ソヴィ視点②
結婚式が始まる。右側にいる父親に連れられて、赤いじゅうたんが敷かれたヴァージンロードを歩く。目の前には神父と黒い軍服に身を包んだイリアス様がいる。
「ソヴィ」
イリアス様が私へ手を伸ばしたので、私は迷う事無くその手を取った。そこで父親が私の元から離れて客席に座り私はイリアス様の横に並ぶ。
「イリアス様……」
「ソヴィ、似合っているね」
「ありがとうございます」
神父が着ている服も黒い。そんな神父は持っていた杖を天に掲げた。すると、黒いバラが天井からひらひらと降り注いでくる。
(綺麗!)
「では、新郎新婦。永遠の愛を示す為の誓いのキスを」
イリアス様が、私の顔に近づく。ああ、見目麗しいお顔だ。なんて思っていると、唇同士が重なった。
「?」
一瞬だけ、魔力か何かが私の身体の中に入り込んできた感覚がしたけれど、まあ気にしないでいっか。
式はこれだけで済んだ。式が終わった後は宮廷に戻り披露宴パーティーが行われる。そこで着る服はワインレッドに黒いフリルのついたドレス。このロイナ国では黒いドレスが流行っているのだろうか。
「ソヴィ、綺麗だね」
先ほどからイリアス様がたまらない。美しいし、かっこいい。これが一目ぼれというやつなのだろうか。ずっと眺めていたくなっている。
披露宴パーティーでは、貴族達が椅子に座る私達の目の前でダンスを踊る。だが、そんなものどうでもよい。私はイリアス様をずっと見ていたい。
「ソヴィ、どうした?」
「あ……イリアス様が美しくて、つい見とれておりました」
「ふふっ、ソヴィは可愛いね」
「あっ……」
イリアス様が私の左頬を優しくなでながら、微笑みを見せてくれた。ああ、全身が幸せでいっぱいになる。
(幸せ……!)
すると、司会が私とイリアス様に踊るようにと告げるとイリアス様が椅子から立ち上がって、私の手を取った。
「では、1曲」
「は、はい」
オーケストラの軽やかなミュージックに乗せて私達は軽快にリズムを刻みながらくるくると踊る。ダンスはあまり興味が無いので皆の前で踊るのは不安があったが、イリアス様のエスコートは素晴らしい。
「力抜いて」
「はっはい」
「緊張してる?」
「え、ええ……」
あっという間に、オーケストラから演奏が終わり私達のダンスも終わった。貴族達からは規則正しく拍手が送られたので、イリアス様と共に彼らへ向けてお辞儀をした。
「良かったよ」
「イリアス様、ありがとうございます……」
披露宴パーティーが幕を閉じる。貴族達は蜘蛛の子を散らすようにダンスホールから帰路に着いた。なんだ、もっといてくれてもいいのに。
私の元にもメイドが訪れた。なんでも今から入浴をして初夜の儀なるものがあるのだという。
(めんどくさい……早くイリアス様と2人っきりになりたい)