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15.姉妹、おやつを食べて、本を読む 後編

「ねえ、メアリー、まだつづきをききたい?」

「うん、もうちょっとききたい」

「そう、わかったわ。じゃあ、あといっこだけおはなしよむね」

 マリーが、ちょっと疲れた声でメアリーに聞いていた。さっきからマリーは、メアリーがお話の内容が分かるように、ずっと音読しながら読んでたもんね。お話が長いから疲れちゃったのかな。でも、メアリーの要望に応えようとしているのを見ると、優しいお姉ちゃんだなぁって思うよ。無理しすぎないでね。ぼくはマリーにエールを送った。

「えっと、つぎのおはなしは、『パーティー結成』だね。どんなおはなしかたのしみだね」

「うん、よんでよんで!」

「わかったわ。それじゃあ、はじめるね...」


『やあ、僕の名前はビリー。黒龍と相打ちになって死にかけたら、貴重な回復魔法が使える特殊能力保持者を、パーティーメンバーとしてゲットした幸運な男だ!

 なぁんて、実は僕も想定してなかったんだ。まさか、特殊能力がなければ雑魚でしかない僕に、こんなすごい人 (マゼルダさん) が付いてきてくれるとは思ってもなかったのだから。でも、僕は弱いゆえに魔物討伐なんていうミッションをすることはほとんどない。いつも採集とかお使いとかそういったものをメインにしてるから、マゼルダさんの出番はほとんどない。せいぜい、町中でケガをしている人を見かけたら、その時に治療してあげるくらいだ。それなのに、マゼルダさんは僕をリーダーと呼んでくれて、僕の方針に従ってくれる。僕はマゼルダさんに申し訳なく思って、何回も他のパーティーに行った方がいいのでは?と提案したが、見事に一蹴された。いわく、「ビリーさんの活躍により、わたしは救われました。なので、ビリーさんにご恩を返すまでは、わたしはこのパーティーにいます!」とのことだ。』


「ねえ、おねえちゃん、どうして、マゼルダさんは、ビリーにそこまでついていくの?」

 メアリーがマリーに質問していた。確かに、マゼルダさんの行動理由については、今までのお話の中で触れられてないもんね。どうしてなのかな?ってぼくが思っていると、マリーがこうじゃないかな?という回答をしていた。

「うーん、もしかしたら、マゼルダさんはビリーがこくりゅうをたおそうとしたことで、たすけられたのかも?だから、ビリーにたいしておんをかんじてるんだとおもうの」

「そうなの?おねえちゃんすごい!そんなことまでわかるんだ!」

 マリーの回答にメアリーが驚いていたけど、ぼくも驚いた。マリーってこんな想像もできるんだね。すごいなぁ。ぼくはそんなこと全然思いつかなかった。ぼくがマリーに感心していると、マリーがお話の続きを読み始めた。

「つづきよむね」


『そういう状況なので、僕はどうにかして、マゼルダさんを活躍させれるようにしたいと思ってた。せっかく僕についてきてくれてるのに、ほとんど活躍させてあげれなかったからだ。僕が黒龍を倒してから、そろそろ1か月が立つ。僕は体調が復活してすぐに近くの大きな町へ向かった。なぜなら、僕は黒龍の件で村の人に心配や迷惑をかけてしまったと思ったからだ。でも、僕がその町へ移動してから、冒険者らしく魔物討伐をしたのは2回だけ、どちらも数匹のゴブリンだった。町での名声はなぜかそこそこよかったが、実績がないからあまり意味はない。せっかく冒険者として活動しているのに、だ。だから、僕は実力のある冒険者にパーティーに入ってもらおうと決め、行動をすることを決めた。

 その日、僕は冒険者組合に顔を出した。マゼルダさんも一緒だ。普段は組合から依頼を受け取って、ミッションをするために寄るが、今回は違う。依頼を受け取りに来る冒険者を勧誘するのだ。マゼルダさんにも協力してもらえるから、絶対に強い冒険者を見つけて、パーティーに入ってもらおう!よし、がんばるぞ!

 僕とマゼルダさんは組合内の飲食ができるテーブルのところで2手に分かれて動きはじめた。よし、最初は体格がよくてムキムキなお兄さんに声をかけよう。

「こんにちは。僕、ビリーという者ですけど、僕のパーティーに参加してくれませんか?」

「なんだ、ひょろガキ。お前冒険者なのか?ふんっ、そんな体で冒険者を名乗るなど、言語道断!もっと体を鍛えなおして出直してこいっ!」

 こわい。ムキムキなお兄さんが机を叩きながら凄んできた。ぼくは「ひぃっ」という情けない声を漏らしながら、「すみません。出直してきます!」と言って逃げるようにしてその場から逃げて行った』


「おねえちゃん、おはなしのしゅやくなのに、ビリーってそんなによわいの?」

「うん、そうみたい。だっていままでのおはなしをよんでると、よわいまものしかたおせなくて、ひょろひょろしたたいかくで、けんのうでもいまいちなんだよ。だから、ちょっとつよそうなぼうけんしゃにおびえってるのだとおもうの」

