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13.姉妹、使用人との関係について考える

 部屋の中が静かになって少したったころ、部屋のドアが開く音が聞こえてきた。姉妹が戻ってくるにしては、昨日と比べてかなり早い時間だから違うと思うんだけど、誰が来たんだろう?

「よし、誰もいないな。ふぅー、誰もいないうちに間に合ってよかった」

 うーん、この声は聞き覚えがないなぁ。多分知らない人だと思うけど、誰なのかな?ほかの使用人と比べてちょっと雰囲気が違う感じがするね。いったい何をしに来たんだろう?ぼくはちょっと不安に思いながらも、どうなるのかなって思ってた。その人は何かの準備をしてるようで、ガサゴソといった音が聞こえてくる。

 用意が終わると、その人は元気よくこんなことを言ってた。

「よぉし、お部屋をきれいにしますかぁ」

 あっ、この人は掃除をしに来たんだね。確かに、昨日は特にお掃除とかしてなかったからなぁ。ってことはお掃除を担当している使用人なのかもしれないね。

 その使用人は部屋の掃除を始めたみたい。でも、お掃除の音にしては耳障りな音がする。ごおぉっていう何かが空気を吸い込んでるような音が聞こえるんだ。もしかして掃除機でもあるのかな?でも、この部屋で電気を使ってるものを、ぼくの視界からは見たことないから、家電じゃないと思うんだけどなぁ。ぼくが不思議に思っていると、その使用人がぼくのところに近づいてくる足音が聞こえた。

 少しすると、その使用人の顔がぼくの視界に映った。その人は40歳ぐらいの男の人でとても陽気そうなおじさんだった。体の前に茶色のエプロンをかけてて、そこにはちょっとしたシミみたいなものが付いてた。きっと、普段からお掃除をしてるんだろうね。その人は、ぼくの上にあるシーツや布団をどかした後、ぼくの表面に軽く手を乗せてきた。その手には袋みたいなものが握られてて、袋の口が外側に向けられてた。どんなお掃除をするんだろう?と思って見てると、その人が口で息を吸う真似をした。そしたら、その人の手にある袋の口から、急にごおぉって音が聞こえて、ぼくの表面は袋の口に吸い付かれるようにくっついた。うわぁ、なにこれ!掃除機に吸われてるみたいな感じがする。ぼくはとてもビックリした。この使用人は、こうやってお掃除をしてたんだね。もしかして、この使用人の特殊能力なのかな?特殊能力ってなんでもできるんだね。ぼくはその人の掃除を受けながら、特殊能力の万能さに驚いてた。

 その使用人はぼくの上をささっと掃除した後、シーツや布団をきれいにぼくに掛けた。ぼくはその使用人にありがとうという気持ちを伝えたかった。物になってから、ぼくは姉妹のお世話をする側の方だったけど、使用人がぼくをお掃除してくれるときは、お世話をしてもらえる側になれるってことに、お掃除をしてもらってから気づいたんだ。だからぼくは、お掃除してもらえるのがうれしく思ったんだよ。

 その使用人はベッドの掃除が終わっても、他のところの掃除をしていた。ぼくからは見えないけど、物を動かす音や掃除をしてる音が断続的に聞こえてくる。きっとあちこちお掃除してるんだろうね。部屋の中が、お掃除終わったらピカピカになってそうだなぁ。ぼくがそんなことを考えていると、部屋のドアが開く音が聞こえた。姉妹が戻ってきたのかな?

「あら、デックスじゃない」

「これはこれは、マリー様。大変申し訳ありません。すぐに片付けて部屋を出ますので、少々お待ちください」

「べつにいいわよ。おかあさまみたいにもんくをいったりしないから」

「お心遣い痛み入ります。すぐにお掃除を終わらせますね。それまでお嬢様方はこちらの椅子で紅茶でも飲みながらお待ちください」

 お掃除をしてくれてた使用人はデックスっていう名前なんだね。デックスはそう言うと、ティーセットの用意を始めたみたい。食器の音とかが聞こえてくる。でも、なんでデックスは姉妹たちが来た途端、お掃除を止めて部屋から出ようとしたんだろう?ぼくはちょっと不思議に思った。メアリーもデックスの様子に疑問を持ったみたいで、再びデックスが掃除をする音が聞こえ始めて少し経った頃、マリーにこんな質問をしてた。

「おねえちゃん、どうしてデックスはわたしとおねえちゃんにあやまったの?」

「それはね、おかあさまがそういうふうにきめてるからよ。おかあさまはそうじをしてるとちゅうのへやがおきらいなんだって」

「おかーさまってそんなことをきにするの?」

「うん、おかあさまはきにしちゃうみたい。だから、デックスはおかあさまとおなじたちばのわたしたちにあやまったんだとおもうの」

「へぇー、そうなんだ。わたしはきにしないのになぁ」

 メアリーはそう言って、紅茶を飲んだみたい。ゴックンという音が聞こえた。

「メアリーもそうおもうでしょ?わたしもそうおもったから、すこしまえにデックスにそうしなくていいよっていったの。でもね、『おははうえとおじょうさまがたでたいどをかえるのはいけませんから』ってことをいわれちゃったから、いまのままじゃどうしようもできないみたいなの」

 マリーはメアリーにそんな説明をしてた。その説明を聞きながら、ぼくは2人のママはそんなに厳しい人なのかな?って思った。会ったことがないし、話を聞いたりもしないからよくわからないけど、マリーの言い方からしてなんとなくそんな気がするね。

 少ししてデックスが掃除を終えたみたい。姉妹に向かってこんな話をしていた。

「お掃除完了いたしました。おくつろぎの時間にお邪魔してしまい、申し訳ありませんでした。次からは掃除の時間が、お嬢様方の時間と重ならないよう気を付けますので、お許しください。それでは失礼します」

 たぶん、デックスは頭をペコペコして姉妹に謝ってたんだろうね。姉妹はその様子を見て、気まずくて何も言えずにいたみたい。ドアが閉まる音が聞こえて、デックスが出て行った音が聞こえた。

「いっちゃったわね」

「うん、へんなきまりのせいでデックスとおはなしできなかった。おはなししてみたいのにな」

「そうね、でも、いまのままじゃむずかしいでしょうね。うちのしようにんのなかで、おそうじしてくれるひとは、みんなあんなかんじなの。デックスはおかあさまのきまりをまもってるから、なかなかむずかしいのかも」

「うーん、あっ、そうだ!わたしがおかーさまにいって、へんなきまりをやめてもらう!そしたら、デックスがもっとらくにおしごとできるし、おはなしもできるとおもうの」

「いいわね!メアリーがおかあさまにたのんだら、かわるかもしれないわね。あした、おかあさまがもどってきたら、わたしといっしょにおかあさまのところにいきましょう」

「うん!そうする。やくそくだよ、おねえちゃん」

「やくそくね、メアリー」

 ぼくは姉妹の使用人に対する思いやりを感じて心が温かくなった。交渉がうまくいったら、きっと使用人の人たちは喜ぶんじゃないのかな?ぼくはそんな様子を見てみたいなって思った。それに、2人が新たな変化を起こそうとしてることが、ぼくにはすごいことに思えたんだ。だからぼくは心の中で応戦することにした。マリー、メアリー、ママとの交渉がうまくいくといいね。頑張って!

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