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15.姉妹、おやつを食べて、本を読む 前編

 それから1時間くらいがたったころ、マリーが目を覚ました。メアリーの寝相が悪くて、起こされたようだ。ぼくがさっきまで、メアリーがジャンプの練習をする夢を想像したからか、ぼくがその想像をやめてからも、メアリーは寝ながらしばらく暴れてたもんね。足をバタバタ動かしたり、ゴロゴロと転がりまくっていたメアリーは、マリーの体にたびたびぶつかってしまったんだ。そうなると、ぼくのせいでマリーは起きちゃったのかな。そう思うと、ぼくはマリーに申し訳なくなった。ぼくは心の中で、ごめんなさいと謝りながらもマリーを支える。マリーはまだ眠そうな目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる。寝不足でちょっと不機嫌そうだったから、まだ眠たいなら寝てていいんだよってっぼくは思ったんだけど、一度目が覚めたら頭が起きたみたい。少し周りをちょっときょろきょろしてると何かに気がついたのか、ハッとしてから少し慌ててメアリーを起こしにかかった。マリーはいったい、なにに気がついたのかな?

「メアリー、そろそろおやつのじかんだよ、おきて」

 もしかして、マリーは何かを見ておやつの時間にもうすぐなることに気がついたのかな?時計みたいに時間がわかる何かを見たのかもしれないね。だからちょっと慌ててメアリーを起こそうとしてるのかも。ぼくがそんなことを考えてる間にも、マリーはメアリーにそう呼びかけながら、眠っているメアリーの体を揺さぶった。でも、メアリーは「うぅん、もにょごにょ」って言ってまた眠ろうとしてる。メアリーはまだまだ寝たらないみたいだね。そんな様子を見たマリーは、はぁってため息をついた後、メアリーの耳元に口を近づけて、ちょっと大きな声でこう言った。

「はやくおきないと、わたしがメアリーのおやつもたべちゃうよ」

 その声が聞こえると、メアリーはビクッと体を震わせた後、がばっと起きた。そして、「それはダメぇ!」と慌てたように叫んだ。昨日もそうだったけど、メアリーのおやつに対する反応が凄いよね?そんなにおやつが大好きなのかな?もしかしたら、マリーがメアリーをお昼寝から起こすとき、毎回こんなやり取りをしてるのかも。そう考えると、ぼくはそんな姉妹の様子がちょっとおかしくて、笑ってしまいそうな気分になった。まぁ、ぼくはベッドのマットレスになっちゃってるから、笑えないんだけどね。

 そんなこんなで慌てて起きたメアリーは、ちょっとウトウトしながらも目を覚ましたようだ。体を起こしてすぐに、マリーにギューって抱き着いて、べったりくっついちゃったけどね...マリーはそんなメアリーを見て苦笑しながらも、メアリーの頭を優しくなでて、「ほら、いくよ」って言ってから、ぼくの上を立ち上がって、ベッドから降りるために歩き出した。メアリーもマリーの手に引っ張られて、よたよたしながらもぼくの上を立って歩き出す。ぼくは、ちょっとメアリーが転んでけがしたりしないか心配だったけど、マリーがちゃんとメアリーを引っ張ってくれてたから安心できた。でも、念のため、ぼくはマリーとメアリーの足をしっかり支えておいて、転んでしまっても痛くないようにふかふかにしておいたんだ。

 ぼくから2人が降りて行ってちょっとすると、椅子のガタゴトの音が聞こえてきた。2人はどうにかおやつを食べるテーブルのところまで行けたみたい。でも、メアリーはまだ眠たいようで、こんなことを言っていた。

「おねえちゃん、もうちょっとだけねてたいよぉ」

「メアリーはおやつをたべなくてもいいのかしら?」

「あっ、ううん、なんでもないよ!なにがでるかたのしみ!」

「そう?さっきのことばはきのせいだったのかな?」

「うん!きっとそうだよ!うぅ...」

 なんかコントみたいなこと言ってるね。ぼくは2人の会話がおかしくて声を出して笑いたくなった。でも、声を出せないんだよね。そんな僕の状態に不満を覚えつつも、どうしようもないから、はぁって気持ちになっちゃった。一度でいいから、元の姿に戻って姉妹とお話してみたいなぁ。

 ぼくがそんなことを考えていると、ドアが開く音が聞こえてきた。使用人がおやつを持ってきたのかな?

