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11.メアリー、部屋の中でゆっくり過ごす

 姉妹が部屋を出て行って少しの時間がたった。今頃朝ご飯を食べ終わったころかな?そう考えてるとぼくもなにかご飯を食べたくなってくる。ママが作ってくれるカレーライスとかチーズ入りのハンバーグとか食べたいよぉ。でも、今の状態じゃ食べれないよね。はやく元の世界に戻りたいよぉ。ぼくがホームシックになってると部屋のドアが開く音が聞こえた。

「ごはんおいしかった!でも、ねむくなってきちゃったの」

「そうでしたら、もう少しお休みになられますか?」

「うん!もうちょっとねてくる!」

 メアリーはまだ眠たいんだね。ぼくはメアリーが乗ってくるのを待ち受けた。ぼくに近づく足音がしたかと思うと、ちょっとしてメアリーの足が乗ってきた。ぼくはメアリーの体をやさしく受け止めてぐっすり眠れるようにしてあげた。あっ、朝起きるときに手に持ってた、うさぎのぬいぐるみも一緒だ。ぬいぐるみのお腹の部分をぎゅって握ってる。きっとメアリーのお気に入りのぬいぐるみなんだろうね。メアリーはぼくの上でゴロンと転がると、使用人によって毛布が掛けられた。あっ、この使用人はぼくが最初に会った人だ。今はメアリーのお世話をしてるんだね。

「では、メアリー様、おやすみなさいませ」

「おやすみ!えっと、なまえなんだっけ?」

「ミシェルです」

「そう、おやすみ、ミシェル」

「はい、おやすみなさいませ、メアリー様」

 へぇ、この使用人はミシェルっていう名前なんだね。ミシェルはメアリーに微笑んだ後、ぼくから離れて、カーテンを閉める音が聞こえた。メアリーが眠りやすいようにしてくれたみたい。そのあと、ミシェルが部屋を出て行く音が聞こえた。メアリーは少しもぞもぞ動いた後、うさぎのぬいぐるみを抱きしめながら、スピーと小さく寝息を立てて寝始めた。かわいいなぁ。ところで、マリーがいないけど、ピアノの練習に行ってるのかな?急いでたから、もしかしたらそうかもしれないね。

 ぼくはしばらく、メアリーの寝顔を眺めながら、ちょっとぼーってしてた。姉妹が起きるまでの間、いろいろ考えこんでたから体は疲れてなくても、精神的にちょっと疲れたんだ。だから、しばらくは何も考えたくないなって思ったぼくは、メアリーの温かさと重さを感じてた。そうすると、ちょっと幸せで癒される気分になったんだ。

 そんな穏やかな時間が1時間くらい続いた。そのころになると、眠気がとれたのか、メアリーが目を覚ました。もぞもぞ布団の中で動いた後、体を起こして背伸びをした。誰もいないみたいで、とくに会話がない。メアリーはきょろきょろした後、枕元の端っこの方に手を伸ばして、何かを触った。すると、チリンって音がした。あっ、ベルの音だ。もしかして枕元にローテーブルとかがあって、そこにベルがあったのかな?ぼくからは見えないけど、たぶんそうなんだと思う。ちょっとして、ベルの音を聞きつけた使用人が部屋の中に入ってくる音が聞こえた。

「お目覚めですか?メアリー様」

「うん!ちゃんとめがさめたよ!」

「なにかお飲み物でも飲まれますか?」

「じゃあ、あったかいミルクがのみたい」

「かしこまりました。すぐに用意いたしますね」

 あっ、この声使用人のミシェルの声だ。部屋の近くでメアリーが目覚めるのを待ってたのかな?ミシェルは飲み物の用意をするために、部屋を出て行ったみたい。ドアの音が聞こえて、足音が遠ざかっていくのを感じる。メアリーのほうはぼくの上で起き上がったまま、ミシェルが来るのを待ってるみたい。

 そんなに時間を置かずに再びドアの音が聞こえた。もう用意ができたのかなすごく準備がいいよね。使用人ってこんなことできるんだ。すごいよね。

 ぼくが使用人の能力について感心していると、ミシェルではない別の使用人の声が聞こえてきた。

「メアリー様、ミルクの用意ができました。お持ちしましょうか?」

「もってきて。まだベッドのうえでゴロゴロしてたいの」

「かしこまりました。お持ちしますね」

 あれ、この声、昨日のどこかで聞いたことがあるなぁ。誰だっけ?ぼくは疑問に思ったけど思い出せない。ぼくが考えこんでるとぼくの方に近づいてくる足音が聞こえた。ちょっとして、ぼくの真ん中あたりの側面から、その使用人が顔を出した。手には湯気が立ってるマグカップを持ってる。その人は20歳後半ぐらいの男の人だった。顔立ちが整っててイケメンみたい。いいなぁ、ぼくもあんなふうにかっこよくなりたいなぁ。ぼくがちょっとうらやましいなって感じるくらいにはその使用人がかっこよかった。

