取り調べは前途多難とは良く行ったもので
レイアちゃんと別れた後ワイは殺害された7人の内の一人である教会本山の幹部ランダ=ペクト=ヘンスの屋敷に取り調べの為に訪れていた
「アナタ方が主人を殺した人を捕まえてくれると?」
ランダの妻、未亡人であるルリア=ペクト=ヘンスがワイらに確認してくる。
「せや、アンタの旦那を殺した奴を捕らえてやるで…やから協…」
「いえ結構です」
ワイの言葉を遮る様にルリアはきっぱりと答える
「何でや!?次期教皇様直々に命じられたんやぞ!」
ルリアはまるで興味が無いように
「あの人が死のうと私には関係ありません、あの人を殺してくれたその人に感謝したいぐらいです………………ライン様は何がしたいのか……」
「…………?」
最後夫人がポツリと何かを呟いた気がした。
あの後何とか取り調べに応じて貰おうとしたが取り付く島も無かった。
「ったく…あんのBBA少し位協力してくれてもええやんけ!」
「カブト様落ち着いて下さい魔力が漏れていますよ」
ワイは不機嫌で魔力が駄々漏れだったせいかあのBBAに仕える奴等が怯えるような表情でワイを見ていた
「…すまんへん」
魔力を収めるとワイに一つの閃きが浮かんだ
ワイは近くにいた召し使いの若い少女に近づく
「なぁ一つええか?」
「は、はいっ!な、何でしょうか!!!」
少女はビクビクしながら反応する
「ここの旦那と夫人について詳しく聞きたいんやけどええか?」
「そ、それは……」
少女は口籠る
「あ゙?」
少しワイは魔力を開放し威圧する
「わ、分かりました!何でも聞いてください!!!」
「ここやと周りの目があるから少し場所変えようや」
少女が周囲を見渡すと同僚達が憐れみの視線を向けている。
少女は覚悟を決めこの国の皇帝の息子の背を追った
「は、はい……」
◆◆◆
人気の無い場所に移動した後カブトが話を切り出した
「なぁ…アンタらの旦那と夫人は仲が悪かったんやないの?」
ワイは協力を頼んだ際のBBAのあの態度は夫婦の間に何かが合ったんや無いかと思ったんや
「っ!」
少女は図星だと言わんばかりに反応する、これは当たりやな
「ま、大方夫人が不倫でもしたんやろ?」
「ッ!悪いのは旦那様です!!!」
少女はハッとして口を抑える
「…詳しく聞かせてもろてええか…」
カブトはいつもの気の抜けた様な雰囲気とは打って変わった雰囲気を纏い少女に真剣に聞く
「えっと…その…旦那様は……教会の若いシスター達……と……その……」
少女はもじもじしながら答える、たがカブトには意味が伝わってしまった…身近に十三人の妻を持つ男(父)がどの様な経緯で妻が増えたのかを聞いていたせいか歳の割にそっちの事象には詳しかった
「あーもうええ大体分かったわ……」
カブトはいきなり発覚した教会の幹部の不祥事に頭が痛くなり頭を抑える
「そ…それで…その内の…一人が……その……身籠…モゴッ!?」
「ストップや…もうええ…ホンマにやめてくれへん?」
暴走する少女の口を無理矢理抑えるこれ以上喋らせたらやばい事になるとカブトの十年間の経験から感じていた
「そりゃ…死んでもええってなるわな…」
夫人の態度の理由を知り胃が痛む
「だ、だから…奥様は悪くありません!!!奥様を悪く言わないで下さい!!!」
「………」
少女は必死に話す目の前に居るのはこの国の皇帝の息子であるにも関わらず…カブトの機嫌次第で簡単に殺されてしまうかも知れないと言うのに自身が仕える主の名誉の為に弁解をしている
「……せやか…ワイが悪かった…すまへん…」
カブトは深く少女に頭を下げる
「!?か、カブト様頭を上げでください!?私なんかに頭を…」
「いや…これはワイの気持ちの問題や気にせんでくれや…」
あの後少女と何度か言葉を交わし少女は持ち場に戻っていった。
何としてでも夫人の協力が無ければ犯人を捕まえるのは不可能でありこれから前途多難な取り調べを思うとこの原因を作ったみすみすと殺され色々やらかしていたランダを思い浮かべそしてカブトは搾り出すように天井を見上げ呟く
「男ってクソやね」