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9.部屋の主、特殊能力について話す

ちょっと疲れが出てしまって、昨日は更新できませんでした。疲れないよう、しばらくは間日更新で行こうと思います。書きだめがたまってきたら、毎日更新する予定です。

 姉妹が部屋を出て行ってしばらく時間がたった。あれ?まだ戻ってこないのかな?天井越しに見える外の光は、ついさっき見えなくなってしまった。日が落ちたみたい。なのにまだ部屋に戻ってこないので、ぼくは心配になった。なにか事件に巻き込まれていたりしないよね?大丈夫だよね?そんなふうに思っていても、ぼくには2人が無事かどうかを確認するための手段もない。だから2人が無事に帰ってくることをぼくは願った。

 そこからさらに時間がたった。もう完全に夜になったみたい。部屋の中はシャンデリアの火がついていて明るいけど、ぼくはこの部屋がどんどん怖くなってきた。なぜなら、姉妹がこの部屋からいなくなると、ぼくはひとりぼっちになってしまうからだ。ぼくの上で遊んだり眠ったりする姉妹の温かさや重さを、二度感じられなくなるのかもしれない。その結果、誰にも使われずに見知らぬ部屋で過ごす日々を想像したら、とても怖かった。はやく姉妹が戻ってこないかな...

 そんな心境でいると、ドアの音が聞こえた。あ、誰かきたみたい。ぼくはそれだけで少し安堵した。だってほんとに一人でいるのが怖かったんだもん。ぼくは入ってきた誰かの話し声に耳を傾けた。

「あーつかれた。まさかおおきなトカゲにあうなんて...」

「お二人ともご無事で何よりです。お疲れでしょうから、お早めにお風呂へどうぞ」

「ありがとう、よういができたらそうするわ」

 マリーはそう言うと、部屋の中で持って行った荷物とかを片付け始めたみたい。ガタゴトという音が聞こえてきた。ところで、メアリーはどうしたのかな?ぼくが疑問に思ってると、メアリーの声が聞こえてきた。

「はぁ、もうつかれたぁ。うごきたくないよぉ」

 お出かけで疲れ切ってるみたいだね。どんなお出かけをしたのかな?ちょっと気になるけど、こっちに向かって歩いてくる足音が聞こえた。もしかして、メアリーがこっちに来てるのかな?ぼくはそう思ったので、疲れているメアリーがぼくの上でゆっくりすごせるように、ぼくは心持ちふかふかの状態にして待ち構えた。

 ほどなくして、メアリーがぼくの足元側から珍しく靴下を履いたままで乗って来た。ぼくはメアリーの足を包むようにして受け止めた。足取りからしてもうフラフラしてるのが良く分かる。いつもより服も体も汚れちゃってて、ちょっと汗のにおいがする。そんなメアリーは数歩ぼくの上で歩くとゴロンと転がってしまった。そしてそのままウトウトし始めた。もう疲れちゃって眠たいんだよね。ちょっと今のメアリーはイヤだけど、ぼくは我慢するから、そのまま寝てもいいよ。ぼくがそんなことを思ってると、マリーがメアリーに注意をしてきた。

「メアリー、よごれたままでベッドにのっちゃダメだよ」

「うぅん、もうちょっとだけこのままいたいよ」

「とくしゅのうりょくのはなしをきかなくてもいいの?」

「それはヤだ。おきるからちゃんとはなして!」

「じゃあ、すぐにおふろにいくわよ。はやくしないとおいていくからね」

「まって!おねえちゃん」

 マリーに置いて行かれそうになったメアリーは、がばっと起きると、急いでぼくの上から降りて行った。お姉ちゃんに置いて行かれたくなかったんだね。マリーもメアリーの扱いが上手だなぁ。

 2人はお風呂に行く用意が終わると、部屋から出て行った音が聞こえた。きっと、外でたくさん遊んで汚れがいっぱいついたから、マリーははやくお風呂に入りたいんだろうね。メアリーは違うだろうけど...

