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8.部屋の主、おやつを食べる

 2時間くらいたったころ、マリーが目を覚ました。もぞもぞって動いたかと思うと、体を起こして小さくあくびをした。その動きで目を覚ましたのか、メアリーもめいいっぱい背伸びをしながらあくびをして、体を起こした。

「おはよう、メアリー」

「ふわぁ、おはよぉ、おねえちゃん」

 マリーはすぐに頭も起きたみたいだけど、メアリーはまだ寝ぼけたままみたい。起きたはいいけど、そのまま体を起こしてたマリーの太もものところに、頭から突っ込んでいった。ボスッって音がして、メアリーはマリーの膝枕の上でまたウトウトし始めた。

「もう、メアリーったら、まだねむたいの?」

「うん、もうちょっとだけねたいー」

「だったら、ちゃんとベッドでよこになったほうがいいわ」

「いやだ。おねえちゃんのひざがいいよぉ」

「どうして?」

「おねえちゃんがだいすきだから、このまましてたい」

「わかったわ。ほんとにメアリーはあまえんぼうね。でも、わたしもそんなメアリーがだいすきよ」

 メアリーはマリーの膝を枕にしてた。メアリー、ウトウトしながらも嬉しそうだね。顔がニッコリしてる。マリーもそんなメアリーを見て微笑んでるから、ぼくまで微笑ましく感じちゃうよ。

 そんな状況が少し続いたけど、マリーが膝の上に乗ってるメアリーの頭の重さに疲れてきたのか、メアリーの体をポスポス叩きながら、こう言った。

「メアリー、もうおきないとわたしがおやつをたべちゃうわよ」

「えっ!?そんなぁ、おきるからたべないでぇ!」

 マリーの一声でメアリーは素早く起きると、急いで立ち上がって走ってぼくから降りて行った。よっぽどおやつを楽しみにしてたんだろうね。メアリーがこれまででいちばん早く動いてたのを、ぼくはメアリーの手や足の動きから感じたよ。そんな様子を見てフフッって笑ったマリーも立ち上がって、歩いてぼくの上から降りて行った。

「おねえちゃん、おやつはどこ?」

 急いでベッドから降りたのはいいけど、おやつが見当たらなくて困惑してるような声が聞こえた。メアリーはあわてんぼうさんだね。ぼくはそんなメアリーの様子を見てちょっとおかしくて笑いたくなった。

「しようにんがもってきてくれるはずだわ。そこのテーブルでまっとこう」

「うん、わかった」

 ガタガタという音が聞こえてきたから、2人ともテーブルのところにある椅子に座ったみたい。さっきお絵かきしてたから、その続きでもするのかな?

 そんなことを思ってたら、2人は片づけを始めたみたい。もしかしておやつをそこで食べるからかな?マリーとメアリーが片付けながらどんな夢を見てたのか話してた。

「わたしね、おおきなぶたいでえんぎしてたの。たくさんのひとがわたしをみてて、たくさんはくしゅしてくれたの」

「すごいわね。どんなえんぎをしてたの?」

「おおかみにおそわれそうになるけど、いろいろあってたすかったおんなのこのえんぎをしたの」

「そうなのね。わたしもみてみたかったわ」

「おねえちゃんはどんなゆめをみたの?」

「わたしはね、とてもゆうめいなひとといっしょにきょくのえんそうをするゆめをみたわ」

「すごーい。どんなひとだったの?」

「すごくかっこいいおとこのひと。そのひとはきれいなこえでうたってたわ。またあってみたいなぁ」

「またあえるといいね、おねえちゃん」

 2人はそれぞれ将来の夢みたいな内容の夢を見てたみたい。ほんとにかなうといいね。ぼくはベッドだけどそんな二人を応援したいなって思った。

 そんなことを思ってたら、部屋のドアの音が聞こえた。使用人が来たのかな?

