14.姉妹、縄跳びの特訓をする
2人が紅茶を飲む音が聞こえて少し時間がたったころ、メアリーがマリーに話しかけた。
「おねえちゃん、みてみて!」
「どうしたの、メアリー?」
「そこですわってまってて」
メアリーはそう言うと、椅子から立ち上がったようで、部屋の中を歩く音が聞こえてきた。あっ、もしかして、メアリーはマリーに縄跳びができるようになったことを見せようとしてるのかな?
がさごそという音が聞こえた後、メアリーは「じゃじゃーん!」と言って何かをマリーに見せたみたい。
「メアリー、それってなわとびにつかうなわ?」
「そうだよ!わたしね、なわとびできるようになったの!」
「えっ、そうなの!?すごいわね、さっそくみせてくれる?」
「いいよ。ちゃんとできたらほめてね」
「わかったわ。よーくみとくね」
「それじゃあ、やってみるね。えいっ!」
メアリーのその声が聞こえたと同時に、縄が風を切るビュンって音が聞こえた。ぼくはドキドキしながら結果がどうなるのかを待ってた。すると、パシッって縄が床に当たる音がした後に、ドスンというマリーが床に着地した音が聞こえた。成功したみたい。メアリー、お姉ちゃんにできるところを見せられてよかったね。
「メアリー、ちゃんとできてたよ。よくできたわね」
「えへへ、エレナにおしえてもらったの。きょうだけでできるようになったんだよ」
「へぇ、エレナに...おしえてもらえてよかったわね、メアリー」
「うん、わたしもおねえちゃんをおどろかせれてうれしい!」
メアリーのうれしそうな声が聞こえてきて、ぼくもうれしくなった。マリーもきっとメアリーの成長がうれしんだと思う。メアリーに対するマリーの声が優しかった。
「ねえ、メアリー。わたしもなわとびができるの。それでね、わたしはもっとすごいのもできるのよ。みたい?」
「うん、みたい。みせてみせて!」
マリーはメアリーにすごいものを見せようとしてるみたい。マリーの得意げな声が聞こえてきた。いったいマリーはどんな縄跳びをするのかな?ぼくはちょっと楽しみになった。
「ちょっとあぶないから、メアリーははなれててね」
「うん、そうする」
マリーがメアリーから離れていく足音が聞こえた後、マリーが縄跳びをしてる音が聞こえてきた。メアリーと違って、パシッという音とドスッっていう音が、リズムよく交互に聞こえてくる。連続で何回もできてるみたい。メアリーは「おねえちゃん、すごーい!」って驚いてるけど、マリーはもっとすごいのを見せたいようだ。
「メアリー、いまからもっとすごいのをみせるよ。よーくみててね」
「うん、たのしみ!」
その会話が聞こえた後、再びマリーは縄跳びを始めたみたい。なにが起こるのかな?ぼくも楽しみにしてると、縄が風を切る音が大きくなってビュビュンって音に変わった。急に縄のスピードが上がった?でも、マリーの床に着地する音のリズムは変わってないよ?どういうことなんだろう?ぼくが不思議に思ってると、メアリーが歓声を上げた。
「おねえちゃんすごいっ!いっかいジャンプするときに、にかいもなわをまわしちゃったよ!」
「ふふんっ、すごいでしょ?これはね、にじゅうとびっていうの」
ぼくはマリーの自慢気な声を聞いて、ほんとにすごいなぁって思った。マリーってまだそんなに大きくないのに、二重飛び出来ちゃうんだ。ぼくの友達のまりちゃんもできてたけど、小学校に入学してからできるようになったとか言ってた。マリーは多分だけど、小学校に入学する前ぐらいの子だと思うから、ぼくはそんな子が二重飛び出来ることにびっくりしちゃった。
「おねえちゃん、わたしもやってみたい!」
メアリーが期待に満ちた声でマリーに言った。でも、マリーはその期待に応えられないみたいで、残念そうな声で返事をした。
「ごめんね、メアリーにはまだはやいわ。とってもむずかしいの」
「でもでも、おねえちゃんができるんだったら、わたしもしたいよぉ」
メアリーがちょっとぐずりだす声が聞こえた。マリーはちょっと慌ててる雰囲気だったけど、何かを思いついたのか、メアリーに話しかけた。
「じゃあ、まいにちちょっとだけとっくんしてみない?」
「どんなとっくんをするの?」
「それはね、ジャンプのれんしゅうをするの」
「ジャンプ?どうして?」
「いまのメアリーはね、なわとびするとき、あまりたかくとべてないの。だから、ジャンプのれんしゅうをしたらいいとおもうのよ」
「いまのままじゃだめなの?」
「いまのままじゃ、なわにあしがひっかかちゃうわ。だから、ひっかからないようにするひつようがあるの」
「そうなんだ...わたし、まいにちれんしゅうできるかな?」
「メアリーならきっとだいじょうぶ。わたしもおてつだいするわ」
マリーは不安がってるメアリーを励ますために、安心させるような優しい声で話してるのが聞こえてきた。マリーのメアリーに対する思いやりと優しさを感じたぼくは、メアリーのことがきっと大事なんだろうなぁって思った。
メアリーはマリーに励まされて、頑張ることを決めたみたい。メアリーがマリーに宣言した。
「わかった。がんばってみる!」
「よしっ、そうときまれば、さっそくやってみよう」
「うん」
