いらっしゃい 2
プルートゥとヴィーナス、ウラヌスは自分の部屋に入った。オレとジュピターはまだ来てない他の五人をロビーで待っていた。
「…サン君は部屋に戻らないんですか?」
「戻っても何にもやることねぇしなぁ。覗き見されるより堂々とここに居た方が気が楽ってモンだろ?」
「そういうものかなぁ…」
ジュピターが溜め息を漏らすと同時に扉が大きく開く。息切れした青髪で眼鏡をかけた青年と、その手前に赤髪の少年が同時に叫ぶ。
「お世話になります!!」
「わっ…いらっしゃい、マーキュリー君にマーズ君」
青髪で眼鏡の青年はマーキュリー。お堅いガリ勉に見えるけど、実はウラヌスとかプルートゥ辺りの奇妙奇天烈変人コンビと仲が良い。赤髪の少年はマーズ。荒々しく喧嘩っ早いが、プルートゥと仲が良く歯止め役になることが多い。この二人は互いに仲が悪く、意外だがマーキュリーの方から喧嘩を吹っかけている。今回は恐らくたまたま道で出会ってそのまま競争になってしまったんだろう。
「マーキュリー会社員にマーズ機動隊隊員、お久しぶり」
「お久しぶりです、サンさん」
「久しぶり、サン。お前が早めに来てるなんて珍しーな」
二人の荷物はそこまで多くない。マーキュリーもマーズも私服には気を使わないタイプだから仕事着以外の荷物はそこまでないんだろう。
「そういえば、走ってる時にネプチューンさんを見ましたよ。まだ仕事中でしたので遅くなるかと」
「サターンも仕事中だろうし、その二人は夜まで待った方がよさそうだな」
「そうなんだ。ありがとう、二人とも」
二人に丁寧にお礼を言うジュピター。犬猿の仲ながらも、この二人の相性はかなりいい方だと思う。というかそもそもマーキュリーが突っかかりさえしなければマーズも喧嘩を売ることはないし。この二人さえ仲良くしてくれれば平和なんだけど…
「そういや、ムーンは来てねぇのか?」
「ムーンさんは今お買い物に行ってるよ。皆の晩御飯を作るためにね。多分そろそろ帰って…」
足音が聞こえる。ステップを踏むような軽やかな足音だ。マーキュリーやマーズが入って来た時から大きく開かれたままの扉からその足音の持ち主が入ってくる。金髪でウルフカット、赤いピンヒールを履いた…先ほど話題に出たばかりのムーンがその場に立っていた。
「ただいま帰りましたー!」
「お帰りなさい、ムーンさん」
ジュピターの表面上の笑顔に答えるように、ムーンは笑顔で両手のレジ袋を持ち上げてみせる。彼女はかなり気分屋で、その分怒らせたら怖い女性でもあるのだが…今日は機嫌がいいようだ。