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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕の人魚姫

作者: ネクタイ

お題小説勝負

お題『水族館』

ひらひらゆれる。君が揺れる。

その姿が美しくて僕はしばらく眺めていた。

魚が群がる。きれいな赤が水に溶ける。

その姿が愛おしくて僕はカメラのシャッターを切った。



人魚姫のようだ。

「はじめまして。」

そういう彼女に僕は一目で恋に落ちた。深海を支配するお姫様。その透き通った肌に薄く浮かぶ血管の配色がより一層彼女を人魚姫たらしめた。

彼女と何回もデートを重ねた。彼女は水族館が大好きだった。僕の勤務している水族館に連れて行ったこともある。裏方ツアーに連れて行ったときには、手を叩いて喜んでいた。

「僕と一緒になってくれませんか。」

何回かのデートの後、震える両手を隠しながら彼女に告白した。

「私で良ければ喜んで。」

優しく微笑む姿は陸地で王子様を見つけたお姫様のよう。

彼女をその場で抱きしめる。優しく包み込んでくれる優しさに幸福を感じていると、彼女のカバンが視界に入った。


鞘のついた果物ナイフ。


僕はそれを見ないふりは出来なかった。そして確信した。

彼女に僕は殺される。

それはとても素敵な事だと思ったし、幸せだと思った。

人魚姫の王子様は僕だったのだ。

腕の中にいる彼女に口付けをすると、うふふと微笑んだ。つられて僕も微笑む。

幸せだ。そう信じて疑わなかったのに。



彼女はある男の家に向かった。

そこには、彼女の彼氏とその浮気相手の女性。

僕は知っていた。僕が王子様にならなければいけないと。

そのためには前の王子様は要らないと。

彼女と一緒に二人を刺した。遺体は車で運んで水族館近くの海に投げ捨てた。

静まり返った海を見ながら彼女が言う。

「相模湾の大水槽が見たいわ。」

それは僕の勤務先の目玉水槽だった。

僕はお姫様の我侭を答えてあげることにした。


「上から見れるなんて素敵ね。」

職員専用のスペースに彼女を連れ込む。

彼女のカバンから果物ナイフをこっそり抜き取る。気づかれていないようだ。

「この水槽に入れてあげる。」

「えっ?」

後ろから油断した彼女を水槽に突き落とす。そのまま僕も一緒に飛び込んだ。

水槽の中で暴れる彼女。魚達はいつもと変わらず泳いでいた。

溺れる彼女を抱き寄せて、僕はナイフの鞘を外すと、そっと突き立てた。

彼女の口から大量の泡があふれる。ナイフを突き刺す。

やがて彼女は水槽の中で力尽きた。


水槽から上がり、急いで展示コーナーへと走る。

そこには、赤いドレスをまとって泳ぐ彼女がいた。


ひらひらゆれる。君がゆれる。

その姿が美しくて僕はしばらく眺めていた。

魚が群がる。きれいな赤が水に溶ける。

その姿が愛おしくて僕はカメラのシャッターを切った。


彼女は僕の手で人魚姫になった。

泡には決して返さない。僕の、僕だけのお姫様。

だけどおかしいな。

「げほ、げほっ。」

急にむせこみ膝から崩れ落ちる。

人魚の血には毒がある。なんて御伽噺を思い出した。

顔を上げて水槽を見る。


水族館の大水槽。

その真ん中で、人魚姫はこちらを見ながら笑っていた。

勝負は負けました笑

対戦相手のも素敵なので良かったら読んでください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公もヒロインも、どこか歪んだ性格だったんですね。大人向けの童話のようだなと思いました。
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