 2人がお風呂に入りに部屋から出て行ったあと、ぼくは使用人に整えられながら、2人がさっき話していた会話を思い出してた。大きなトカゲみたいな生き物ってなんだったんだろう?リザードマンとかかな?それともぼくの知らない生き物だったりするのかな?ちょっと気になるなぁ。それに特殊能力のついての話も早く聞いてみたいな。もしかしたら、ぼくが人間に戻る方法が、分かるかも知れないしね。あっ、でも、メアリーが話を聞く前に寝ちゃってそうな気もするなぁ。聞けると良いけど今日聞けるかはまだ分からないね。

 使用人に整えららえたぼくは、姉妹が戻って来るのを待っていた。今度はお風呂だからさっきみたいに長い時間待たなくてもいいはず。そろそろ戻って来るかな?そんなことを思ってると、ドアの音が聞こえた。おっ、2人が戻って来たみたい。マリーとメアリーの会話が聞こえたから、メアリー、頑張って起きてたんだね。

「じゃあ、あのおおきなトカゲみたいなのは、まものっていうんだね」

「そうだよ。まものはあぶないから、あってしまったときはかならずにげるのよ」

「うん、わかった!そうするね、おねえちゃん」

 へぇ、この世界にはあぶない魔物がいるんだね。そんな魔物に出会ってしまったんだったら、とても大変なことだったんじゃないのかな?2人ともよく無事に戻ってこれたよね。ケガとかしてないみたいだからほんとによかったぁ。2人が傷ついてたらぼくは悲しくなると思う。だから、ぼくは姉妹の会話を聞いてて安心した。

「魔物に遭遇されましたら、私達にお申し付けさい。私達使用人がやっつけてきますので」

「しようにんのみんなはつよいの?」

「そうですよ。私達はとても強いので、危険が迫ってきたら必ずお守り致します。ですから、そのときは必ずお呼びください」

「わかった!しようにんのみんな、ありがとう」

「お仕えする私達のお仕事ですから、お礼には及びません。ですが、感謝して頂けてとてもうれしいです」

「メアリー、そろそろねるわよ。しようにんのみなさん、わたしからもおれいをいわせてください。いつもありがとう」

「お礼には及びません。ですが、心優しいお嬢様方が楽しく暮らせますよう、精一杯お仕えさせていただきます。もう遅い時間になりましたので、私達はこれで失礼させていただきます。おやすみなさいませ」

「おやすみなさい、しようにんのみなさん」

「おやすみ、しようにんのみんな」

 うわぁ、なんかほのぼのするなぁ。ぼく、この雰囲気大好き。ずっとこの家で過ごしたいなぁ...あっ、まずい、このままじゃぼくの本来の目的を忘れてベッドとして生きることになってしまう。ぼくは人間の姿に戻って元の世界に戻るんだ!ぼく自身に言い聞かせないと本来の目的を見失ってしまいそうになった。まずは情報収集しなきゃ!

 そんなふうにあれこれ考えてる中、姉妹がぼくに近づいてくる足音が聞こえた。きっと姉妹は疲れてるだろうから、すぐ寝ちゃうんだろうなぁ。でも、特殊能力についてのお話を聞いときたいから、メアリーには頑張って起きててほしいなぁ。ぼくはメアリーが起きてられるように、いつもと違う感触をメアリーに与えることにした。

 やがて、姉妹の足がぼくの足元のところに現れた。今回は2人ともはだしだ。さっきメアリーが靴下を履いたまま上がってきてたのが珍しかったけど、外にお出かけしてたから履いてたのかもしれないね。

 最初にマリーの足がぼくに乗ってきた。マリーは歩くときに、相変わらずかかととつま先に体重をかけるから、ぼくは支えるのが大変だ。ぼくはマリーの足をやさしく支えながら、動きやすいようにちょっとだけ反発させてあげた。遅れてメアリーの足も乗ってきた。メアリーは足裏全体で体重をかけるからそこまで大変じゃない。でも、メアリーにはまだ寝てほしくないぼくは、いつもと感触を心持ち変えた。いつもはマリーと同じようにするんだけど、今回はメアリーの足を気持ち包み込むように支えて、少しだけわざと歩きにくくしてみた。そしたらメアリーは歩けるように頑張って体を動かすから、少しの間は目を覚ましててくれるんじゃないかなって思ったんだ。

