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伝説の五大魔導師の栄光と驕り、当事者達の数百年に及ぶ記録  作者: 綾玉キラ
第一章 不肖の弟子との出会い
3/3

ラオラッグ駐屯地にて嗤う魔導師

クム村の視察を終えたラヴィニア一行は

無事にラオラッグ平原にある二人が所属する

軍団の駐屯地に着く


そこで初めてラヴィニアは少年を弟子に取ると

ルーファスに伝えるが


全世界に注視されている強大な魔導師の五大魔導師が

弟子を取るなど世界を揺るがす一大事

各国の軍事バランスを崩しかねないとルーファスは反対する

クム村を離れてから3時間


戦火に巻き込まれ重苦しい空気が漂っていた村々から

ようやくラオラッグ駐屯地に帰還した


ラヴィニアとルーファス達は助け出した

膨大な魔力を持った少年とその妹の今後を話し始めた


「ふぅ、やっと着いたわね」

ぐっすり寝ている少年達を指差し

「姉上、この子達をどうするんだ?」


「私達、五大魔導師の正式な弟子にするのよ」

さも当然のように言うラヴィニアにルーファスは呆れ果てる


「はぁ…姉上、分かっていると思うが弟子にすると言っても難しいぞ」


困り果てたルーファスは額に手を当ててラヴィニアを諭す


「我が皇国は我々を決戦兵器として使わないからこそ各国は皇国を表面上は尊敬しているのだぞ?」



五大魔導師は全世界が注目の存在、

全員がアウラ皇国に所属しながら

戦争には殆ど協力しないからこそ各国から尊敬を集め

アウラ皇国も五大魔導師の存在を誇らず

軍事に一切関わらせない事で名声を高めていた



「今回だって我らが本気を出せば戦争なぞ一瞬で終わる、

それをしないのは皇国と我ら五大魔導師を危険視する

勢力が勢い付くから、助けられる命を見殺しにしてるんだろ!」



今回は周辺各国とアウラ皇国の危機と言う事で

この戦争への五大魔導師の動員を各国は理解を示していたが


皇国上層部五大魔導師に戦争で活躍されると

戦後に世界各国からアウラ皇国こそ脅威と思われるのを怖れていた

自分達を最終兵器と心得ている五大魔導師もそうなる事を予測しており

自ら前線に出て戦争に参加するのは消極的であった



「前に私達が士官学校の教師になった時には各国から大反対されただろう?」


「あの時はヒドかったわねぇ、特にリーリシュ国の大使の唾を飛ばしながらの怒号にはウンザリしたわ」


抗議を受けた暫くの間はラヴィニアはリーリシュ国の大使の

醜い顔とでっぷり太った体をを思い出しては悪態をついていた


「そんな我らが弟子取ると言い出したら外交問題になって

あのお優しい皇帝陛下が困り果てるぞ…」


そんな最重要人物である五大魔導師が弟子を取るとなると

アウラ皇国が戦力を拡大する為に五大魔導師に弟子を育てさせ

他国の侵略を企んでいるなどと有らぬ疑いを掛けられてしまうだろう


今のアウラ皇帝は歴代の皇帝と同じく

世界一の軍事大国でありながら覇権を唱えず

各国とは話し合いによる解決案を探る穏健外交路線を取っている


ルーファスはそんな穏やかな皇帝がラヴィニアによって

頭を悩ませられる所を幾度となく見て心を痛めている


そんなルーファスの皇帝を憐れむ想いを余所に

ラヴィニアは優しく微笑んだ


「そんな事は分かってるわよ、

 でもこの難問を解決する方法が一つあるの」


ラヴィニアは良い事を思いついた時に優しく微笑む癖があり

親しい仲の者達はラヴィニアが良くない事を思いついたと

察し逃げるように去っていく


「その方法は?」

ルーファスは姉がすることを察している、察しているが

姉が聞いてほしそうな顔をしているので嫌々ながらに問う


「そうねぇ、まず皇帝陛下にお許しを貰う事から始めないとね」


心の中でやっぱりと思いこれから被害者となる皇帝の為に

「皇帝陛下に公式に謁見するのに何日掛かるんだろうね」と

ルーファスは精一杯の嫌味を言う


「やっぱり貴方は甘ちゃんね、ここは何処だと思ってるの?」

 

