表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の最果てにて  作者: haze
第1章 捜索編
2/4

第一話「ありったけの残酷を君に」


「ぅうう………」


頭が痛い。

体も痛い。

全身の細胞という細胞から痛みを感じる。

外傷はない。

だが、全身が火傷した後かのような、ヒリヒリした感覚がある。

両目もさっきの光線を間近に直視してしまい、若干ぼやけている。

周囲は相変わらず暗い。



……変だ。

みんなの声が聴こえない…。

それどころか、輪郭がない。

ぼやけていても形は捉えれるはずだ。

だが、何も無い。

誰も居ない。



「う……あえ?」


ようやく視界が正常に機能し、夜目が利いてきた時だった。


私にしては珍しく、素っ頓狂な声を出してしまった。

いいや、これは誰だって同じ状況ならそういう反応をする。


……広かった。


さっきのこじんまりとした部屋ではなく、体育館ほどの広い洞窟のようだ。

暗く広い洞窟。

手品の様な芸当に驚かされた後、やっと脳が正常な判断と感情をわたしに教えてくれた。


「だれか……いないの…?だれか……だれか!!!」


返事はなかった。

ただただ私の声がこだましただけだ。



ここは……どこなの?

分からない。


皆は何処に行ったの?

分からない。


私は攫わたの?

分からない。


私はどうなるの?

分からない。



不安、不安、不安、不安、不安。



何もかもが不確定。

未知が多い。

闇が多い。

私の心臓の鼓動が、どんどんと早くなっていくのが分かる。

ドクドクという音が聞こえる。

それに呼応して、息が荒くなる。

鼻で呼吸をしているのか、口で呼吸をしているのかも分からない。

ただ、音だけが聞こえる。

私の音だけが、聞こえる。



………私の音だけしか………聞こえない。



今、この場で、わたしは独りだ。




「はぁ………はァ……ハァ………!」


次第に呼吸が整えられなくなる。


緊迫感が……臨場感が……これを現実だと言い張る。

これは夢ではなく現実。

その事実にまた、焦ってしまった。



「…あぁ……!……あぁぁ……ぁぁ………」


叫ぶことすらも、ままならなかった。






…………深呼吸

…………深呼吸

…………深呼吸

………次第に落ち着きを取り戻した私のとった行動は探索。

私が動かなければ、何も始まらない。

まずは、この広く暗い洞窟から出る。

広い洞窟に人がいればラッキー。

なにか明かりがあればちょっとラッキー。

何も無ければアンラッキー。


ただ闇雲に何かを探すのではなく、なるべく上に向かい続けることに決めた。

ここは恐らく地下だ。

地下ならば、上に行けば外に出られる。


…………


不安要素はある。


ここで誰かを待つべきでは?

人と会っても、その後どうする?

その人は助けてくれるの?

そもそも、その人は本当に無害?


まだまだ疑問はいっぱいあるだろう。

何かと欠陥のある案だと理解している。

私の足りない頭では、他に思いつくものが無い。


でも……


「…何もしないよりかはマシ」


不安も問題も疑問もある。

今はその全てを押しころして、ただ前に進もう。


ほんの少しだけの勇気を足に集中して…

そして、私は歩いた。





────────────────────





探索は視覚と触覚に頼った。

鼻はずっと異臭がしていて使い物にならない。

耳をすませても、洞窟が広くてあまり音が反響しない。

舌は……そもそも使い道ないでしょ……

だが、触覚は使える。

主に手だ。

壁に手を当てながら、その先をなぞって行く。

そしたら通路がみつかる。

視覚じゃ分からないことは、手の感触でカバーする。


歩いていて思った。

この洞窟はまるで迷路みたい。

アリの巣とも異なる構造。

ただ広くでかい穴もあれば、狭い通路もある。


「はぁ〜かなり歩いたぁ」


いや、実際はそこまで歩いてない。

通路を見つけては進むという行動を数回した程度だ。

度重なる不安の連続で、精神的に疲れているだけだ。


今は広い洞窟を通路で抜け、さらにその先の入り組んだ迷路を抜け、その先の通路で休憩をしている。

だが、これは休憩なんて言わない。

なぜなら、今も物凄く気分を害しているものがある。


「うぅぅ……異臭がすごい…」


そう、臭いが本当にきついのだ。

しかも、場所によってまた違う異臭がするから、余計に気になってしまう。

なんだろう、この何とも言えない臭いは。

この臭いは恐らく何かの腐敗臭だ。

なんの腐敗臭だろう?


早くこんな所抜け出したいし、もう歩き続けよう。

休憩を終え、もう一度歩みを再開した。


ベチャッ

「ッ?!」


通路を抜けた先の広い洞窟で何かを踏んでしまった。

恐る恐る下を見る。

暗くてよく見えなかったが、それが何か分かった。


「……死骸だ」


目を凝らしてよく見てみると、白くて毛深いコヨーテの様な見た目の動物だった。

特筆すべき点は、しっぽが5本あるというところだ。

そして、その死骸が6匹も転がっていた。

なんとも無惨な形だった。

まるで他の生物に食べられた様な……


わたしはそれ以上耐えきれず、口元抑えようとした瞬間



「──────────え?」



手だ。



手首が宙を舞っていた。

私の目の前で片手が宙に飛んでいた。

なぜ手が宙に舞っている?

一体、だれの手?


──────そんなの決まっていた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」



あまりの激痛だった。

あまりに痛すぎて転んだ事にすら気づかないほどに。

熱い熱い熱い熱い!

痛い痛い痛い痛い!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ!!



あまりの痛みにその場で丸まってしまった。

痛みの発生源は右手からだった。

瞬間的にに自分の利き腕である右手をみた。

私の右腕は血だらけだった。


そして何より



私の右手が、切り落とされていた。




「あ゛あ゛あ゛ぁぁ………ぐぅぅ……あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!」

「グルルルゥ…………」

「ィッ?!」


それは、私の知っている生物ではなかった。

狼だ。

いや、龍?

そのハイブリッドの様な見た目をした大型の生物だった。

私の何十倍もデカく、高く、青く、そして何より獰猛な見た目だった。

爪も鱗も全てが鋭利な刃物のようだ。

そしてこのデカさで足音さえ聞こえなかった。

そう、私は狩られたのだ。

この龍に。


「……………」

「うぅぅ…………ううぅっっっ……」


その生物は唸り声も遠吠えも鳴らさずに、ジリジリと私の方に近付いてくる。

悶える暇も与えずにゆっくりと私に近づいてくる。


私は溢れ出る血と涙が止まらずに、その場で悶え続けた。

今から死ぬという恐怖に腰が抜けて立つことすらも出来ない。


あぁ、これが私の人生の終わりなのか

せめて、せめてもう一度みんなと会いたかったな

お母さんにもお父さんにも何も言わずに死ぬのは嫌だな

死にたくない……

死にたくないよぉ……



龍がその鋭利な爪を振りおろそうとした。

その瞬間、私は目を瞑った。


ごめんねみんな、先に行くね。

私は潔く死を受け入れた……








────────────────────








あれ




なんでだろう




いつまで経っても攻撃が来ない




私は恐る恐る目を開けた。





え……?


龍が切られていた。

真っ二つに。



あれは…?



その龍の前…いや、わたしの前に誰かが……


誰かが立っていた。




「────────────────────」




あぁ、目の前の誰かが何か言っている。

でも、何を言っているのか分からない。

もう頭は使えなかった。

出血が酷いのだろう。


目を開け……るの…も……げん……か…い



私はそのまま、力尽きてしまった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