ラブレターの花束を君に
『僕は君に巡り合うために何度生まれ変わりを繰り返して来たのだろう。たとえこの先、ありとあらゆる記憶を失っていく定めなのだとしても、いつも胸に溢れてやまない君への想いだけは、決して手離さないと誓う』
『大切な君がこうしてずっと傍にいて、優しく支えてくれているだけで、僕は世界中の誰よりも幸せだよ。いつも本当にありがとう』
『どうか僕と結婚してほしい。二人の幸せを探し、手に入れるためならどんな努力も一切惜しまないと約束する』
『気が付けば君を目で追ってしまっている。視線が合うたびに心臓が爆発しそうになる。愛しさでおかしくなりそうだけど、この気持ちを上手く表現できないのがもどかしい……月並みで陳腐な表現しかできないのが悔しい……』
『今日も君は美しい。まるで天使のようだ』
『どうして君はそんなにかわいいんだろう』
『ぼくはあなたのことがだいすきです。つきあってください』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「こうして子供の頃まで遡って読んでみると、最初にあなたから貰ったこのラブレターが一番シンプルでひたむきな感じがして良いわね」
「おいおい、酷いことを言わないでくれよ。いつだって、どうすれば僕の想いが君に伝わるのか真心を込めて書いてきたつもりなのに。小説家の道を志したのも、どうすれば文字で愛を表現できるか学ぶためなんだよ」
「大事なのは文章に込められた気持ちの方でしょ? 綺麗なだけの言葉をただ流麗に書き連ねればいいってものじゃないわ。そもそもラブレターって告白するときに渡すものじゃないの?」
「そんな決まりはないさ。君への想いを書き尽くすには何千通あっても足りないよ」
「ほら、またそういう気障な台詞ばっかり。たまにはストレートに愛情表現してくれたって……」
「君を心の底から愛してる」
「………………うん……ま、まあ……悪くないわね……」
「……ああ、君って本当に……」
「何よ! 素直じゃなくて悪かったわね!」
「……また怒らせてしまった……照れている姿も可愛いと言いたかっただけなのに…………今度は、一体どんなラブレターを渡したら機嫌を直してくれるかな」