14 第2章第3話 赤い地球
「いっただきまあーーす!」
ウチらは、ちょうどお昼頃に会社に到着。いつものように、会社でお昼ご飯なんや。あのな、記誌瑠はんのお昼ご飯な、とーーっても美味しいんや。
「うっわ、今日は暖かいお蕎麦ね。ありがとうね、あたし、大好物なのよね」
「ええ、だから香子さんの好きな『カシワ蕎麦』にしたのよ」
「うん……ゴクッ……とってもこの鶏肉柔らかくて美味しいわ。さすが、きしるちゃんよね」
「あ、月見にしたい人は、好きに入れてね」
「じゃあ、僕はお月様を入れようかな」
「ワシもそうしよう、頑貝ちゃん一個とってくれないか?」
「はい、博士はん!」
「おお、ありがとうな。やっぱり蕎麦は、月見じゃなあ」
「あのー、『月見』ってなんですの?」
「あれ? お前、月に住んでたくせに、『月見そば』も知らねえのか?」
「そやね、私の住んでた月でも、お蕎麦は食べますけど……『月見』なんて知らんわ!」
「あははは、頑貝ちゃん、そりゃあ無理だわ。伽供夜ちゃんは、月に住んでたんだ。見るのは月じゃなくて、地球だもんな。伽供夜ちゃんとこで、蕎麦食べる時、何か入れなかったのかい?」
「うーん、そうですな、あ、そういえば、鳥の唐揚げを入れてましたな」
「あーそういうのだ。なんか名前付いてなかったの?」
「ウチらは、『流星蕎麦』って、言うてましたえ」
「『流星蕎麦』か、さすがお月様に住んでただけありますね。月じゃ、流星は燃え尽きませんから、まるで唐揚げのように見えるんですね」
社長はんは、ウチの話した『流星蕎麦』が、とても気に入ったみたい。今度は、『流星蕎麦』が食べたいと記誌瑠はんに注文してはった。
「それにしても、『月見蕎麦』の『月』って、何ですか?」
「ああーかぐやちゃん、それはね、地球から見た月が、黄色い丸なので『卵の黄身』のように見えたのよ」
「へー、卵の黄身なんや。それで、ここにいっぱい卵があるんやな。ウチも入れてみよっかな!」
そっか、地球から見た月は、『卵の黄身』なんやな。そういえば、おじいはんとおばあはんのところでも月は見えたんやけど……でも月からは……地球しか見えへんのよね。
「あのー、みなさん……ちょっと聞きたいことがあるんやけど」
「何だい、伽供夜ちゃん」
「ウチの見てたんは、きれいな青い地球やったはずやけど。でも、今、ここも月なのに、見えてる地球はどうしてあんなに赤いんですか?」
ウチは、あの青くてきれいな地球に行きたくて家出したはずなんや。月から見える地球は、大きくてすぐにでも手が届くんちがうかって思ってた。それなのに、今見える地球は、大きさは同じでも色が全然違う。
なんか辛気臭い色に見えしまう。がっかりやわ。
「うーん、そっか。伽供夜ちゃんの見てた地球と違うか……」
「だってね、今の地球じゃね……」
「あのな伽供夜、地球に人が住めなくなって、もう100年以上経つんだよ。まあ、あんな地球だからな、人は住めないさ」
「え? もう地球に人は住んでいないの?」
「ま、僕達の仕事は、そんな地球を元に戻すためにやってんだけどね。とにかく、伽供夜君も今はこの『異次元探偵社』の一員なんだ。がんばってね。うまくいけば、青い地球を取り戻せるかもね……あはははは」
なんか社長はん、軽! でも、どうして、私みたいなかぐや姫の我儘を聞いてくれたり、浦島太郎さんを竜宮城から救ったりすることが、青い地球を取り戻すことなのかしら? なんかややこしいことは、分からんわ!
「かぐやちゃん、そんな難しい顔しなくても大丈夫よ。毎日楽しく仕事してれば、きっといいことがあるって!」
「はーー……」
香子はんの言う通りなら、毎日の仕事を頑張ればいいのね。まあ、楽しいからいいっか!
(第2章 完 ・ 物語はつづく)
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