 そうだよね、ぼくもそう思うなぁ。ビリーって全然強そうには見えないもんね。でも、メアリーはそんなビリーが嫌みたい。残念そうな声でこんなことを言っていた。

「えーっ、じゃあ、ビリーはぜんぜんぼうけんできないの?」

「うーん、これからのおはなしをよまないと、わからないね。つづきよんでみよう」

「うん、おねえちゃんおねがい」

 これからのお話でどうなるか、続きを求めるメアリーの声がちょっとだけ期待に満ちたものにぼくは感じた。ぼくもこの後の展開どうなるのか楽しみだなぁ。

「それじゃあ、つづきよむね」


『僕はその場から逃げ出してしまって、組合の中にあるトイレへ駈け込んだ。なぜなら、今の状態の僕を誰にも見られたくなかったからだ。個室の中で、僕は鼻高になっていたことを後悔した。僕自身には何の力もないのに、マゼルダさんが僕についてきてくれるから、何でもできると思ってしまった。僕がマゼルダさんを活躍させられると考えてしまった。だから僕は、こんなにも不相応なことをしてしまったんだ。僕は自分を恥じた。このまましばらくここで誰にも会いたくない。僕はどうせ雑魚の冒険者なんだ...』


「おねえちゃん、ビリーはもうダメなの?」

「そうね、こころがおれちゃったみたい。もうダメかもしれないね。でもまだつづきがあるの。もうちょっとききたい?」

 メアリーが悲しそうに言ってるのを聞いて、マリーはお話をするのをやめようとしてるみたい。メアリーにとってはショックだよね。主人公が諦めてしまった様子は。ぼくも残念だなぁって思ったけど、このお話はそういうものなのかもしれない。だから、ぼくは、メアリーに違うことを考えようって言ってあげたかった。でも、メアリーはちょっと違った。

「うーん...おはなしがとちゅうだったら、さいごまできいてみたい!」

 メアリーは続きを聞くことを決めたようだ。ぼくはメアリーがどうして続きを聞こうとしたのかわからず、ちょっとびっくりした。

「メアリー、どうしてつづきがききたいの?ビリーのようすでショックをうけたでしょ?」

「うん、そうだけど...おはなしはさいごまでどーなるかわからないでしょ?」

 はっとぼくは気づかされた。そうか、メアリーはどうなるのかわからないから続きが聞きたいんだね。ぼくは、メアリーに違うことを考えるように提案しようと思ったことを後悔した。マリーも驚いてる声が聞こえてくる。

「そ、そうね。たしかにさいごまでおはなしはわからないもんね。わかったわ。つづきをよむね」

 ぼくも気持ちを切り替えて、マリーがお話してくれる内容に耳を傾けよう(耳ないけど)。そう思って、ぼくはマリーの音読を聞くことにした。


『僕がそんな思考にとらわれて少し時間がたった。時間が経つにつてれて、落ち込んでた気分が少し落ち着いた。そこで僕は、マゼルダさんが僕に協力してパーティーメンバーの募集をしてくれていることに気が付いた。僕は自分が情けなくなった。僕がやろうとしたことを、結局はマゼルダさんに押し付けてしまった。こんな僕に冒険者なんてする資格がない。でも、マゼルダさんがしてくれたことを忘れちゃいけない。だから、僕はマゼルダさんのところへ行かないと!僕はそう思って、トイレから出た。会ったらこれまでのことを謝ろう。そして、ぼくよりもっといいパーティーに行ってもらおう。そう決意した僕だけど、組合の広間へ行くと、そこには僕が信じられないような光景が広がっていた。

「えっ、黒龍を倒した凄腕のパーティーが人員を募集してるのか?」

「みたいだぞ。俺先に応募するわ!」

「おい、待てよ!俺が先だろ?」

 いったい何がどうなってんだ?どうしてこの状況に?僕があたふたしていると、マゼルダさんの姿が見えた。僕は思わず声をかけた。

「あっ、マゼルダさん!ビリーです。これはいったい...」

「あっ、ビリーさん。ちょうどいいところに。こっち来てください!」

 僕はわけが分からず、でも、マゼルダさんが呼んでるから「はいっ」と言いながらマゼルダさんに近づく。すると、マゼルダさんがこんなことを大声で話した。

「皆さん!こちらが黒龍を倒された方、その名も、ビリーさんです!」

 えっ、僕、黒龍を倒した?何言ってんの、マゼルダさん...そんなことを考えてる僕にはお構いなく、周囲の冒険者たちはこんなことを言っていた。

「こいつが黒龍を倒しただと...?マジか、すげえじゃねえか兄ちゃん」

「お前、そんなにすげえ奴だったのかよ」

「あっ、さっきのひょろガキ...じゃなかった。ビリーさん、そんなすごい方だとは思いませんでした。さっきの無礼はお許しください!」

「えっ、ちょ、まっ...」

 僕が冒険者たちの相手にあたふたしてると、マゼルダさんがニコッとしながら口パクで「ちょっと盛りましたが、事実を皆さんにお伝えしました」と言ってきた。僕、そんなに強くないって!

