12 第2章第1話 何でもない朝日
ピンポロポーン……ピンポロポーン……
なんや、目覚ましかいな……。……ウチは、ベッドに寝たままでっかい背伸びをしたんや。朝日が眩しいわあ。ほんまにここは月なんやろか?
毎朝きちんと朝日を浴びられるなんて信じられへんよ。しかも、1日がちゃあーんと24時間で動いているんやもんなあ。
ウチは、ベッドから起き上がり窓のカーテンを開けたんや。やっぱり朝日やわな。そうなんや、朝日があるやん! 朝日ちゅうもんがな!
だって、これ人口の朝日やっていうんよ、びっくりやで。
ほんまなら朝日は、地球時間で27日経たんと見れへんはずや。ここは、月なんやから。月1日は、地球時間で27日なの。ウチの生活していた月もそうやったわ。
せやから、とっても退屈やったんや。だって、夜が約2週間も続くんよ。イヤになってしもうたの。
せやけど、ここは同じ月でも町がドームちゅうもんで覆われているさかい、光も熱も重力さえも自由に調整できるんやて。便利やなあ~。
『……かぐやちゃん? 起きた~?』
香子はんや。ウチ、今、香子はんと一緒に暮らしてますねん。香子はんも楽しいお人やし、この月の生活も楽しいことばかりで、ほんまに毎日が充実してるやん。
「はーい、今着替えて行くさかい、ちょっと待っとって~」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お待たせしました、香子はん」
「いいのよ、かぐやちゃん。はい、今日の朝食よ!」
「へえー、今日はなんですの? このグリーン、とってもいい香りがしまへんか?」
少し大きめのコップに、並々と注がれているもの。スムージーって言うらしいわ。色は、毎日違うので、中身を当てるのも楽しみの一つになってんや。
「えへへ、今日はね、キウイフルーツと完熟バナナを混ぜて少し凍らせたのよ」
「でも、この香りは、キウイフルーツやバナナやおまへんね」
「ふふっーん! なんだかわかる?」
「…………ん? この香り、あ、バニラアイスやね!」
「うん、そうよ! でもね、入れたのはバニラビーンズの実を特殊な加工をして混ぜてみたのよ。市販のバニラエッセンスよりも強力だし、実も美味しいの」
「凄いな~香子はん。毎朝、ちごうもん作りはってさかい、感心しますわ」
「やーよ、かぐやちゃん。そんな褒めないで~。あたし、単に料理が下手なだけなのよ。だから、何でも混ぜて粉々にすれば気にせず食べられるでしょ! それだけの事なのよ」
確かに、香子はんの手料理は、食べたことがおまへんけど、こないに毎日違った材料を集めるのもしんどいちゃうかと思うんやけど……。
しかも、こないに美味しく仕上げるのは、もう料理上手ちゅうてもいいんちゃうやろか。
「ねえ、かぐやちゃん。あたし、午前中は『月面アスレチックドーム』でトレーニングしてから出社するけど、あなたはどうする?」
「『月面アスレチックドーム』ですか? 前に1度行ったけど、ほんまに楽しかったですわ。ウチも、行きたいです!」
「よし、じゃあ一緒に行って、午前中は楽しもうか?」
「はいです!」
◆月面ドームのイメージです。
(つづく)
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