表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の最果てにて  作者: haze
第1章 捜索編
1/4

プロローグ

夜、わたしは母親が用意した料理を平らげた後、直ぐに自室に戻り支度をした。

自室に戻り服を着替える手前、何を着ていこうか迷ってしまった。

これから足を運ぶ所を考えるなら、お洒落をする必要はないと判断し、ラフな服装に着替えた。


自室である2階から、リビングのある1階まで足早と駆けた。

「あ」と母親が何かを言いかけて、足を止める。


「れんか、またどっか行くの?」

「うん、すぐ帰ってくる」


微妙な空気になってしまった。

三日前に見つけた廃工場を、友達と散歩(肝試し)してくると行ったら心配されそうだ。

だから、母親が本当に聴きたい事には答えなかった。


ほんの少しだけ間が空く。


「お父さんが帰ってくる前に帰ってくるのよ」

「おーん」


お母さんはそのまま夕飯の支度を始めた。

私の母親は優しい…というより寛容だ。もちろん優しくはあるが、ここでは寛容という言葉の方が適切だと思う。

基本的には、私のやるの事を尊重しているが、危ない事の分別は着いている。


「じゃあ、行ってくるー」

「気をつけてね」


靴はいつもの白のスニーカーを履く。


「行ってらっしゃい」

「行ってきまーす」


そうして、玄関から外に出る。

ちゃんと閉め忘れ無いように鍵を掛けて、ポストにいれる。


そこからは現地集合と聴いたので、寄り道をせずに、廃工場に歩を進めていく。

別に方向音痴ではないけど、グー〇ルマップを使って現地に行こうとする。


「………あ」


っと思ったら、スマホを持っていくのを忘れちゃった。

まぁ、最近はスマホに頼りっぱなしの生活だったから、今日だけ脱スマホという事で諦める。

歩いている途中に、お母さんの「行ってらっしゃい」という一言が一瞬だけ頭を通過して行った。

ありふれた言葉なはずなのに、一瞬だけ噛み締めてしまう。

スマホがないだけで、かなり歩いている間に色々なことを考えちゃうな〜。

私の住んでいる所は、俗にいう田舎だ。

周りが田んぼと虫だらけの緑が美味しい場所だ。

私はそんな田舎が大好き――――なわけがない。

近くにコンビニやスーパーがないのはもちろん、近所のおじいちゃんおばあちゃんは話が合わない事もあり、正直言うとかなり気まずい。

でも、そんなのは別に些事であり、一番の要因は虫。

わたしは虫が昔から大の苦手だ。

ビジュアルといい羽音といい、わたしは一生好きにはなれないだろう。

そうこうしてるうちに、現地である廃工場に着いた。

どうやら私が一番乗りらしい。


「よっ!」

「ッ!」


肩をぽんと叩かれ、一瞬ビクッとなる。

どうやら一番は私ではなかったらしい。


「ビックリしたんだけど…」

「わり」


悪びれもなく、ニンマリとした表情で答える。

私を脅かした男の名前は(けん)

高校からの友人。

容姿は短髪ヘアに整った顔、ある一定の層からはモテそう。

彼を一言で括ってしまえば、少年心(こどもごころ)を忘れられない男子高校生、だと思う。

遊ぶ時は誰よりも楽しそうに遊び、気の許せる相手ならば些細なイタズラを仕掛けてくる。

プラモデル、漫画、アニメが大好きであり、漫画やアニメの話で意気投合して、そのまま成り行きで遊ぶ中になった。

今日の肝試しだって、彼が提案した事だ。

因みに今は11月9日であり、冬の寒いシーズンだ。

でも、彼にとっては関係ない。


「………」


……気づかなかった。

ケンの後ろに憂夜(ゆうや)がいた。

彼も高校からの知り合いで、同級生である。

髪は男の子の中だと、比較的に長い方だ。

前髪が目にかかっており、見えずらそう。

顔立ちは整ってはいるが、肌が病的に白い。

実は、私はあまりユウヤとは関わりがない。

私は人間観察は上手い方だと思うが、彼の特徴を一言でいう事は出来ない。

容姿はわりと陰キャ寄りではあるが、コミュ障かと思えば実はそうでは無い。

話を振られたら普通に会話にも入れる。

ただ、彼から話しかける事はない。

常に無表情だが、何も感情が無い訳ではなく、偶にクスッと笑うことがある。

あえて言うなら、全てにおいて起伏が浅い?とでも言うのかな?