「あっ、シャンデリアのひをつけてくれるひとだ。いつもありがとう」

「いえいえ、私の仕事の一つですので、おかまいなく」

 あっ、この人がマリーがほめてた、特殊能力を持った人なのかな?名前はなんて言うんだろうね?ぼくが疑問に思ってたら、メアリーが聞いてた。

「おなまえなんだっけ?」

「ヘンデルと申します。なにか御用ですか?メアリー様」

「えっとね、きのうおねえちゃんからとくしゅのうりょくのおはなしをきいてたんだけど、とちゅうでねちゃったからよくわかんないの」

「なるほど、特殊能力について、詳しいお話が聞きたいとのことですね」

「そうなの!おしえてくれる?」

「もちろんです。ですが、その前にお飲み物をどうぞ。冷めてしまいますよ」

「わかった。いただきます!」

 メアリーはヘンデルからカップを受け取ると、ごくごくとのどを鳴らしながらミルクを飲んだ。ぼくはメアリーのその姿を見ながらも使用人の姿を見て、名前を覚えることにした。なんでかっていうと、何の情報が役に立つのかわからないなって、メアリーが寝てる間にふと思ったんだ。だからぼくはなるべくこの世界のことや人を覚えることにしたんだよ。この使用人の名前はヘンデルって言うんだね。よし、覚えたぞ。そんな中、メアリーはミルクを飲み終わって、ぷはぁーって息をついた。ミルクを飲み終わったメアリーは口の周りを白くしてたけど、すぐにヘンデルによって口の汚れをふき取られてきれいになった。すごい手際がいいね。ベテランの人って感じがするなぁ。

「ごちそうさま。おいしかったよ!」

「喜んでもらえて何よりです」

 そう言いながら、メアリーは空になったカップをヘンデルに渡してた。ヘンデルはメアリーとの話が長くなると思ったのか、カップをどこかに置きに行って、なぜか椅子をぼくの近くに持ってきて座った。ぼくから見たらヘンデルの胸から上がギリギリ見える形だ。どうせならぼくの上に座って話せばいいのにってぼくは思ったけど、使用人の規則とかがあるのかもしれないってことに気づいた。たしか、ぼくが会ったこの家の使用人は、みんな姉妹との適切な距離を保ってた。だからわざわざ面倒なことをしてるのかもしれないね。

「ところで、メアリー様は特殊能力の何について聞かれたいのですか?」

「えっとね、おねえちゃんがいってたけど、とくしゅのうりょくをつかえるようになるじょうけんってなんなの?」

 そうそう、ぼくも気になってたんだよね。マリーの説明は途中までだったからぼくもよくわからないんだよね。そう思ったぼくはヘンデルの説明を聞くことにした。

「うーん、難しい質問ですね。簡単に申し上げますと、人それぞれで条件は違います」

「おねえちゃんもいってたね。でも、どんなことがじょうけんになるのかわからないの」

「それでは、参考までに私の場合の条件についてのお話しをしましょう。私が特殊能力に目覚めたのは14歳です。その頃の私は、騎兵隊に入隊するのが夢で、毎日のように訓練をしておりました。その訓練の中で、私は脚力を鍛えるために、毎日スクワッドを100回行っていました。ある日、いつものようにスクワッドを100回してたら、私の体が内側から突然光りだしました。光は次第に強くなって私は驚いていました。少しの間その状態が続いていると、私の頭の中で誰かがわたしに話しかけてきました。『おめでとう、あなたは特殊能力に目覚め、火の中級魔法が使えるようになりました。その力で、大切な誰かを支えてあげてくださいね』そのような声が聞こえてから、私は特殊能力として火の中級魔法が使えるようになったのです」

