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2.こういち、ベッドになる

 ぼくはよくわからないところにテレポートしてしまった。自称神いわく、ぼくの罪はぼくのことを訴えてきたものと同じ境遇を味わうことが罰らしいけど、そもそもぼくの罪って何?ほんとにわけわからない。あっ、そうだ、これたぶん夢だ。わけがわからない展開の時はだいたいそうだから。あーあ、早く目が覚めないかな...

 それからしばらく時間がたったように感じるけど、全然夢から目が覚める気がしない。しかも体が動かないことに気が付いた。あと、声も出ない。ぼくの視界に映っているのは、豪華な部屋の天井で、そこには大きなシャンデリアがあった。もしかしてお金持ちの家の部屋の中なのかな?周りを見てみたいけど、視界も動かせないから、それ以外のことがよくわからない。外の明かりが入ってきてるのが天井越しにわかったから、たぶん昼間なんだと思うけど、それ以上のことはわからない。

 ぼくは、自分で動くことができないことに怖くなった。あの出来事が本当だったらどうしよう、本当にものになっていたらどうしよう。漠然とした不安が襲ってくる。もう2度とパパやママに会えないかもしれない。そんなのいやだ!ぼくは心からそう思った。だからぼくはここにテレポートさせた、どこにいるのかわからない自称神に向かってですら、すがる気持ちで願った。神様、ぼくが悪かったです。反省してます。だから元の場所に戻して!でも、何も変わらなかった。ぼくは泣きたい気分になった。どうしてこうなったのだろう...ぼくがわがままだったから?もうわがまましないようにしたら戻れるの?でも、どうやったら元の場所に戻れるかもわからないのにどうしたらいいの?ぼくは泣きそうになった。でも、涙も出てこない。もしかして本当にものになってしまったの?ぼくはもうだめかもしれない...そう心折れかけたその時、

「ガチャ」とドアの音がして足音が聞こえてきた。え?誰か来る?ぼくを探しに来てくれたのかな?ぼくは少し希望を抱いた。でも、その足音はぼくに近づかなかった。ぼくの近くを行ったり来たりしているみたいだ。ぼくは存在に気づいてもらえないことにがっかりした。ぼくを探しに来てくれたのかなと期待したのに。それに気づいてしまったんだけど、この足音の人はぼくに近づいてこない。だから、ぼくは人間の形をしていなくて、ものに本当に変わってしまったのかもしれない。ぼくはもう自分のおうちには帰れないかも。そう考えると絶望しそうな気持ちになった。

 その足音の人は少ししてぼくのほうに近づいてきた。そして、その人の顔がついに見えた。しかし、知らない人だった。その人は30代くらいの女性で、手に掃除用具を持っていた。その人の格好がメイド服みたいで、この家の使用人なのかもしれない。ぼくは天井を見上げる形での視線で固定されているため、その人の上半身が見えた。その人はぼくに手を近づけた後、ぼくのうえにあったものを引っ張って取り外し始めた。ぼくはそれがシーツに見えた。うん?ぼくの上にシーツが乗ってたの?もしかして、ぼくに気づいてくれた?ちょっとだけ期待したけど、その人はシーツを外した後、手に持ったゴロゴロでぼくの上を掃除をしようとしてきた。うわっ、体に当たるよ!どうしよう。ぼくはおろおろしていたけど、感じた感触は全然違った。痛くもなんともなくて不思議に思った。まるで3Dゴーグルをつけているようで、実体がないものに触られている感じだ。いや、ちょっとだけゴロゴロの触れてる部分から圧力を感じるからそういうわけではないのかもしれないけど。ぼくはよくわからないけど、痛い目にはあわなそうでちょっと安心した。女性はゴロゴロを奥の方までするためにぼくに手をついてきた。女性の体重が手を通してぼくにかかったからか、ぼくは女性の手から圧力を感じた、ゴロゴロよりずっと重い、でもそこまで痛くない感触だ。やっぱり、ぼくはものに変わってしまったみたい。そしてぼくがなってしまったものはベッドみたい?ぼくはベッドで遊ぶのが好きだったからベッドになったのかな?よくわからないけど、ぼくを掃除している女性はゴロゴロが終わると、ぼくの上に新しいシーツや枕を乗せてきた。視界が防がれてないことには驚いたけど、ベッドの視点ってこんな風に見えるのかな?そして、シーツをぼくの上に敷かれた後、ぼくの端の部分を下から持ち上げられた。えっ?とびっくりしているとぼくの下にシーツが押し込まれて降ろされた。ぼくはベッドじゃなくてベッドのマットレスになったみたいだ。その作業をぼくの全周で行うと、最後に布団をかぶせられて、その女性は去って行った。やっぱり視界は防がれない。不思議だなぁ。今のぼくはきっと、どうみても普通のベッドにしか見えないんだろうな。ぼくは諦めの気持ちになりながらもどうにか元に戻れないかなと思っていた。ちなみにね、ぼくの視界って不思議なことに、ベッドのマットレスの上の面、マットレスの表面は見えるんだけど、側面とか裏面は見えないんだ。例えるならば、水族館とかであるトンネル水槽の真上だけバージョンみたいな感じ?そんなふうに見えてるんだ。

 しばらくして夕方になった。たぶんだけど。だって視界が動かせないんだから天井の色合いを見て判断するしかないじゃん。その間、この部屋には誰も来なかった。ぼくはそれまでずーっと最悪な気分でいた。なんでぼくだけこんなことになったの?それになんでこんなことが許される理不尽な世界なの?ってずっと文句ばかり言ってた。口がないから声にはならないけど...そんなことを考えていたらこんな時間になっててふと思ったんだ。もしかして誰もいない部屋に来たのかな?もしそうだったら、誰にも会えないよね。それはいやだな。パパとママに会いたいのが一番だけど、それは難しそうだし、せめて知り合いとか、知らない人は嫌だけど、誰かに会いたいな。ぼくは寂しかった。誰からも相手にされないし、自分がベッドのマットレスになってしまったせいで動くこともできない。そのせいでぼくは誰かに相手にしてほしかった。物としてでもいいから誰かに使ってほしいと思うようになった。それくらい使われないというのはさびしいことなんだねってことにぼくは気づいたよ。でも、誰にも教えられないね。だってぼく、喋れないし、動くこともできないから。自称神が言ってた罰ってこのことなのかなとぼくは思った。


※一応この世界のパラレルワールドに主人公はこの時点で転生?してる設定です。

 細かい設定などは追々明かす予定です。

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