表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/56

第48話

 国王陛下はクリス様、そして私達と王の間に集まっている全ての人間に視線を送った。それは何かを確かめるようなそんな感じに見えた。


「皆さん。お力添え、お願いできますか? 力を合わせて連合軍として、ロイナ国と戦いませんか?」


 静かだが、重く芯の通った声音で呼びかける国王陛下。その視線には熱が籠もっているのも理解できた。


「勿論です。共に戦いましょう」

「フィーン国も共にあります」

「同盟を築き共に戦いましょう!」

「……皆様、ありがとうございます!」


 国王陛下は他国からの申し出を噛み締めるように、皆に深々と頭を下げたのだった。

 直後、ロイナ国の国王から宣戦布告の内容が書かれた手紙が国王陛下に届く。国王陛下はそれを受け取り読んだ後、改めて高らかに宣言を発した。


「こちらとしては迎え撃つのみ。必ずや勝利を!」

「おおーーっっ!!」


 こうして親善交流は、ロイナ国の宣戦布告と共に幕を閉じたのだった。

 最終日の朝の集まりを終え、クララ様の屋敷に戻った私達は、クリス様も交えて今後についての会議を行う事が決まった。食堂に集まり、椅子に座ると早速クララ様が口を開いた。


「それにしてもいきなりの宣戦布告だったわね。まるでこのタイミングを待っていたかのよう」


 クララ様の冷静な発言に私はイリアス様のパーティーでの発言を思い出していた。


「それに此度の件、捕縛した事で我が妻とその両親への不敬罪も勿論成立する。ロイナ国はこの悪逆極まりない国を許す事は無いだろう!」


 言われてみればリリーネ子爵ら3人の行動がスイッチと言うか、トリガーにはなっているように考えられた。


(不敬罪を開戦理由にした? でもそれだけではないような気もする。怪しい)


 しかもこのイリアス様の発言の前には、私を狙うかのような動きと発言も見せていた。となると……。


「クララ様、少し良いですか?」

「マリーナ、どうぞ」

「……なんか怪しい気がするんです。イリアス様は多分私も狙っている。それにあの3人への不敬罪以外にも何か裏がありそうな予感と言いますか……」

「確かにイリアス様はあなたを狙っていた。不敬罪以外にも裏があるかはどうかは今は証拠が無いから判断は出来ないけど。マリーナは用心するに越した事は無いわね」

「そうですね……」

「おばあさま、マリーナはここにいた方が良いですか?」

「宮廷にロイナ国のスパイがいるとも限らない。情報を流したりする為のスパイが。少なくともこの屋敷より宮廷の方が人の出入りは多いのは確かよ」

「……そうですね……」


 とりあえず今はクララ様の屋敷に留まっていた方が良いだろう。まだ私は婚約者の身。その状態で宮廷入りするのもちょっと不安と申し訳無さはある。


「クリス様!」


 すると食堂にクリス様の従者が慌てた様子で入って来た。

 ただ事ではないと言った彼の顔つきに、私達は一斉に視線を向ける。何かあったのだろうか?


「何だ?」

「大変です。捕らえていた筈のリリーネ子爵の妻とソヴィ様がいなくなりました!」

「なんだって? リリーネ子爵は?」

「今尋問中ですが、黙秘を貫いています」

「いなくなったのは女性陣だな? 追え!!」

「はっ!」


 ソヴィとリリーネ子爵の妻がいなくなった。まさかロイナ国の手により脱走を図ったのだろうか。


「クリス様、あの2人はどこに捕らえられていたんです?」

「宮廷の地下にある地下牢だ。共謀しないよう距離を開けてバラバラに幽閉していた筈だが、まさかロイナ国の手によって脱走を……」

「したのでしょう。下手すりゃもうロイナ国に逃げ帰っている可能性もある」 

「おばあさま……」

「あと、ジュリー様お時間よろしいですか?」


 クリス様の従者はジュリーに何か用があるみたいだ。ジュリーは何でしょうか? と従者に返す。


「今リリーネ子爵の尋問中なのですが、黙秘していて中々尋問が進まないんです。なので……」

「自白剤ですね?」

「そうです」

「なら、今すぐ調合しましょう」


 ジュリーは駆け足で自室に向かい、しばらくして調合し終えたばかりの自白剤の入った透明な瓶を持って食堂に戻っ来た。自白剤の見た目は混じり気の無い無色透明である。


「お待たせしました」

「出来たら私達と共に地下牢に向かってくれますかね? 何かあれば……」

「お師匠様、どうでしょうか?」

「構わない。行きなさい」

「はいっ! 行ってまいります!」


 こうしてジュリーはクリス様の従者と共にリリーネ子爵のいる地下牢へと馬車で向かっていった。


「大丈夫ですかね?」

「大丈夫よ。あの子はああ見えて何度も死線を潜り抜けて来た子だから」


 ジュリーを信頼しているのが良く理解できる言葉だ。クリス様は少しだけ首を傾げながらクララ様に問いかける。


「……おばあさま。今更な話ですけど、ジュリーさんて何者なんです?」

「……あら、まだ言ってなかった?」


 クララ様らしからぬおどけた表情。だが、クリス様には効果は無かったようだ。

 私としてもジュリーがどんな人物にかは知りたい所だ。


「知りたい? ジュリーの話」

「知りたいですおばあさま。マリーナは?」

「私もぜひ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