 ヘンデルの話を聞いてわかったことは、不思議なことが起こった後、魔法が使えるようになったことが分かった。でも、誰かの声って誰のことなんだどうね。それにヘンデルの場合もスクワット100回を何日したら特殊能力が発現したかもわからないよね。結局詳しい説明を聞いてもよくわからなかったままだった。ただ、疑問はいっぱい残るけど、条件を満たせば、特殊能力が使えるということも確かみたいだ。メアリーもよくわからないって顔をしたあと、ヘンデルに質問をしてた。

「じゃあ、わたしはどうやったらとくしゅのうりょくがつかえるようになるの?」

「そうですね。結局なにが条件なのかは誰にもわかりませんので、いろんなことに挑戦するしかないでしょうね。マリー様がいろいろなことに挑戦されてるのも、それが理由かもしれませんね」

「そうなの?じゃあ、わたしもいろんなことにちょーせんしたらいいのかな?」

「そうですね。できることから始められるのがいいかと思います」

「わかった!いろいろためしてみるね」

 メアリーは笑顔でそう言うと何からしてみようかとブツブツ言いだした。ぼくはメアリーが特殊能力に目覚めれるように応援することにした。頑張って!ぼくはメアリーのことを陰ながら支えていくよ!

 でも、メアリーは何から手を付けたらいいのかよくわからないみたい。最初は笑顔で何かを小声で言ってたけど、次第に困惑した表情に変わった。そりゃ、そうだよね。だって何から手を付けたらいいのかわからないんだから。メアリーは困ったようにヘンデルに話しかけてた。

「ねえ、ヘンデル、わたしなにからはじめたらいいのかわかんないの」

「それでは、いつもと違う遊びでもされたらいかがですか?」

「そうだね。そうしてみる!おしえてくれてありがとう。ヘンデル!」

「メアリー様のお役に立てて何よりです」

 メアリーは笑顔になってどんな遊びをしてみようか考えることにしたみたい。ヘンデルも椅子に座ったまま嬉しそうにメアリーの様子を見ていた。メアリーは使用人の人たちから好かれてるみたいだね。ぼくはその様子を見て微笑ましく思った。

 メアリーは少しの間考えんで、何をするのか思いついたみたい。ヘンデルに声をかけていた。

「きいてきいて!ヘンデル、わたしおもいついたの」

「メアリー様、どんな遊びを思いつかれましたか?」

「えっとね、わたしとヘンデルやほかのしようにんのみんなとで、いっしょにあそぶの!」

「メアリー様、とてもいい案だとは思われますが、私達は使用人ですので、一緒に遊ぶことはできません」

「えーっ!、ダメなの?」

「使用人としての規則ですので...すみません」

 メアリーはヘンデルの答えを聞いてとてもがっかりした表情をした。そうだよね、メアリーはお願いが通らなくて残念だよね。でも、規則を破ったら、ヘンデルの方が怒られちゃうから仕方ないよね。ぼくはメアリーの残念な気持ちも、ヘンデルの規則でメアリーの期待に応えられなかった悔しさもなんとなく感じ取った。そんなメアリーの様子を見たヘンデルも申し訳なさそうにしたあと、メアリーに聞いていた。

「もしよろしければ、私達と遊ぶ提案をされた理由をお聞かせください。もしかしたら、お力になれるかもしれません」

 そう聞かれたメアリーはちょっと恥ずかしそうにしながらも理由を答えていた。

「それはね、わたしっておねえちゃんとしかあそんだことがないの。おねえちゃんのことだいすきだから、わたしはそれでもよかったけど、いつもだいたいおなじあそびをしてしまうの。だからね、ちがうひととあそんだら、ふだんはしないあそびになるんじゃないのかなっておもったの。それにおねえちゃんいないときは、わたしひとりだし、さびしいの」

「そうだったのですね。わかりました。教えていただきありがとうございます。私達ではだめですが、なにかしら他の方とも遊べるように手配しますね。ご期待ください」

「ほんと?ありがとー、ヘンデル!」

 メアリーはとてもうれしそうだね。ぼくもメアリーの願いが叶いそうでうれしいよ。でも、メアリーって、マリーと以外遊んだことないんだね。もしかしてマリーもかな?それはぼくも悲しくなるなぁ。だってぼくも友達少なかったから。だから姉妹にはそんな思いをしてほしくないなぁ。もっとお外に出て、いろんな子と遊べたらいいのになってぼくは思った。いいところのお嬢様だから自由に動けないんだと思う。お金持ちの家でもこういうのは嫌だなぁ。そう思ったぼくは姉妹に同情した。いろんな子たちと遊べるといいね。ぼくは心からそう思った。

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