「れんか、後の女子メン2人は?」

「あー、多分もうすぐ来ると思う」

「みんなぁー!」


私が来た道とは逆の方向から声がする。

このよく響くファルセット。

聞き覚えのある声音。

この声が直ぐに(けい)である事が分かった。


「れんか達、なんか早いね!」

「私達で最後なのね」

「ナナちゃんと私もかなり早めに家を出たはずなのにね〜」


ケイともう一人、(なな)が隣を歩いていた。


ケイは私と同じ中学校で、中学1年生の入学式の時に私に積極的に話してくれた。

容姿は黒髪にロングで端正な顔立ちをしている。

正直に言おう、この5人の中で一番顔の偏差値が高い。

立ち振る舞いもまるで、貴族のお嬢様みたいだ。

まぁ、私は貴族のお嬢様が何かは分からないのだけれど。

ケイは絵に書いたような美少女で、クラスの人気度も高く。

男子達の邪なランキング、付き合いたい人ランキング上位に位置している。

でも、私は知っている。

上田 繋(うえだけい)は、中学生時代かなりの素行不良が目立っていた生徒でもあった。

なんやかんやあって、今の性格に成ったのは私としてもかなり嬉しい。


ナナも私と同じ中学校で、中学2年生の夏休みに知り合った。

容姿は紫髪にウルフカットで顔立ちは程々に整っている。

ピアスも空けているし、服装が乱れている。

はっきり言おう、彼女はスケバンだ。

もちろん、これは学内でも同じだ。

校則違反なんて日常茶飯事で、本人曰く「反省文を書いた回数なんて覚えてない。それぐらい校則違反を犯してる」と豪語していた。

でも、私は知っている。

ナナは中学生の頃、黒髪ショートで凄く真面目に勉強していたということを。

……… 一体何があってこうなったのか、今の私には分からなかった。



「よし、みんな揃ったな。じゃあ行くかぁ!レッツ廃工場!」

「……ちょっと待って」


ナナが待ったをかけた。


「流石に今は使っている人が居ない工場だからって、何も考えずに入るのは違うんじゃない…?」

「中に変質者がいるかもってこと?」

「確かにそれもあるけれども、仮にも廃工場なのだから、かなり入り組んでると思うのよね」

「つまりナナちゃんの言いたいことは、単独行動とかはパニックになる可能性が高いって事だよね!」

「そういうこと。つまり散り散りになるのは辞めておいた方が良いわ。隊列を組みましょ?」


確かに、名案だと思った。

だが、私は知っている。

ナナは極度のビビりだから、こういうのは固まって動いた方が怖くないと考えたのだろう。

その証拠に、ナナの顔が少しこわばっている。


「よし、じゃあそうしようか!」


ケイのファインプレーによって、ナナが心なしか落ち着いた様に胸を撫で下ろした。

多分相当嫌だったんだろうね。


「隊列を組むんだったら誰が前になるの?」

「ゆうやとかどう?」

「……普通に嫌だけど」


ケンの提案にほとほと嫌そうな顔をしている。


「ここは普通にジャンケンとかでいいんじゃない?」

「まぁ一番無難ではあるわね」

「おーけー、それで行こう」


そしてジャンケンの結果は先頭順にこうなった。



ナナ➡︎ユウヤ➡︎私➡︎ケイ➡︎ケン



「……なんでぇ…?」


心の底から嫌そうな顔をしているナナ。

でも、この中で懐中電灯を持ってきているのは彼女であった。

これも運命の神様が、ナナに先頭に行って欲しくて仕組んだのだろう。


うん、それにしても酷い。

何が酷いかって、ホラー耐性のない人間から前に行っているということ。

わたしも実は怖い系が苦手だが、中央に居るのが今は何より嬉しい。


「よし!じゃあ改めて。レッツ廃工場!」


そして私達は廃工場に入った。

中はかなりの広さをしていた。

2階もちゃんとあり、中の暗さも出てる満月が、ほんの少しの灯りを許している。そこに、先頭の懐中電灯が辺りを照らした。

入り組んではいるが、危ない物が落ちたり、変質者が居たりなんてのはしなかった。

周りの鉄製のものが錆びている。

階段、足場、扉など、かなり老朽化している。

不便な点があるとするならば、隊列の先頭が物音聞こえる度に、頻繁に立ち止まる事だった。



かなり歩いたので、少しだけ休憩を取った。


「………ねぇ……もう、探索し尽くしたと思うんだけど……」

「ええ、かなりいい頃なんじゃない?」

「え〜?まぁ、もう調べ尽くしたか。」


ナナはなるべく早く、こんな場所去りたいらしい。


「確かになんもなさそうだもんね〜。あ、扉だ」


ケイが何かを発見したらしい。

ケイが見つけた場所を私達は凝視した。


それは、扉には見えなかったが、確かにドアノブがついていた。

壁と扉の色が完全に同化している。

なのに、ドアノブはついている。

隠したいのか、隠したくないのかよく分からない構造だ。


「ほんとだ。よく気づいたね」

「夜目が利くからね〜私は」


ケンがドアノブを捻り開けようとするも、何か引っかかっていて、まともに開かないらしい。

ケンがもう一度力を込めて開けようとして、今度は勢いよく開いた。

扉の先は階段だった。

下に続く階段だ。


「…それで?誰が先に行く?」


ナナがみんなに聴く。

当然、みんなの目線はナナに向いている。


「……はぁ…分かりました…」


ため息が廃工場に響く。


さっきの隊列で入る事にした。

中は狭く、壁も階段もやはり汚い。

そして階段を降りた先には、何も無かった。


「まぁ、そりゃ無いよなぁ〜」

「何を期待してたの?」

「金銀財宝」

「逆にあったら困るわよ…」

「……ん?」


ユウヤが何かに気付いた。


「どうした?ゆうや」

「……いや、ただ地面に何か文字の様な」


地面を見ると、黒いサークルがあり、その中に文字が描かれている?床が汚れていて何も分からない。

暗くてよく見えないが、地面に描かれている物はアラビア語の様な感じだ。






その瞬間




「「「「「ッッッッ?!」」」」」


聞いた事ない異音と共に、黒いサークルの中から赤黒い光が、ここに居る皆を包んだ。


皆何かを言いかけるが、既に手遅れでだった。

そこに居たものは全て光に呑み込まれてしまった。




その日、私達は世界からいなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