1.こういち、神?に誘拐される
20XX年 日本の某住宅街の一角でのできごと...
ぼくの名前はひいらぎこういち。6歳の男の子だ。ぼくは仲のいい友達が少なくて、いつも家の中で遊んでいる。ぼくは冒険するのが大好きで、宝探しをして遊んだり、絵本のお話をまねて遊んだりするのが好きだ。好きなことは体を動かすこと。いつも家の中で走ったり、跳んだりしてママから注意される。でも、ぼくは気にしない。だってなんだかんだママは優しいから。ママに怒られそうになったとき、ぼくが涙目になって「いえのなかであそびたいの。ゆるして!」って言うと大体のことは許してくれる。あっ、そこ、ダメなママじゃんって思ったでしょ?実はぼくも少しそう思ってる。たまに友達の家に行くからわかったんだけど、友達のゆうくんはゆうくんママからすごくきつく怒られてるのを何回かみたことあるから。相当怖いんだよ、ゆうくんママは。それにくらべてぼくのママはすごく優しいから大好きなんだ。だからゆうくんからは「こうちゃんのいえみたいにもっとやさしくしてほしいのに」とよく言う。
最近面白いことがあったんだ。それはね、ぼくの家にベッドが届いたの。今まで布団で寝てたから、ベッドを初めて見たときはびっくりしたよ。おっきくてふわふわしてて、乗ったら体がうまるんだよ。布団と全然違うから面白くて、ごろごろしたり、ジャンプしてみたり、飛び乗ったりして遊んだんだ。残念なことにぼくのベッドではなかったけど、パパとママの部屋にあるから起きてる間にたくさん遊んでる。今日でベッドが家に来て1か月たつんだ。ぼくはベッドでの遊びを毎日してたから、いろいろできるようになったんだよ。たとえばベッドへ飛び乗る遊び。最初のころはベッドの淵に手を乗せて、よじ登ってたんだけど、今はもうそんなことしなくても飛び乗れるんだ。部屋の入り口からベッドに向かって走りながらジャンプをすると、飛び乗ることができるようになったんだ。すごいでしょ?ベッドに勢いよく乗れると達成感があって楽しいんだ。それに痛くないから多少変な乗り方をしても怖くないのがいいよね。あとね、いろいろなジャンプができるようになったよ。最初は両足でちょっとだけしかジャンプできなかったけど、今は片足でもできるし、バランスを崩さないでたくさん連続でジャンプできるようになったんだ。ジャンプすると空を飛んでるみたいで楽しいの。それにふわふわしてるから、ベッドに着地した時の感触が気持ちよくてやめられないだ。昨日見つけた遊びなんだけどね、ベッドでジャンプして遊んでたら間違って枕をふんじゃったの。あっ、どうしようって思ったけど、枕を踏むとベッドのふわふわの感触とはちょっと違って面白かったからあんまり気にしないことにしたよ。だから、パパとママにばれないようにこっそり遊んでるんだ。ベッドはふわふわでも支えてくれる感じがするけど、枕はふわふわだけで踏むとぺしゃんこになるの。枕を踏むとね、綿あめみたいなものの上にのってるようなふわふわが感じられて面白いんだ。
ぼくの家にはたまに遊びにくる子がいる。今日はその子が来たんだ。その子の名前はふかだまり。ぼくより1個上の7歳の女の子だ。まりちゃんはぼくにいろいろ教えてくれたり、一緒に遊んでくれる幼馴染だ。昔、ぼくが珍しく公園で遊んでいたときに一緒に遊んで以来、たまにこうやってぼくの家に来るんだ。勝気な性格でぼくはいつも振り回されるけど、普段はないことだからそれも面白くてそこそこ仲がいい。
まりちゃんが来たので、ぼくはまりちゃんを連れてパパとママの部屋に来た。もちろんベッドで遊ぶためだ。まりちゃんに新しい遊びをしてるんだって自慢したくて連れてきたんだ。一緒に遊んでくれるといいな?