 広間は混乱の中に包まれていたが、僕の頭の中はもうなにも考えられなくなっていた。どうしよう、どうしよう、このままじゃ、僕、すげえ強いやつになってしまう。そんな僕に近づいてくる人がいた。その人が近づくと、周りにいる冒険者がさっと道を空けた。それだけで、圧倒的強者っていうことがわかる。そんなやばそうな人が僕に来てる。やばっ、殺される!そんなことを考えてた僕に、その人はこう話してきた。

「俺の名はメディス。タンクだ。タンクだけど敵を押しつぶすのが好きだ。俺をパーティーへ入れてくれ」

 僕は恐る恐るその人を見た。まるでクマみたいに体格をしてる。その場にいるだけで押しつぶされそうな迫力。ちょーこわい。でも、僕はよわい。一緒に行動したらどうなるか、知れたもんじゃない。だから、ぼくは必死に頭を働かせた。どうしたらこの状況を打破できる?どうしたら、この人を断ることができる?あっ、そうだ!僕がこの人より強いってことにして乗り切ってみよう。僕はそう考えてこう口にした。

「僕はビリー。黒龍を倒した男だ。お前ごときの戦力欲しくもない。だから断る!」』


「おねえちゃん、なんかすごいことになっちゃった!どうなっちゃうの?」

「ふふっ、おもしろいね。あとちょっとだからさいごまでよんじゃうね」

 お話が予想外に面白くて、ぼくは興奮した。どうなるのかな?早く続きを聞きたい!ぼくはマリーの音読に夢中になってた。マリーもメアリーもお話に夢中になってるみたいで、自然と続きが始まった。


『「ほお、この俺相手にそんなことを言えるやつはそう多くない。わかった。それなら俺がお前より強いことを証明するためにパーティーへ入らせてもらう」

「おい、僕は認めてないぞ」

「いや、お前が認めてなくてもそれでいい。俺はお前よりもすごいことを見せつけるためについていくだけだ」

 いやいや、それは困りますよメディスさん。僕は内心半泣きになりながらもマゼルダさんへ視線を向けた。どうか助けてほしい!お願いだ!視線でそう訴えたのが伝わったのか、マゼルダさんはこんなことを言ってた。

「わかりました。ビリーさんがこう言ってますので、わたしはメディスさんを仮のパーティーメンバーとして扱います。正式なメンバーになるかは、ビリーさんがメディスさんの実力を見てからにしますね」

 僕は真っ青になった。いや、そうじゃない!こんなやばそうな人を入れちゃダメだ。僕が心の中で叫んでたけど、周りはお構いなく騒ぎ立てる。

「うぉおおお、メディスさんがビリーのパーティーに入りやがった!すげえぇ」

「メディスさんで、ビリーさんより弱いってことは、俺たちじゃ到底敵わないじゃないか。くそお、俺にもっと力があれば」

「くっ、なんてやつに俺はケンカを売ってしまったんだ...」

 そんな騒動の中、マゼルダさんが僕に近づいてきて、「よかったですね。強い人がパーティーに入ってくれて」とささやいてきた。

 そりゃそうだけど、当初の目的は達成できたけど、このままじゃやばい...どうしたらいいんだ。僕はニコニコ笑うマゼルダさんと、無表情で見つめてくるメディスに囲まれ、途方に暮れていた』


「ふうー、これでおはなしはおしまい!メアリー、おもしろかった?」

「うん、ドキドキしてたのしかった!」

 ぼくもマリーの音読を聞いてて楽しく感じた。ありがとう、マリー。ぼくは心の中で感謝した。

「よかったわ。つづきがきになるけど、そろそろゆうしょくのじかんね」

「えっ、そうなの?あっ、ほんとだ。もうこんなじかん」

「おくれないように、じゅんびしときましょ、メアリー」

「うん、おねえちゃん」

 2人はそう言うと、飲み物を飲む音や片づけをする音が聞こえてきた。マリーがお茶でも飲んで、メアリーが片づけしてるのかな?そんな音を聞いていると、ほどなくして使用人が部屋に入ってくる音が聞こえた。

「お嬢様方、夕食の用意ができました」

 この声は聴いたことないけど、また別の使用人なのかな?女の人の声が聞こえた。どんな人なのかな?

「わかったわ。いくよ、メアリー」

「うん、おねえちゃん。おなかすいたー」

 そんな声が聞こえた後、姉妹とその使用人は部屋から出て行った。ほどなくして別の使用人の人が入ってきた。この使用人は声も体も見えないので誰なのかまったくわからない。でも、その使用人は部屋の整理をしているようだ。ぼくはその音を聞きながら、マリーが音読していたお話を思い返す。面白かったなぁ。また続きを読んでもらえたらうれしいなぁ。珍しくぼくは寂しい気持ちにならず、静かな部屋の中で余韻に浸っていたのだった。

やっとこのお話を書きあがられました。

この世界の設定とかを詰め込んでみたら、思った以上に長くなってしまいました。でも、書いてて楽しかったです。


あっ、この作品自体は続きますよ!まだ全然途中なので、引き続き頑張って書いてみようと思います。

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