ソヴィ視点③
私は今、部屋で本を読んでいる。部屋にはメイドも誰も来ないし、退屈でつまらない。
披露宴の後。私はイリアス様と初夜を迎えるものだと考えていた。しかし、ベッドにイリアス様は現れなかった。
「なぜイリアス様は来ないの?」
「急用ができたとの事です」
「うそでしょ……!」
「王太子妃様。お待たせしました。これより初夜の儀を始めさせていただきます」
そうメイドはうやうやしく言うが、肝心のイリアス様はいない。彼抜きで儀式を始めると言うのか。すると神父様が現れて、いきなり服を私の目の前で脱ぎ始めた。
「なんで服を脱ぐの?」
「今から処女の血の呪いを解く為です。私がイリアス様の代わりにあなたと性交渉すれば、イリアス様は呪われずにすみます」
まるで何だか私の身体が呪われているみたいな言い方ではないか。私はマリーナのような忌み子ではない。
「私の身体が呪われているというの?!」
「処女の血には呪いがあります」
「何よそれ! 私が呪われている訳無いじゃない!」
だが、神父は服を脱ぎ下着のまま、私を凝視している。腹の出ただらしのない身体。見ただけで吐き気がする。
「では、王太子妃。私に身を委ねてください」
「えっ、ちょ、何をする気なの?!」
「今からあなたの処女を……」
この男。私を犯そうとしている。嫌だ、初めてはイリアス様に捧げるのだ。
神父は私に覆いかぶさるようにして、動きを封じる。私は当然我慢ならなかった。
「いやーーっ! 助けてイリアス様!!」
魔力をありったけ放出し、爆発を起こす。耳をつんざく轟音が響いた。
「はあっ……」
目をゆっくりと開くと、神父は魔法で盾を作り、メイド等を爆発から守っていた。まるで私が魔力放出による爆発を予見していたかのような動きだった。
まあ、ここで誰かが死ぬよりかは遥かにましな結果ではあるのだが。
「初夜の儀は取り止めと致しましょう。ここまで嫌がるとなるとは……」
神父は服に着替え、申し訳無さそうに私へと謝罪するとメイド達と共に部屋を慌てて出ていった。
部屋には私1人だけとなる。
「はあっ、はあっ……」
とりあえず、もう寝て良いのだろうか。緊張の糸が解けた私はそのまま布団を被って寝たのだった。
それからイリアス様とはまだ、夜を迎えていない。食事を共にしたり話したりはあるのに、ベッドは別々のままだ。
(私が処女だから?)
両親もどこにいるか分からない。ザパルディ国には戻ってはおらず、ロイナ国に留まっているとはメイドから聞いたが私には会いに来てくれない。
(つまらない。つまらない……!)
イリアス様に早く会いたい。