100 第12章第3話 まだまだかかる発進準備!
「うおおおーー! センセ、こ、これがその船なんですね!」
「そうじゃよ、頼むぞ航海長の頑貝ちゃん!」
「航海長? あ、そっか、それじゃあ、やっぱり操縦は俺に任せてくれるんですね!」
「何をいっておるんじゃ、異次元シャトルの操縦はお前さんの役目じゃろが」
「はい! ありがとうございます!」
あれ? 頑貝はんが涙目になっとるわ。この船の操縦がそんなに嬉しいんやろか。確かに、大きな船やし、頑貝はんの好きな大砲もたくさんついてるけど、不思議やな~。
「かぐやちゃん、何、不思議そうな顔してんのよ?」
「だって、香子はん、どうしてこないな船に、社長はんも博士はんも、頑貝はんまで嬉しそうなん?」
「そりゃあ決まってるわよ、この船はね……男のロマンなの!」
なんか、香子はんまでうっとりしてはるし。やっぱり、今回は宝船を助ける船やから、ロマンなんやろかなあ~。
そういえば、いつもは『節約して!』って怒ってはる記誌瑠はんまでニコニコしてはる。
「記誌瑠はんも、この船が好きなん?」
「ええ、だってこの船のエネルギーは他とはちょっと違うのよ。異次元空間にある異次元エネルギーを使ってるの。水野博士が見つけたエネルギーなの。無限にあるのよ! そう、タダなの! 嬉しいじゃない!」
「え? そんな便利なエネルギーなら、普段も使えばええのやないの?」
「ま、それがね……このエネルギー、扱い方がちょっとメンドクサイのよね。とっても普通の生活じゃ使えないわ。お湯一つ沸かすのにも日が暮れちゃうかもね」
「え? そんなメンドクサイ船が、どうしてロマンになるんやろ?」
「それが、ロマンなんですって……私には、全く分からないけど、タダなのはロマンよね!」
とにかく記誌瑠はんもこの船は好きみたいやね。特別なエネルギー使こうてはるみたいなんが、いいんやて。
「なあ、ラビちゃんはどう思う?」
『きゅるるる……(いいんじゃない、みんな楽しそうで。アタチも何か役割があると嬉しいかな。何でもやるからいってね、カグちゃん!)』
「え? ああ、分かったわ」
ラビちゃんまで、えらい乗り気やわ。
「ところで、博士はん……あ、センセ、この船の名前は何ていうねん?」
「ああ、この船はな……艦長! お願いします!」
「うん、この船はな……異次元戦艦タカラ……だ! 総員配置に付け! 各自出航準備にかかるんだ!」
艦長の号令のもと、ウチらはこの異次元戦艦タカラに急いで乗り込んだんや。
全長約11m。高さ約2.5m。主砲門の長さ約1m。確かに、実物よりも小さいんやけど、外観だけは30分の1モデルなんやて。中は、だいぶ省略されているらしいけど、第1艦橋だけはそれなりに細かく作られてるわ。全体を見渡せる場所に艦長席があるんや。みんなより一段高くなってる。
後は部屋の中に席が割り振られてるやん。正面の右側が航海長の頑貝はん。左がウチや。頑貝はんの席にはなんやハンドルみたいのが付いてる。あれでこの船を操縦するんやね。ウチの席にはハンドルはないんやけど、なんかボタンがいっぱいあるんや。
ウチらの後ろには香子はんと記誌瑠はんの席があんねん。コンピュータのキーボードと画面が付いてるわ。
右側の壁際にはたくさんの計器やスイッチが並んどって、その前に博士はん……えっとセンセはんが座るんだって。あ、そういえばこの席にいる時は、博士はんって呼んでいいんやて。ホント、なんかメンドクサイわ。
そして天井には大きなビデオモニターが付いてるんや。こないな大きなモニターなら、テレビ放送を見てもおもろいやろなって思ったんや。
あ、忘れるとやった。なんとこの部屋の中央にラビちゃんの席があんねん。体に合わせて小さい席やねん。特にスイッチとかはないんやけど、なんかラビちゃん、ここに座ると気持ち良さそうにするんや。
「発進準備完了。すべて異常なし!」
頑貝はんが、大きな声で叫んだんや。なんや、さっきからこの船に乗り込んだら、みんなえらい大声で叫ぶんや。これもメンドクサイことの1つやろか? みんなが席について、何やら一生懸命に準備してはるけど、ウチは何もやることが無いんや。しゃーないから黙ってみんなの様子をみとったんやけど、みんな自分のやることをいちいち声に出して叫ぶんやね。ウチとしては分かりやすくてええんやけど、どうもこれをやらんとこの船はゆうことを聞かんらしいねん。こりゃ、めんどうくさいわ。
(つづく)
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