表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/300

13 第2章第2話 楽しい特訓?

 ウチらは、『月面アスレチックドーム』まで歩いたんや。しかも普通にな。


 え? 何が普通かって? 


 そりゃあ、ここは月や。地球と違うて、重力は6分の1なんや。地球みたいには歩けまへん。

 今までウチなんか、いっつもフワフワ浮きながら歩いとりましたわ。ウチが生まれたのは月の世界やしな!




「かぐやちゃん、こっちの月の生活は慣れた?」

「はいな、何の問題もあらしまへんよ。時間の流れや重力が、地球と同じなんは助かりますな」


「そっか、かぐちゃんは暫く地球で暮らしていたんだもんね。今の月は、地球とさほど変わらないから大丈夫なのね」

「そうですわ、月面にぎょうさんドームがあって、それぞれ町を作っていますけど、どのドームも地球と同じ生活ができるんですもんな」


「そうね、このドームは便利よ。だって、町を覆っている透明なドームはビデオパネルになっていて、自然の光を織り交ぜながら地球の一日をしっかり再現してくれるんですもんね」


「お陰で、ウチ、夜もぐっすり寝られるようになったんです」


「良かったわね。それに、重力だってコントロールできるから、筋力の低下なんかも気にしなくていいのよね。でも、ドームの外はダメよ。いくら宇宙服を着てても、重力だけは月のままなの。下手にジャンプしたら、3メートルは飛び上がってしまうわよ!」


「へえー、気をつけないとあきまへんね。ウチ、いつかドームの外も散歩しようと思うとりました」



 そんな話をしながらウチらは、月面中央クレータードームの中にある『月面アスレチック』に着きましたわ。

 なんか丸っこい形をした大きなお椀みたいな形ですね。大昔の地球にあった『トウキョウドーム』っていうんを真似したみたいなんですって。



「ねえ、かぐやちゃん。今日は、2人でバドミントンしよっか? せっかく家からジャージで来たんだから、ちょっと激しい運動しようよ」

「『バドミントン』って、なんですか?」


「あー、……えっと……あ! お正月にやる『羽根突き』よ。羽子板で羽根を打ち合うの」

「羽根突きですか。それなら、地球に居る時、おじいさんに教えてもろたんで、できると思います」


「じゃあ、この部屋でやろうっか! えっと、重力は1.25倍でいい?」

「え? 重力1.25倍って、なんですか?」


「あのね、この部屋は重力を自由に設定できるの。重力を1.25倍にするとそれだけ体に負荷がかかって鍛えられるのよ。じゃあ、入って」


 その部屋は、小さな体育館のようになっているの。香子はんが、入り口の分厚い扉を閉めてロックを掛けてから、パネルの操作をはじめた。

 すると、なぜか急に体が重くなったんや。



香子(かおるこ)はん、急に体が重もうなりましたよ!」

「あはは、大丈夫よ。1.25倍の重力だから、体重がちょっと増えた感じかな。これで運動すると体は鍛えられるわよ~」



 そっか、香子はんはこんなふうにトレーニングしてはるんだ。だから、あんなにスタイルもいいし、運動能力も抜群なんやね。



「じゃあ、かぐやちゃん、これがラケットよ。好きなように打ち返していいからね」

「は、はい、ウチ、きばりますさかいに!」

「ああ、あんまり無理しなくていいからね。気楽にやってね~……じゃあ、行くわよ!エイ!」



 香子はん、1.25倍の重力なんか何も感じてないみたいに、動きが軽やかだわ。ウチは、体が重うて、腕も自由に動かされへんわ。

 あ、あの羽根を打ち返すのね。


 エイ!


 あ、何とか腕を振ってラケットに羽根を当てたけど、とんでもない方に飛んでしもうたわ。


「……堪忍して~……」

「平気よ! かぐちゃん!」


 香子はんは、そう言いながら右に大きく走ってからジャンプして、羽根を打ち返したの。その羽根は、ウチの正面にきちんと返ってきたわ。


 打ち返そうと思ったら、ウチ、空振りしてもうたんや!



「香子はん?……香子はんだけ重力マイナスになっておまへんかあ?」

「何、言っての、あははは。かぐやちゃんと同じよ。あ、ちょっと違うのは、あたしの運動靴は錘が入っていて片方+5㎏になってるぐらいよ」


「え? +5㎏の両足で10㎏じゃないですか?」



 ウチは、もう驚いて笑うしかできまへん!


 それから、ウチは必至で羽根を打ち返したの。いいや、返すどころか、とにかく打ったの。ぶっちゃけた話、ウチの打った羽根は、あっちゃこっちゃに飛んでしもうたわ。

 それでも、香子はんは、ぜーんぶ拾うてくれはったの。


 ウチは、途中で汗が流れるくらい出てきたので、ピンクのジャージのズボンをまくったし、上は脱ぎ捨ててTシャツになったの。それでも汗が止まらなかったので、この間の真っ赤なビキニをもって来ればよかったと思ったぐらいよ。



 それにしても香子はんは、額に少し汗が滲んでいるのが見えるけど、まったくしんどいなんて感じておらんように見えるわ。こういうところも『クールビューティ―』言うんかな? 後で、記誌瑠はんに聞いてみんといかんわね。



 小一時間汗を流したので、(あ、汗流しのはウチな!)ウチらは、アスレチックのシャワー室を使わしてもろて、会社へ向かうことにしたのです。


 下着の替えも、持ってきてよかったわ。


 えっと、香子はんのグリーンのジャージは、最後まできれいなグリーンだったけど、ウチのジャージはびっしょり濡れて薄暗いピンクになってたの。


 ふゃーしんどかったわ!




(つづく)


 最後までお読みいただけて、とても嬉しいです。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
汗に濡れた女性は美しいと思います(大声) 香子さんは美しい上に運動神経も抜群なんですね… 日常会に見えて月面の説明がするりと入ってくるの分かりやすくて良いですね 隠れお色気回素晴らしかったです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