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カタクリの恋  作者: 秋元智也
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第二話

授業を終えるチャイムが鳴るとやっと昼になる。


「一限目最悪だった〜〜〜」

「お前数学で当てられてたもんな〜」


谷口が腹を抱えながら笑うとそこへ岩井が入ってきた。


「どうしたの?」

「あぁ、聞いてくれよ〜、今日な、先生に当てられて黒板の前まで行ったのにた

 もっちゃんの奴『分かりません』って言ってたんだぜ〜後で名指しで復習する

 ようにって言われてやんの〜」

「仕方ないだろ!分からないんだからぁ〜洋介だって解らなかっただろ!」

「俺は当てられてねーもん」


騒がしく話しながら弁当を広げる。


「たっちゃん、僕でよければ教えようか?」

「別にいいよ〜勉強できなくても平気だし」


岩井は学年上位に入るほど頭がいい。

そんな秀才でイケメンの岩井がどうしてなんの取り柄もない寿と一緒にいるのか

と女子達は不思議でならなかった。


岩井といると女子からの視線がいつも集まってしまう。

なので最近では教室では食べない事が多い。

今日も、中庭に降りるとそこで食べている。


「もうすぐサマーキャンプだな〜。班分けどうする?」

「そういえば、そんな事言ってたっけ?」


内藤の言葉に3人が頷く。


「僕も一緒にいいかな?」

「あぁ、いいぜ。でも、いいのかよ?俺らと一緒で…クラスの女子が騒ぐだろ?」

「…関係ない」


クラス毎ではない為、好きな班で申請出来る。

4人〜6人での申請なので今の4人でもなんとかなりそうだった。


「なら俺らはこの4人でいいんじゃね?」

「できれば女子入れたくねーか?食事とか困らねーか?俺らだけだと…」

「なるほど…」


谷口の意見にも一理あった。

少し悩むと二人組みの女子を探すという案で落ち着いたのだった。


昼の終わりを告げる予鈴が鳴ると、立ち上がり自分の教室へと戻って行く。


「今日掃除当番だから遅くなるかも…」

「あぁ、いいよ。俺いつものんびりしてるし」


千尋が遅くなるかも趣旨を伝えると当たり前のように寿は教室にいると答えた。


「お前らって付き合ってるのか?」

「はぁ?な訳ねーじゃん?俺、女の子がいいし」


すぐに答えた寿に千尋は苦笑いを浮かべると立ち去っていく。


「変な事言うなよな〜気持ち悪ぃ〜な!」

「そうかな〜、なんかお前ら距離がおかしくねーか?」

「幼馴染だからだろ?」

「そう言うもんかな〜」


首を傾げながら言う谷口に寿は当たり前だろと答えている。

それを眺める内藤は何も言わず、ただ黙って千尋を見送っていた。


午後の授業も無事終わると、担任からサマーキャンプについてのグループ分けの用紙

と簡単な説明があった。


「いいか〜ちゃんと人数が溢れないようにしろよ!もしあぶれた奴がいたら、グルー

 プは先生が勝手に決めるからな!」

『えーーーー!!』


教室中から、悲鳴が上がる。


「なら、しっかりグループは決めろよ!以上。今日の掃除当番は新井と片瀬。しっかり

 忘れるなよ!」


担任が出て行くと寿は掃除当番だったのを思い出した。


「マジかよ…」

「ご愁傷様〜、じゃ〜俺ら帰るな!」

「薄情者〜〜〜!!」

「はははっ!」


新井と一緒に教室の掃除をしてゴミを纏める。

女子の新井にゴミ捨てをさせる訳にもいかず、寿はゴミ袋を縛ると持っていこうとする。


「あ、あのっ…」

「あぁ、新井さんいいよ。俺が捨ててくるから。もう帰ってもいいぜ」

「ありがと」

「おう!」


寿は両手にゴミの袋を抱えるとそのまま裏の焼却まで歩き出した。

校舎裏まで来ると、もうすぐ目の前だった。

ゴミ捨てを終えて帰ろうとすると何やら話声が聞こえてきた。

女子の啜り泣く声に耳を傾けると、聞き覚えのある声がしてきた。


「私、岩井くんが好きなの!諦めきれないよ…お願い教えてよ!どうして私じゃダメな

 の?なんでもするよ?」

「…ごめん」

「訳を教えてよっ…彼女が嫌ならセフレでもいいよ」


会話にギョッとなった。

盗み聞きしているのも悪いと思ったが、まさかセフレになりたいなんて出てくるとは思

いもよらなかった。

帰るに帰れず、寿は木に隠れるとそのまま聞き耳を立ててしまう。


「ごめん…僕は…」

「いいじゃない!そうしよう?私、岩井くんなら何されてもいいよ?」

「好きな子が…いる」

「へっ…」

「だから…誰とも付き合えない。ずっと片思いだけど…その子の事しか考えられないんだ」

「それって…そっか…そうだよね。うん、ありがとう教えてくれて」


涙を拭いながら女子は立ち去って行く。

寿の横を通り過ぎて行く時に一瞬女子と目があったが、睨みつけるように目を細めると走

り去っていった。


千尋がゆっくり歩き出すと、寿はすぐに校舎の裏へと隠れた。

まさか千尋に好きな子がいたなんて初耳だった。

しかもずっと片思いなんて、いつも一緒にいるのに聞いたこともなかったのだった。


何事もなかったように教室へと帰ると、寿の席には千尋が座って待っていたのだった。


「おう、俺も掃除当番だったわ〜さっきゴミ捨てに行ってきたんだよ。待たせて悪かっ

 たなっ!」

「うんん、いいよ。今来た所だし…帰ろっか」

「お、おう!」


さっき、盗み聞きしてしまったせいか気になるのに聞けなかった。

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