは、その地球を救わなあかんのや。
「ま、大きさはそんなとこなんだが、この映像を見てくれ! これは、ベスタをワシらの船、異次元宇宙船タカラのカメラで撮影したものじゃが……」
カチャッ……
「「「「「おおおーーーー!」」」」」
博士はんが、何かスイッチを切り替えると、今までベスタとその周りには瓦礫の星屑しか映ってなかったところに、たくさんの宇宙貨物船が映って来たんや。
「なんや、あのぎょうさんの船は?」
「伽供夜君も見たじゃないか、火口の中の港に留まっていたあの船だよ」
「そうや、港にもぎょうさんあったわ。……でも、外にもこないにいっぱいいたんやね……」
「ワシらの船のカメラにはステルス解除スコープっていうのが付いてるんじゃ。だから、実際にあそこのまわりに居た貨物船は、こんだけいっぱいいたんだよ」
「ひぇえーー、あたし達、こんな中を潜り抜けてベスタに潜り込んだの?」
「そういえば、あそこを次元潜航艇ニンジャで通る時、ラビちゃんのナビゲーションが半端なくカッコよかったよな」
『そうよ、ワタチはこの貨物船の位置をつかんで、隙間の航路を博士に伝えていたの』
「次元の割れ目を通ったとしても、あの貨物船にいつ衝突するか分からないからなあ~。ホントに助かったよ」
『任せてよね、次元座標のことなら得意なのよ!』
よう分からんけど、なんか物を無くしたらラビちゃんに頼めば何でも見つけてもらえそうやな。
「ところでな、これを見てくれ。……この貨物船を色分けしたんじゃが、何を意味してるか分かるかな?」
突然、博士はんからクイズが出されたんや。ベスタのまわりにいる貨物船。形はいろいろあるけど、なんやいくつかの色に色分けされたんや。色は、適当に博士はんが決めて塗り分けたそうなんやけど……。
「なんや、……黄色、赤色、青色、緑色、紫色、茶色ぐらいかな、ウチに見えるんは……」
「俺もそんな感じかな……虹の色みたいに見えるけど」
「ねえ、博士? 同じ色の船がまとまっている様に見えるんだけど」
「そうなんだ、香子ちゃんが言うように、同じ色の船は、同じ場所にいるんだ。つまり、同じ色の船は同じ場所から来て、同じ場所に帰るみたいなんだ」
確かにそうやな。船は、あちこちにいっぱいいるけど、同じ色の船は、同じ方向へ行くみたいや。
「どこへ、行くんやろね……」
何気なくウチがそんなことを言うと、博士はんが立ち上がって、スクリーンの前に行き、嬉しそうに話し出したんや。
「そうだよ、伽供夜ちゃん! そこが問題なんだ。この船の行き先、気になるだろう? な、みんなも!」
「博士、もったいぶらずに早く教えてくれよ!」
「まあ待ってくれ、頑貝ちゃん。ワシらは、あの火口の中の港で、貨物船を調べたよな」
「ああ、俺は伽供夜と一緒に、3隻の船に乗っていろいろ調べたんだ」
「あたしだって、社長と一緒に調べたわよ。あたし達は4隻調べたし!」
「そ、それ、だったら、私と博士なんか、5隻の船を調べたんですよ!」
わーー、みんな頑張ったんやね。
「そうなんだ、そうやってみんなが調べてくれた中に、船の行き先もなかったかい?」
「あ! そういえば、ウチらは月から荷物を運んどる船も見たで」
「あたしが見たのは、火星と水星だったわ」
「私は、木星なんだけど、……えっと、ガニメデって、記してあったわ」
「ウチらも、木星の衛星エウロパから来た船を見たで!」
「はーあ、やっぱり木星の衛星からも来ていたんだな」
なんやあそこにあった貨物船は、この太陽系のあちこちから来ていたんやね。
「分かったのは、それだけじゃないんだぞ。……あの貨物船には標識板があったな。みんなも写真にとって来てくれたんだけど……それをコンピュータにかけて分析すると凄いことが分かったんだ」
「なんや、博士はん、ウチらがあの港の奥の調査に行ってる間、そないなこともやってはったんか?」
「うんまあな。ワシらだって、知りたいじゃないか、この小惑星ベスタの秘密を……な!」
博士はんは、ベスタが映っとるスクリーンの前で、手元のリモコンのようなものを操作し出したんや。すると、ベスタが中央に向かってだんだんと小さくなっていったんや。代わりに、スクリーンにはベスタを中心にして、一番近いところでは火星が見えてきたんや。
その次は、地球そして月も見えたんや。それから水星、金星と見えて太陽や。つまり、ベスタの太陽側の惑星がみんな見えたんや。
太陽と反対、つまりベスタの外側は、大きな惑星の木星が見えたんや。木星のまわりを2つの衛星がまわっとったわ。あれが、エウロパとガニメデなんやな。
なんや、太陽系とちゃうん? あ! 今、言ったそれぞれの惑星と衛星に色が付いたわ。
「どうだい? 分かるかい? みんな……」
スクリーンを指さしながら、博士はんが妙に嬉しそうに、またクイズを出したんや。
「あ! この色、さっきの貨物船に塗った色と同じやないの? と、いうことは、あの貨物船は、こないにたくさんの星から来てるんか? どういうことや?」
「伽供夜ちゃん、正解だよ。でもね……正解だからこそ、ここから凄いことが分かるんだよ。なんだか、分かるかい?」
妙に嬉しそうに話す博士はん、後は社長はんぐらいかな、意味が分かってるんは。頑貝はんや香子はん、それに記誌瑠はんは、まったく意味が分からんみたいな顔しとるわ。ウチだって、全然分からんし。
(つづく)
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