「ルグラン将軍率いる軍団の駐屯地?」

ラヴィニアに馬鹿にされてる事に慣れている

ルーファスは特に思うこと無く即答する


「そう!皇帝陛下の覚えめでたい、あのルグラン将軍がいる駐屯地」


ルグラン将軍は28歳で将軍になってから25年間

敵国との戦争で勝利を重ね、惜敗はしても大敗する事は皆無

味方の将兵からは無謀な戦をせず無駄死にはさせない

常勝の将軍として支持され

その功績から皇帝に厚く信頼される皇国切っての名将


「私が知ってる話だとルグラン将軍は皇帝陛下に直接繋がる通信宝珠を皇帝陛下から皇都を出発する際に手渡されている筈よ」


「その通信宝珠をルグラン将軍に借りて連絡すれば一発解決!」

自信満々に人差し指を天に向かって上げる



ルグラン将軍専用の幕舎は中央にあり華美ではないが威厳を示す

装飾がなされ隣には清らかな小さい泉がある


「ヘンねぇ?」

ラヴィニアは美麗な小顔を傾げ不思議そうに呟く 


ラヴィニアがこういう事を言うと

「何がヘンなんだ?姉上」


「いや、いつも衛兵が二人いたはずなのに今日は一人なのよ」

 

将軍の幕舎には本来は衛兵は二人立っていなければならないが

今は衛兵が一人しか姿が見えなかった


衛兵に軽い口調で話しかけるラヴィニア

「ねぇ、そこの君、ルグラン将軍は居る?」


「グーー」

声を掛けた衛兵は槍にもたれ掛かり器用に眠りこけていた


「ちょっと君たるんでるわよ!」

ラヴィニアは衛兵の肩を揺らし起こす


「ふぇ…かあちゃん…もう少しだけ寝かせ……」


「こんなのに警護任せて大丈夫かしら、アウラの兵も質が落ちたものだわ」


「はぁー」と一つため息をつき

「仕事中なんだから、いい加減起きなさい!」

呆れ果てながら怠け者の衛兵の頬を軽く叩く


「イタい…かあちゃん痛いよ」


「誰が、かあちゃんですって?私はまだ子供は居ないわよ!」


「うーん?」

「……うぇぇぇ!大賢者様!」


怠け者の衛兵にとって五大魔導師である二人は雲の上の存在

特にラヴィニアは美人で有名で将兵中で根強い人気がある


そんなラヴィニアの声を聴く事など滅多に無い


「は、はい、ルグラン閣下は今は幕舎の中でお休みになられています」


「あぁそう、じゃあ入らせて貰うわ」

「ええっ!待って下さいラヴィニア様!私が閣下から怒られます!」


「静かに通さないと貴方が居眠りしてた事をバラすわよ」


「わっ、分かりました…」

「ですが、私がラヴィニア様を通した事を怒られないように

 閣下に口添えを!故郷には年老いた両親と幼い妹達が…」


アウラ皇国の衛兵には固定給の他に少しだが特別給与が出る

この件で衛兵を解任されたら満足に仕送りが出来なくなると

必死に手を合わせる衛兵


衛兵の必死さを察したラヴィニアは安心させる為に口を開く


「わかったわ、私が貴方を魔法で眠らせた事にしといて上げる」


「子は甘露の夢に微睡む」


睡眠魔法を掛けられ前に倒れ込む衛兵をラヴィニアは細い腕で支え

起こさないように衛兵の腰をゆっくり降ろしてあげる


「いい夢を見ながらおやすみなさい」

と、ラヴィニアは名も知らない衛兵の耳元で優しく囁く



ジャラジャラ装飾の付いた幕舎の垂れ幕を音もなく通り抜け

将軍のベッドに忍び寄るラヴィニア


「起きなさいルグラン」

優しく言いながら力いっぱいルグランの頬を叩く


「誰だワシを叩くのは?」

目を開くと恐ろしい顔で睨むこの世で最も畏れる人がいた