その声が聞こえた後、メアリーはジャンプの練習を始めたみたい。メアリーのドスンっていう足音が近くの床から聞こえてくるようになった。マリーはメアリーのジャンプの仕方を近くで見てるようで、「もうちょっとひざをたかくあげて」とか「からだをまっすぐのばして」といったアドバイスをしてる声が聞こえてきた。メアリーは特訓を初めてすぐに「むずかしいよぉ」って言ってた。そんなメアリーに対して、マリーは「さっきよりよくなったよ、もういっかいやってみよう」とか、「おてほんをみせてあげるからよくみてて」とか言って、メアリーを励ましたり、お手本を見せてうまくジャンプができるようサポートしてた。マリーって、ほんとに素敵なお姉ちゃんだなぁ。すると、メアリーは「こんなかんじ?」とか「こうするの?」とか言って、マリーのアドバイスを聞いて改善しようとしてる様子が分かった。ぼくはメアリーに頑張って!と応援することしかできないけど、この気持ちが届いてたらいいなぁ。ぼくはそんなことを考えながら2人の様子や声に耳を傾けてた。少し時間が経つと、こんな会話が聞こえてきた。
「メアリー、だいぶジャンプがうまくできるようになったわね。すごいわ!」
「ありがとう、おねえちゃん」
「どういたしまして」
どうやらメアリーは上手にジャンプができるようになったみたい。メアリーのうれしそうな声が聞こえてきた。ぼくには以前のメアリーのジャンプとさっきまでのジャンプで、音の違いがあまりわからなかったけど、前よりもドスンって音が大きくなったような感じがした。前よりも高く跳べるようになったのだと思う。ぼくはメアリーが成長できたことをうれしく思った。
「おねえちゃん、とっくんしたからわたしもにじゅうとびがしたい!」
「ざんねんだけど、まだむりだわ。メアリーはまだいっかいずつしかジャンプできないでしょ?」
「うぅ、じゃあ、わたしにはできないのかな?」
「メアリーならきっとできるよ。でもね、そのためにはまいにちとっくんするの。つぎはれんぞくでなわとびができるようにれんしゅうしよう」
「...うん、わかった。きょうはもうつかれたから、またあしたがんばる」
メアリーはちょっと残念そうだったけど、マリーの言うとおりだもんね。毎日練習したらできるようになるよってぼくもメアリーに言ってあげたいなぁ。
ぼくがそんなことを考えてたら、マリーがメアリーに話しかけてた。
「あしたまたがんばろうね。もうおひるねする?」
「うん、そうする。とっくんしてたらねむたくなっちゃった」
あっ、もうお昼寝の時間なんだね。ちょっとすると、2人の足音が近づいてくる音が聞こえた。ぼくは姉妹がゆっくりくつろげるように待ちかまえる。やがて、メアリーの足がぼくの視界に現れ、ぼくに乗ってきた。さっきまでジャンプの練習をしてたからか、いつもより足裏から伝わる力が強い気がする。でも、メアリー自身は眠そうな顔をしてた。多分無意識に力んでしまってるのかな?次にマリーの足が現れ、ぼくに乗ってきた。こっちはいつもと同じような感じだった。ぼくは2人が居心地よく感じられるように、ふかふかだけどちょっと反発のある感触を与えた。
姉妹はぼくの真ん中まで歩くと、ゴロンと転がって体の力を抜いた。ぼくは2人の体を受け止めるときにちょっと揺れちゃったけど、2人とも気にしてないみたい。マリーはメアリーに「おやすみ」って言ってたけど、メアリーは転がった瞬間に寝ちゃったようだ。もう寝息が聞こえてくる。そんな様子を見たマリーはふふっと笑うと、布団をメアリーにもかけてあげてから眠りについた。
ぼくは姉妹の寝顔を見ながら、ふと思いついた。メアリーが寝てるときにぼくが夢の想像して、ジャンプの練習の夢を見させたらいいんじゃないかな?経験になるかはわからないけど、もしかしたらメアリーが成長できるかもしれないよね。ぼくはそう思ったので、やってみることにした。
メアリー:今日はお姉ちゃんに縄跳びを披露したの。その時に、お姉ちゃんが二重飛びを披露してくれたんだ。わたしも二重飛びをしたかったけど、お姉ちゃんはまだできないって言うんだ。だからわたしはお姉ちゃんがいない間に頑張って練習して、二重飛びをできるように練習するの。えっと、お姉ちゃんは一回ずつしかジャンプできないって言ってたから、連続で何回もジャンプできるようになったら、二重飛びができるようになるのかな?わかんないけどやってみるぞ!あれっ?連続でジャンプしたらあんまり高く跳べないよぉ。どうしたらもっと高くジャンプできるのかな。わかんないよぉ。でも、もうちょっとがんばってみよう!...
ぼくはこんな想像をしてみた。するとメアリーは眠ったままだけど、足を上下に動かしてる。きっと夢の中でジャンプの練習を頑張ってるんだろうね。でも、ぼくの想像でも、メアリーをうまくジャンプさせることができなかった。どうやったら、もっとうまくメアリーをジャンプさせられるのかな?ちょっと考えてみたけど、ぼくには思いつくことができずにいた。悔しいなって思ったけどどうしようもないから、ぼくは明日のマリーが解決してくれることを願うことにしたんだ。マリー、メアリーが二重飛びをできるようにサポートをお願いっ!
そんなぼくの気持ちを分かってくれたのか、マリーは寝たままニッコリ笑ってくれた。マリーは、いいよって意味で微笑んでくれたのかな?ぼくはそう思うととてもうれしくなった。