「お嬢様方、おやつをお持ちしました。本日ははちみつ入りのクッキーです」

「わーい!ミレーヌ、もうたべていい?」

 メアリーの声は、眠そうな声から、急に元気な声に変わった。それだけうれしかったんだろうね。メアリーが眠そうにしてるところにお菓子が現れて、目をキラキラさせてる様子が思い浮かぶなぁ。あと、この使用人の声は聴いたことないけど、ミレーヌって言うんだね。顔を見ないと忘れちゃいそうだ。

 どんな人なのかよくわからないけど、そのミレーヌはメアリーにこう答えてた。

「いいですよ、のどにつまらせないように、気を付けてお召し上がりください」

「いただきます!モグモグ、ごっくん、うわぁ、おいしい!」

 メアリーがクッキーを食べる音が聞こえてきた。うれしそうな声を聞いてると、ぼくもちょっとうれしくなった。あと、ぼくも食べたい...はやく元の姿に戻りたいなぁ。

「マリー様は、本日もおやつは召し上がられないでしょうか?」

「そうね、まだちょっとたべるきぶんじゃないから、きょうもメアリーにあげておいて」

 もしかして、マリーは昨日のメアリーとの約束を守ったのかな?明日もおやつをあげるって言ってたもんね。

「かしこまりました。メアリー様、こちらも召し上がられますか?」

「うん、たべる!おねえちゃんありがと!」

「ふふっ、どういたしまして」

 なんとなくだけど、マリーはメアリーに向かってウインクしてそうな気がする。でも、メアリーはマリーが約束してくれた、おやつをあげるということ自体忘れていて、マリーのウィンクを見てきょとんとしてそう。

 ぼくがそんな想像を心の中でして、面白く思ってる間にも、メアリーは順調にモグモグしてたみたいで、気づいたら「ごちそうさま!」って声が聞こえてきた。

「メアリー様、お口の周りに食べかすが付いてますので、お拭きしますね」

「ミレーヌ、ありがとう」

「いえいえ、とんでもございません。私はこれで失礼しますので、お嬢様方は夕食までごゆっくりおくつろぎください」

 ドアの音が聞こえてきたから、ミレーヌが部屋を出て行ったみたい。2人はこれから何をするのかな?姉妹がお茶を飲んでる音を聞きながらぼくがそう思ってると、メアリーがこんなことを言い出した。

「あのね、おねえちゃん、いまからほんをよんでほしいの」

「いいよ、どんなおはなしがききたいの?」

「まものをやっつけるおはなしがいい!」

「あら、メアリーってそんなおはなしがすきだったの?」

「うん、きのうのまものをやっつけてくれたレーゼがかっこよかったから、おはなしをみたくなったの」

「たしかに、すごくかっこよかったわね。スパッとまものをいっとうりょうだんしてたところとか」

 えっ、そんな強そうな人がこの家にはいるの?用心棒の人かな?ぼくはどんな人か想像してみた。すごくムキムキで、いかにも強者って感じのガタイのいい男の人かな?でも、レーゼって名前だから、もしかしたら女の人かもしれないよね。そうなるとどうなるのかな?スタイリッシュで引き締まってる細長い人なのかな?ちょっと考えてみたけど、ぼくにはよくわからなかった。かっこいいっていうぐらいだから、ぼくも一度会ってみたいなぁ。

「じゃあ、どのほんをよむかきめよう」

 マリーがそう言うと、椅子のガタガタという音と、2人の足音が聞こえてきた。姉妹はどんなお話を読むのかな?ぼくがいた世界とは違う世界だから、面白いお話が聞けるかもしれないよね。ぼくはちょっとワクワクしながら2人が本を取ってきて読みだすのを待った。

「よしっ、これにしよう!」

「おねえちゃん、これはなんてだいめいのほん?」

 メアリーはまだ文字が読めないみたいだね。見た目からして、まだ幼稚園の年中組くらいの子だから読めなくても当然かも。でも、マリーはちゃんと読めるみたい。メアリーの質問にこう答えてた。

「これはね、えっと、『ビリーのぼうけんだん』ってほんだね」

「そーなの?じゃあそれがいい!」

「いいよ、じゃあ、あっちのつくえでよもう」

「うん」

 2人がその会話をすると、また、ガタガタという椅子の音が聞こえてきて、本を机に置いたのか、ドサッて音がした。なんかすごく重そうな音がしたけど、そんなに分厚い本、2人は全部読めるのかな?

「それじゃあ、はじめるね。『やあ、僕の名前はビリー。冒険者で、いろんな土地に行ったことがあるんだ...』」

 ぼくの心配をよそに、マリーは音読を始めた。メアリーは文字が読めないから聞く専門みたい。どんなおはなしか楽しみなので、ぼくもメアリーと同じように続きを聞くことにした。

本のお話部分が長くなりそうだったので、続きは後編で。

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