ぼくはまりちゃんに一緒に遊んでほしかったから、ベッドに飛び乗りながら誘った。
「さいきんはこのベッドでいつもジャンプしたりとびのったりしてあそんでるんだ。だからまりちゃんもいっしょにあそぼ!」
そしたらまりちゃんは、びっくりした表情をした後、こんなことを言ってきた。
「え、でも、ベッドであそぶのはダメって、お父さんからいわれたことがあるの。だから、こうちゃんもやめたほうがいいよ」
えっ、どうして?ぼくは疑問に思って「なんで?」と聞き返した。ぼくのパパやママから注意されたことはあっても、ダメって言われたことはないから不思議に思ったんだ。そしたら、
「だって、ベッドはねるためのものだよ。だからベッドでジャンプしたりとびのったりしたらこわれちゃうよ」
まりちゃんはそんなことを言ってきた。でも、ぼくはそんなことないって思う。だって今までたくさんベッドでジャンプしたり飛び乗ったりしたけど壊れたことがなかったから。だからぼくは
「それはうそだよ。だってこわれてないもん」
とまりちゃんに理由を言った。そしたらまりちゃんは不安そうに
「でも、そのうちこわれちゃうよ。ベッドをだいじにつかってあげないと」
と言って、ぼくを心配してきた。ぼくはそんなに危ないことしてないのになって思ったから言い返した。
「だいじょうぶ。ベッドはじょうぶだからこわれないよ。しんぱいしないでまりちゃんもあそぼ」
そう言うと、まりちゃんは仕方なさそうな顔をしながらも、
「はあ、しょうがないわね。そんなに言うならすこしだけあそんであげるわ。でも、ちょっとだけだからね」
と言って、しぶしぶだけどベッドの上に乗ってくれた。ぼくはうれしくて
「じゃあ、いっしょにジャンプしよう」
と誘う。ぼくはまりちゃんと手をつないでから、ピョンピョンとジャンプを始めた。手をつないでるからか、いつもより安定感があってぼくは楽しい。でもまりちゃんはちっともジャンプしてくれない。
「まりちゃんもジャンプしようよ」
とぼくが言ったら、
「こわしてしまわないかしんぱいなの」
とまりちゃんが不安そうに話した。
「じゃあこわさないていどにジャンプしてあそぼ」
ぼくがそう誘うと、まりちゃんはちょっとだけジャンプしてくれた。まりちゃんがジャンプするとぼくとは違う振動がベッドに立ってるぼくの足裏に伝わってきた。今までなかった感触に面白くなって
「まりちゃん、もっとやって」
とぼくはせがんだ。まりちゃんは
「すこしだけよ」
と言ってちょっとの間ジャンプを続けてくれた。まりちゃんと一緒にジャンプすると着地したときの感じがまた違ってて面白かった。ぼくはさらに続けようとしたけど、まりちゃんは
「もうちがうあそびにしようよ」
そう言ってベッドから降りてしまった。でも、ぼくはまだベッドで遊びたくて
「あーあ、もうおしまい?」
と聞いた。まりちゃんは
「あんまりベッドでばかりあそんでるようだったらわたしかえるもん」
とそっぽを向いて部屋から出て行った。ぼくは慌てて
「わかったから。たからさがしゲームをしようよ」
と言いながら、まりちゃんを追いかけて行った。
ぼくとまりちゃんはそれから宝探しゲームをした。まりちゃんが伝説の弓をゲットしてしまってぼくが地団駄を踏んで再戦を誓ったり、まりちゃんとお店屋さんごっこをしてぼくがまりちゃんにばかみたいな値段の商品をおすすめしたらまりちゃんから100万ドル札と書かれた紙を渡されて購入したことにされてしまい、ぼくは涙を流したり。ああ、ぼくはお菓子代をかせげなかった...そんなこんなで楽しい一日を過ごした。
まりちゃんが帰ってしまった後、ぼくはまたパパとママの部屋に行ってベッドで遊んだ。最近は毎日のようにこのベッドで遊んでいるので、もはや日課となってしまった。でも楽しいからいつまでも続けられそう。体にもいいからもっと頑張ってベッドで遊ぼう!ぼくは決意を固め、ベッドに乗り込む。
いつものようにぴょんぴょんしてたらママがやってきた。
「こうくんご飯よ。いつまでも遊んでないで早く来なさい。あと、もうベッドであんまり遊ばないでほしいわ。こうちゃんがけがしたら困っちゃうから」
ママはいつも同じことを言ってる。内容は若干変わるけど、「こうくんにケガしてほしくない」って言う。でも、ぼくは思うんだ。今までベッドでそんなこと一回もなかったんだよ。それだったら大丈夫じゃないの?って。だからぼくは、
「けがしないからだいじょうぶだって。それにたのしいからもっとしたいの」
と言った。するとママは
「ベッドで遊ぶのは危ないことなんだよ。今はそうかもしれないけど、なにかあったら大変だから。それにベッドも壊れちゃうかもしれないよ」
