お疲れ様 1
サターン君の職場に着くころにはもうすっかり暗くなっていた。近くの駐車場に車を停めて車の外で彼が出てくるのを待つ。しばらくすると薄がかった茶髪の顔色が悪い青年が出てくる。
「サターン君。お疲れ様」
「…あぁ、ジュピターさん。お疲れ様です…」
生気の宿っていない声で僕に挨拶する。車のドアを開けてあげると、勢いよく車のソファに座り込んだ。
「仕事は嫌じゃない?」
「大丈夫です…あの子たち、とてもいい子で…」
「良かった。これから会う子たちのことも少しは気に入ってくれるといいんだけど」
運転席に戻って僕もソファに腰掛ける。僕の言葉にサターン君は少し不服そうな顔を浮かべる。
「…これから会う子って、例のシェアハウスの人達ですよね…ボク、車で寝ていいですか…?」
「そう言うと思って、サターン君は僕と同じ部屋にしておいたよ。独りぼっちより安心できると思うけど、駄目だった?」
「いや…助かります。ありがとう、ジュピターさん」
ようやく少し笑顔を見せてくれたサターン君。彼は重度の人見知りで、そして極度の人間不信だ。人間不信とは言っても学生などは大丈夫なようで、今は高校の教員をしている。人間不信の理由はまぁ色々あるんだけど、それは今はいいかな。
「ムーンさんがご飯作ってくれたりするけど、それは食べれそうかな?」
「…多分、大丈夫です」
「無理しないようにね。食べれなかったら皆が寝た後に僕が作るよ」
「え、じゃあそっちがいい…」
少し残念そうな声を出すサターン君をあしらいながら車を発進させる。背負っていたリュックをギュッと握り締めて不貞腐れている。
「せめて初日くらいは仲良くしないと駄目だよ。話しかけにくかったら僕も一緒にお話ししてあげるから」
「…ジュピターさん以外とお話したくないです」
「そう言わないで。マーキュリー君やヴィーナスさんも居るんだから」
「…プルートゥくんとウラヌスくんも居るんですよね…?」
「…マ、マーズ君やムーンさんも居るから」
「サンさんとネプチューンさんも居るんでしょ…?」
やっぱり苦手意識の方が大きいんだな。無理させる気はないけど、せめて家では休めるようにしてあげたいもんなぁ…
「…何か嫌なことがあれば、また手伝ってあげるよ。何があっても守ってあげる」
「ジュピターさんも、あんまり他人と長期的に仲良くするの苦手じゃないですか。何かあればボクこそ守りますよ」
「ありがとう」