第25話
クリス様がジュリーと共に屋敷に戻って来た。
「調査が決まった」
「そ、そうですか……」
「エイリンはクララおばあさまの元でいたら良いと父上も言ってくれた。ただ、証人として宮廷に召喚される可能性はあるって」
「そこは覚悟しております。クリス王子」
エイリンの目の奥には光が見える。洗いざらい話すのは構わないという事か。
そして次の日。結局ジェシカがクララ様のお屋敷には来なかった。だが、大学院にて突っつかれる可能性も覚悟しておく必要はある。
「2人ともいってらっしゃい」
「はい」
「はい、おばあさま」
クララ様は今日は講義もないので、このまま屋敷にてエイリンと留まる事になる。私はクリス様と2人で馬車に乗り大学院へ登校した。
「あ、クリス王子とジェリコ公爵よ」
「いつも一緒なのね」
私を見る目線とひそひそした声が耳に入る。すると頭上から殺気を感じたので、私はすぐに天に手を掲げ、シールドを張った。
がちゃがちゃがちゃ!!!
天から巨大な氷柱が槍の如く降り注ぐと全てシールドに跳ね返され、雲散霧消していった。
「マリーナ……!」
「お怪我はございませんでしたか?」
「ごめん、俺がもっと早くに気がつけば」
「気にしないで大丈夫ですよ。怪我が無ければ良いので」
そうだ。無事ならそれで良いのだ。
「っ、マリーナ!」
油断している時間は無いという事か。とっさにクリス様が私に覆い被さり、シールドを張り魔術で生み出したであろう岩が落ちてくるのを食い止める。
「く、クリス様……」
「大丈夫か?」
「私は大丈夫です。クリス様は?」
「俺も大丈夫だ。心配無い」
その後も従者やクリス様、時には自分で自分の身を守りながらなんとか攻撃を防いだのだった。
「はあ……」
屋敷に戻ると、途端に疲れが出てしまいベッドの上に大の字になってしまう。何度も何度も魔法を連発したからか。
「マリーナ、いいかしら?」
「あっは、はい。おばあさま」
「今日は派手に攻撃を受けたみたいね」
「はい……疲れました」
「今丁度リリーネ子爵から手紙が来たけどどうする?」
リリーネ子爵……私を地下牢に閉じ込めていた人物。どうせろくな事は書いていないだろうと踏んだ私は読まない意思をクララ様に伝えた。
「わかったわ。とりあえず私が読んで内容によっては処分しておくわね」
「お願いします」
その後。リリーネ子爵からの手紙を読んだクララ様に聞く所、公爵になった旨を祝う内容の文章のみが記されていた。
(なんか怪しい)
私も試しに読んではみたが、手紙の文章量も短いものだった。そこが逆に怪しさを醸し出しているような気がしてならなかった。