と言ってきた。ベッドが壊れることなんで想像できない。でもこのままじゃこの遊びができなくなってしまいそうだとぼくは思った。ぼくは必殺技を発動した。
「ママー、だめなの?うぇっく、まだ遊びたいのに...」
必殺泣き落とし。ぼくが泣き出すとママは慌てだす。ママVSぼくでぼくのほうが劣勢になった時にこの技を使用すると100%の確率でぼくのほうが優勢になる。つまりうやむやにできるということだ。ぼくはママに抱かれてあやされながら勝利を確信した。よし、これからしばらくはベッドで遊べるぞ!ちなみにパパには通用しない。ちょうど出張で家にいないからラッキーだね。
ただ、ママがぼくとの勝負に敗北するとぼくの部屋の布団に強制退場させられる。今日はご飯とお風呂がまだだったから、それを済ませるまでは待ってくれたけど、そのあとは速攻でぼくの部屋の布団へ連れ込まれる。ママは
「ごめんねぇ、こうくん遊びたかったよね。わたしも悪かったから、今日はもう寝て明日またいっぱい遊ぼう!」
とママは励ましの言葉をぼくにかけながら寝かせてくれる。寝付けないときは読み聞かせ付きだ。ぼくはなにげに読み聞かせが好きだ。ただ、素直に読み聞かせしてってママに言いきれないからこういう時だけだ。だからぼくは頑張って起きようとするが、布団の魔力とママの読み聞かせは反則級だ。気づいたら寝落ちしてる。今回もまたうとうとしながら寝そうになっていると、不意に知らない声が聞こえた。その声はこう言った。”テレポート”
ぼくは「えっ?」と戸惑った。さっきまで布団の中、しかもママの読み聞かせ付きの空間にいたのに真っ暗な何も見えない空間がそこには広がっていた。さっきの声は何だったのかな?頭の中に直接響くような変な聞こえ方をするから変な感じがした。ぼくがいるところの床は輪っかみたいな光がぼくを囲んでて、その周りは光がないのか暗くて何も見えない。え、なにこれ。どうなってるの?ぼくは不安に駆られて周囲を見回した。するとはるか上のところに浮いてる人がこっちを見ているのに気が付いた。驚いたことに、その人は体から白い光が出ていて光っている。その人はぼくと視線が合うと
「おぬしが問題を起こしてる哀れな子羊か。どうしたものか」
と聞こえた。さっきの声だ。ぼくは何のことなのかわからずに首を傾げた。この人誰だろう。どうして知らない人が目の前にいるんだろうと思った。そしたらぼくの考えを読んだかのようにその人はこう言った。
「わたしは人間たちのいう神という存在だ。おぬしをこの空間に転移させたのはわたしだ」
えっ?この人神様なの?なんでそんなのが目の前にいるの?ぼくは急展開すぎて混乱してしまい、神を名乗る人をぼけっと見続ける。
「おぬしはわかっていないようだから説明するが、おぬしに使われているものからおぬしを導いてほしいと何度も相談を受けた。わたしはそんな下々のことなぞ気にする必要はないと思っていたが、おぬしの行動を見て、こやつは導くどころか懲らしめて反省させなければいけないとわたしは思った。だからおぬしには罰を受けさせるため、ここに連れてきたのだ。」
うん?ぼくって何かとてもわるいことでもしたのかな?そんなことしてないけど。それに話がめちゃくちゃでわけわからない。ぼくはたまらず、
「だれだかしらないけどここからだして!そんなのしらないもん」
と怒った。しかし。自称神は全然聞くそぶりも見せず、ぼくに何かの映像を見せてきた。
「安心しろ、おぬしの体のコピーが元の世界の場所に置いてある。そのコピーは本物と何一つ変わらず行動し、だれにもおぬしとの違いには気づかない。だからおぬしは別の世界で罰を受けてても何も騒がれないぞ」
えっ、なにそのチートみたいな能力。ぼくはとてもびっくりした。その映像にはぼくと同じ姿の人間がぼくの部屋の布団の中で寝ている様子だった。ママが一瞬映ったけど、ママは偽物に向かって「こうくんおやすみ」とささやいて出て行ってしまっただけだった。これ、ママ気づいてないやつじゃん、そんなの反則でしょ。てかどうしてそうなった?ぼくは焦った。このままではまともなことにならないと直感で分かったからだ。だからぼくはあがいた。
「なにもしてないのに、どうしてこんなしうちがゆるされるの?おかしいでしょ!はやくもとのばしょにかえしてよ!」
ぼくは泣きわめきながら怒鳴った。でも、自称神は取り合ってくれず、
「おぬしには今から罰を受けてもらう。おぬしの罰を訴えてきた物と同じ境遇を味わうがいい、ワハハハハ」
自称神はそう言ったら、ぼくの体が突然宙に浮いた。えっ?これどうなるの?慌てるぼくを神は笑いながら再び”テレポート”と声が聞こえたかと思うと、ぼくは見知らぬ部屋に投げ出されていた。おい、自称神、もはや悪魔だろ!