 案の定、メアリーはいつもより若干歩きにくいベッドに少し苦戦して、一生懸命歩いてた。ごめんね、メアリー。ちょっとだけ起きててね。ぼくは心の中で謝りながらもメアリーが起きててくれることを願った。

 メアリーは思わぬ運動をした結果、ぼくに乗ってきたときより少し目が大きく開いてた。マリーと一緒に座って布団の中に入っても少しは起きてられそうだね。よかったぁ。ぼくは姉妹がゆったりくつろげるようにやさしく支えた。2人が横になったからか、温かい体温と姉妹の体から香るいい匂いを感じた。お花の匂いみたいなのがする。昨日とはまた別のお花の匂いだね。姉妹の温もりと匂いで、ぼくは満たされたような気分になった。

 姉妹がベッドで横になったのを確認したのか、使用人がシャンデリアの火を消して部屋から出て行った。部屋の中は外の薄暗い月明りのみでほとんど何も見えなくなった。

「おねえちゃん、あのおはなしをきかせて」

「あのおはなしって?あぁ、とくしゅのうりょくのおはなし?」

「それ!ききたい!」

「わかったわ。でも、メアリーがねたらやめるからね」

「だいじょうぶ!まだねむくないもん」

暗い部屋の中で、メアリーはマリーに向かってちょっと元気な声で答えた。メアリーも楽しみにしてたんだね。ぼくも楽しみだなぁ。

「じゃあ、はなすわね。そもそもとくしゅのうりょくってどういうものかわかる?」

「えーっと、まほうがつかえるひと?」

「そうね、そういうひとがおおいわ。でも、ほかにもあるの」

「ほかって?」

「それはね、ほかのひとにはないかんかくがあったりするひとのことね。たとえば、みらいがわかるとか」

「みらいがわかるの?すごいね!おねえちゃんできるの?」

「わたしはまだ、とくしゅのうりょくにめざめてないの。メアリーもでしょ?」

「うん、そうだけど...」

「とくしゅのうりょくは、あるじょうけんをみたすまではつかえないの。あるじょうけんっていうのは、ひとによってぜんぜんちがうんだって」

「へぇ、そうなの?わたしのじょうけんってなんだろう?」

「それはだれにもわからないわ。わたしのもわからないしね」

「だれかとくしゅのうりょくのじょうけんがわかる、とくしゅのうりょくをもったひとはいないの?」

「うーん、そういうひとはいままでいないんだけど、じょうけんをたっせいしてとくしゅのうりょくにめざめたひとがどんなのうりょくがつかえるのかがわかる、とくしゅのうりょくをもったひとならいるみたいだよ」

「うー、もにょごにょ...スピー」

メアリーはマリーの話を聞きながら、目を閉じて眠ってしまっていた。小さい寝息が聞こえてきて、ぼくの上で安心したように眠ってる。そんな様子に気づいたマリーは、メアリーに向かって「あら、ねちゃったわね。おやすみ、メアリー」と言った後、マリーも目を閉じて眠りについた。メアリーが頑張って起きてくれたおかげで、この世界の特殊能力についてちょっとわかったね。マリーの話を聞いててわかったことは次の3つだ。

 1,特殊能力の内容は魔法が使える人と、第6感とでもいうような感覚を持つ人がいること。いずれも能力的に強力そうだよね。

 2,特殊能力はロックがかかってて、人によってそのロックの内容は違うということ。ロックが解除されないと特殊能力が使えないって結構めんどくさいね。

 わかったことはこれだけだけど、もしかしたらこのことからぼくが人間に戻る方法や元の世界に戻る方法がわかるかもしれない。ぼくはちょっと期待に胸が膨らんだ。

 そうなったらこの姉妹ともお別れなのかな?それはちょっと寂しいなぁ。そう思ったぼくは、姉妹を優しく支えながら、もしかしたら会えなくなるかもしれない姉妹の寝顔を眺めていた。もとの世界に戻れるまでは姉妹をできるだけ支えてあげよう!ぼくは決意を新たに固めたのだった。

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