「お嬢様方、おやつをお持ちしました。本日はチーズケーキです」

「わぁい、ケーキだぁ!」

「メアリー、おちついて。ケーキはにげたりしないわ」

「うん、わかってるけど、はやくたべたいなぁ」

「メアリーがはやくたべたいみたいだから、すぐによういをおねがいね」

「かしこまりました。それではご用意いたします」

 チーズケーキかぁ、ぼくも食べたいなぁ。食べ物の名前を聞くと食べたくなるけど、ぼくはベッドだから食べられないもんね。残念だなぁ。

 ぼくは人間に戻れたらたくさんの食べ物を食べるぞ!と意気込んだ。戻れたらの話だけど...

 ぼくの想像上だけど、たぶん使用人が配膳してるのを2人は椅子に座って待ってるんじゃないかな?メアリーは目の前に置かれたケーキに手を伸ばしそうになって、マリーから目でダメって怒られてそうだなぁ。そんな想像をしてたら、食器とかの音が聞こえなくなった。用意が終わったのかな?

「用意ができました。どうぞお召し上がりください」

「いただきます!...うん、おいしい!」

「ありがとうございます。ところでマリー様は食べられないのですか?」

「わたしは、ちょっとその気分じゃないわ。だからメアリーにあげてちょうだい」

「そうですか?わかりました。それではメアリー様、こちらもどうぞ」

「やった!おねえちゃん、ありがとう」

「いいわよ、あじわってたべるのよ」

「うん!」

 メアリーはきっと嬉しそうに食べてるんだろうなぁ。マリーもメアリーにおやつをあげる約束をしたことを使用人に黙ってるところが優しいよね。ほんとにいいお姉ちゃんだなぁ。

 メアリーがおやつを食べている間に、マリーは使用人に何か質問をしてた。何の話だろう?ぼくは気になってちょっと小さめに聞こえる会話に耳を傾けた。

「しつもんいいかしら」

「マリー様、どうされましたか?」

「とくしゅのうりょくがつかえるしようにんってうちにはどれくらいいるのかしら」

「そうですね、この家で働いてる使用人15人の中では10人ほどでしょうか。どうされましたか?」

「わたしもとくしゅのうりょくがつかえるのかなっておもって。つかえないとはずかしいのかしら?」

「いえ、そうではありません。どちらかというと特殊能力を使える人はそんなに多くありませんので、使えなくても恥ずかしがる必要はございませんよ」

「そうなのね。わかったわ。おしえてくれてありがとう」

 へぇ、特殊能力って使える人少ないんだね。特殊能力って最初から使えたりするのかな?でも、マリーと使用人の会話から聞くとそうでもなさそう。ちょっと難しいなぁ。後で考えておこう。ぼくはそう考えていったん思考するのをやめた。

 おやつを食べ終わって落ち着いたのか、メアリーが会話に加わってきた。

「おねえちゃん、とくしゅのうりょくってなあに?」

「うんーとね、ちょっとせつめいがむずかしいから、ねるときにおしえてあげるね」

「わかった!ねるときね。ところで、おとーさまとおかーさまはいつかえってくるの?」

 メアリーは使用人に質問してた。

「明後日に帰ってくると伺っております。早く会われたいですか?」

「うん、はやくあいたい!おねえちゃんもそうおもうでしょ?」

 メアリーはマリーに嬉しそうな声で尋ねてた。

「そうわね、もどってきてほしいわ」

 マリーはなぜか少し沈んだ声で答えてた。どうしたんだろう。

「おねえちゃん、どうしたの?」

 そんな様子のマリーが引っかかったみたいで、メアリーは質問してた。ぼくもどうしたのか気になるなぁ。

「ううん、なんでもないわ。さぁ、なにしてあそぼうかしら、メアリー?」

「えーと、そとでおさんぽしたい!」

「じゃあ、おさんぽしにいきましょうか。じゅんびをおねがいね」

「かしこまりました。外は少し冷えてますので、お早めにお戻りください」

「さあ、いくわよ。メアリー」

「うん、おねえちゃん」

 2人はそう言うと部屋から出て行ったみたい。メアリーの質問にマリーは答えたくなかったみたいなのが気になるなぁ。大丈夫だといいけどなぁ。ぼくはちょっとマリーが心配になりながらも、元気にメアリーと過ごしてほしいなって思った。

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