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第3話

 クリス様が右手を私に差し出した。私は近くにある魔術書を持ち、彼の手を取った。


「はぐれないようについてきて」

「はいっ」


 牢から出て、階段を上がって地上のフロアへと出る。道中、クリス様は魔法で両親のへそくりと思わしき貯金の数々やソヴィの残したドレスを何着か奪い取ってトランクに詰め込んだ。


「さ、さすがに盗み出すのは……」

「これくらいしてもいいだろう。君はずっとあの牢に繋がれていたんだから」


 クリス様がトランクを持ってくれた。彼のもう片方の手を取り駆けていくと、勝手口の扉が見えてきた。

 さすがに玄関から出るのはリスクがある。それならメイドや執事らが出入りするここから出ていった方が良いだろうとの、クリス様の考えだった。


「開けるよ?」

「ええ!」


 扉がばんと勢いよく開かれると、そこは外。私はついに外の景色へと足を踏み出したのだ!


「まぶしい……」


 太陽光が牢の中にいる時よりも強烈に降り注いでくる。空は透き通るくらいの真っ青だ。外はこんなにもまぶしくて、キラキラしていたのか。


「さあ、走って!」


 屋敷を出て、ほの暗い道を走る。時折魔法を使って藁が山盛りになっている牛車の中に潜り込んだりしてクリス様と共に移動する。

 街から離れて家がぽつぽつと点在する田舎町に到着した時、牛車から飛び降りるように下車すると、そのまま私達は森の中へと歩を進める。気が付けば日が傾きつつある。

 今は何時だろうか。


「マリーナ、とにかく今は屋敷から遠くへ行こう」

「宮廷は?」

「そこでもいいけど、今宮廷がどうなってるかわからないからなあ」


 確かに今、宮廷がどうなっているかは私にもクリス様にも分からない。


「宮廷について情報を得てから判断した方が良いと思う」

「確かに……そうですよね」

「この森を進みたいけど、時間が……」

「もう、夕方ですよね」


 するとここで私とクリス様のおなかが減る音が同時に響いたのだった。


「おなかすいたね」

「はい……」

「この辺宿無いかな?」


 2人で辺りを見渡すうちに太陽が地平線の彼方へと沈み始めていった。暗くなる前に早めに宿を見つけて中へ入った方が安全だ。


「あった」


 左側に周りを畑に囲まれた宿がぽつんとあった。いつの間にか靴擦れが出来て痛みが走る足を動かして宿に入ると主のふくよかな女性が快く受付と案内をしてくれた。


「部屋がもうここしか空いて無くて相部屋になるけど大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫です」

「1階にお風呂があるから使ってちょうだい。特にお嬢さんの方はかなり汚れが目立っているから後で私が洗うの手伝うわ」

「良いんですか?」

「ええ、こういうのよくあるからへっちゃらよ」


 通された部屋は、牢よりも広く見えた。ふかふかのベッドに大きな椅子と机。2階という事で、眺めも良い。


「先ご飯食べる? それともお風呂入る?」

「どうする?」

「じゃあ、お風呂に入ります」

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