いらっしゃい 3
両手のレジ袋を机に置いてこちらに駆け寄ってくるムーン。ニッコニコの笑顔でオレの前に立つ。…ちょっと怖い。
「お久しぶりです、サンさん!前回の握手会ぶりですか、本当にまた会えてうれしいです!」
「…おー。今日から同じ家の住人としてよろしくな」
「はい!」
ムーンは俳優としてのオレのファンで、握手会には毎回来るしトークショーの客席に居るのもよく見える。それくらいのガチファン。
「今日はキッシュですよ。お腹いっぱい食べてくださいね!」
「サンキュー。じゃあオレ肉たっぷりがいいなー」
「野菜も食べてくださいね」
ジトーッとした目でこちらを見るジュピター。マーズはムーンの料理が食べれることに喜んで、それをマーキュリーがウザがってる。
「もちろん、野菜も食うぜ。でもそれより多く肉が食いたいってだけ」
「…栄養バランス、気にして食べてくださいね」
ジュピターは結構物事を気にするタイプだ。前にオレが栄養失調で倒れたことがあるからかもしれないけど。
「そーいうのはムーン主婦に任せれば安心だろ?」
「まっかせてください!」
「はぁ…」
眉間を抑えて深いため息を吐くジュピター。一息ついてからムーンの方に向き直る。
「基本的にキッチンの物は何でも使ってもらって構わないからね。場所が分からない物があったらいつでも呼んで」
「はーい!」
「僕はサターン君をお迎えに行ってくるよ。遅くなるだろうから先に食べててね。何かあったら電話して」
「分かりました。いってらっしゃい」
コクリと頷くマーキュリーに微笑むと、この場に居る全員に向かって笑顔で手を振って出ていくジュピター。ムーンはキッチンに向かい、マーキュリーは把握しているのか自室の方に、マーズはプルートゥの部屋の方に向かっていった。部屋に戻っても何もすることのないオレはもう少しロビーでゆっくりしとこう。