ソヴィ視点⑦
今、私は薄暗い地下牢にいる。多分王都内にある監獄の地下か宮廷内の地下だろう。なぜ居場所が正確に分からないかと言うと抵抗している途中で麻酔をかけられ眠らされたからだ。
私は地下牢の中に1人でいる。両親の姿も見えないし物音も聞こえない。
「はあっ……」
私のため息が地下牢全体にこだまする。この地下牢、広さはマリーナがいた地下牢よりも更に狭い。
(なんで私が地下牢に)
マリーナを地下牢に入れたのも、マリーナの両親を殺したのもお父様。全てお父様が悪いのになぜ私までも地下牢に入れられなければならないのか。
(どうして)
すると、こちらに向かって靴音が近付いて来る。誰だ、もしかしマリーナとクリス王子が私を笑いにでも来たのか。
「誰?」
「ソヴィ様。助けに参りました」
「?」
私を助けに来たと語る人物は黒いフードを身に着けており表情は見えない。男性なのは確実だと思われるが。
彼は器用に地下牢の扉を開き、私の腕を取った。
「イリアス様がお待ちです。さあ、目を閉じてください」
「目を閉じるだけで良いのね?」
「はい」
私は彼に言われた通りに目を閉じる。
次に目を覚ました時、私の視界に見慣れた天井が飛び込んで来た。ロイナ国の宮廷の、私の部屋の天井だ。
「ソヴィ、目覚めたか?」
左横から、イリアス様の温かな声が聞こえる。
「イリアス様……!」
そうか、私はザパルディ国からロイナ国に無事に戻れたのか。
「イリアス様! イリアス様……!」
「良かった、ソヴィ」
「イリアス様……助けてくださったんですね」
「ああ、良いかソヴィ。私達はザパルディ国及びザパルディ国に味方する国に対し手宣戦布告をした。君達にあのような酷い仕打ちをするなんて不敬罪にも程がある」
ロイナ国がザパルディ国はじめ複数の国々に宣戦布告を行った。それは即ち戦争だ。
イリアス様は戦争をしてまでも、私に酷い事をしたマリーナやクリス王子らを罰しようとしてくれるのかと理解すると私の両目からは涙が溢れ出した。
「イリアス様……私達の為にありがとうございます……!」
「ああ。必ずや勝とう。そしてザパルディ国へ鉄槌を下そうではないか」
「はっはい! 必ずや勝ちましょう!」