「うぉぉ!ラヴィニア先生!」

ベットから飛び起き正座するルグラン


「ラヴィニア先生…何故ここに?まだ視察の途中のだったのでは?」


「貴方が怠けてないか心配で急いで帰ってきたのよ」


「衛兵には誰も入れるなと厳命したのに」

ルグランがボソッと小声で言った言葉にラヴィニアは激怒する


「このおバカ!この忙しい時に司令官が寝てる暇があると言うの!」

この戦時に寝ぼけているルグランをラヴィニアは叱責する


ルグランはラヴィニアを先生と呼んでいるが弟子と言う訳では無い

ラヴィニアが士官学校で魔法攻撃学の教鞭を執っていた時の

教え子の1人がルグランだった


「ホントにもう貴方は幼い頃から怠けるのが得意なんだから」


ルグランの母アルルと親友であったラヴィニアはルグランがハイハイしてた頃から知っていて数回だがオシメを変えたこともある


だからルグランは総勢4万の軍を預かる立場になってからもラヴィニアに頭が上がらない


「先生、本当は私の事が心配で急いで帰って来た訳では無いでしょう?」


何かを察した顔のルグランを見て

ラヴィニアは優しく微笑んだかと思うと直ぐに


「やっぱり貴方は私の教え子ね」


「先生のその笑顔は嫌な予感がします……」


ルグランは長い付き合いのラヴィニアの満面の笑みに不安を感じていた


昔からラヴィニアは母アルルに頼み事をする時に同じ様に

満面の笑みを浮かべているのを幼い頃から見ている


「私に皇帝陛下に繋がる貴方専用の通信宝珠を貸しなさい、これは命令よ」


「えぇ!先生、そんな事は無理ですよー、あれは皇帝陛下から直接手渡された物で私以外が使うなど許されて無いんですから!」


「私が皇帝陛下に処罰されてしまいます。

 良くて左遷、最悪で打首かも…」

ルグランは悲壮感漂わせ名演技でラヴィニアを脅すが


ラヴィニアは手をヒラヒラとさせながら聞く耳を持たない

「貴方に害が及ばないようにしておくから安心なさい」


ラヴィニアが端から聞く気が無いのはルグランは重々承知している

だが皇帝陛下に後から言い訳出来るように口答えをせねばならない

「本当ですか?もし打首にでもなったら化けて出てやりますからね」


4万の将兵を預かる元教え子のアウラ皇国屈指の名将ルグラン将軍を

華麗に説得したラヴィニアはアウラ皇帝に許可を得る為に将軍が持つ

公式の皇都に繋がる通話の宝珠を使用する


通信宝珠を起動すると『ブォォォオーン』と音を立て

絢爛豪華な部屋が見えた


「あぁー、もしもーし、もしもーし皇帝陛下ー

 エストラム皇帝陛下居ないの?」


世界最大の権力者の皇帝に対して、ラヴィニアのあまりの軽口に

ルーファスは首を振り、ルグランは口を開け呆れていた


「トラムちゃーん、忙しいの?

 それならお姉さんが今からそっちに行くね」


皇帝が出ない事にシビレを切らしたラヴィニアは

転送魔法の呪文を詠唱し始める


「我は開く、時と空間の扉」


皇帝エストラムに直接会う為、大きく口を開けたルグラン将軍を残し

ルーファスと少年を連れ、皇都に一瞬で飛んだ


その頃アウラ皇帝エストラムはメーロア王国との戦争の

今後の方針を決める会議に次ぐ会議で忙殺され

ラヴィニアの通話に出る事が出来なかった




文章力を鍛えるために日々研鑽です…

次回も読んでくれると嬉しいです。

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