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8話 幼なじみ

蓮が白に生徒会を勧められた次の日の昼休み。

教室で蓮はいつものように光里と一緒に昼食を食べようと、弁当箱を取り出す。


「蓮ちゃん、」

後ろから声をかけられ、蓮が振り返るとそこには翼咲がいた。

「翼咲先輩、何かごようですか?」

「うん、ちょっとね。もしよかったら一緒に昼ごはん食べない?」

翼咲は蓮にそう言うと、隣子含めクラスメイト達が驚いた表情で二人を見る。

蓮は周りの目は気にせず、光里に向くと、光里は蓮に大丈夫だよとうなづく。


「はい、大丈夫ですよ。」

蓮はそう言うと、翼咲は嬉しそうな表情をして、ついてきてと言った。

蓮はお弁当を手に持ち、翼咲の後を追った。


翼咲は体育館のそばのベンチを案内してくれた。

「ここは、この時期、日陰になっていて、居心地が良いんだ。」

翼咲はそういうと、ベンチに座り、自身の弁当を取り出し、食べ始める。

蓮もベンチに座り、弁当を食べ始める。

天気が良く、夏の近づきを感じさせる暖かな心地よい風が吹きぬける。


「蓮ちゃんは結局何か部活に入った?」

「いえ、無所属です。」

「それなら、バレー部に入ろうよ。」

翼咲は顔を上げて、蓮を見ながら言った。


「パレー部は面白いと思うんですが、毎日するのはちょっと。」

「そんなぁ。楽しいよ。」

残念そうに翼咲が言う。


「そういうば昨日に部活じゃないんですけど、生徒会に見学に行きましたよ。」

「生徒会に?」

蓮は翼咲の顔つきが険しくなったように感じたが、話を続けた。

「はい。そういえば生徒会の白先輩から、翼咲先輩も生徒会に推薦されたって聞きましたよ。」

「……。」

翼咲は黙り込み、難しい表情をする。


「翼咲先輩?」

「もしかして白に生徒会薦められた?」

「そんな感じでした。」

「ふーん。」

面白くなさそうに翼咲は言った。


「白、私のこと何か言ってた?」

「いえ、翼咲先輩が推薦されたこと以外は特には。」

「そう。」

翼咲はそう言うと、顔を歪め、口をぎゅっと結んだ。

そして、顔を上げると真剣な眼差しで蓮を見る。


「蓮ちゃんって、昔の白に似てる気がする。」

翼咲はそういうと、蓮に近づき、じっと見つめてくる。

蓮は動じず、見つめ返す。


「フフ、そういうとこは違うかな。」

翼咲がクスリと笑うが、蓮はなぜ笑うのかわからず、戸惑う。

「翼咲先輩と白先輩って、友達同士なんですか?」

「……友達っていうより、幼なじみなのかな。小さい頃から近くに住んでたんだ。」

「そうだったんですね。今もよく遊んだりするんですか?」

「今は、あんまりそういうのはないかな。」

翼咲は寂しそうにポツリと言った。


その後も学校のことや部活動の話をし、昼休みが終わる時間になったので、

蓮は翼咲と別れて、教室に戻る。

教室内では、隣子を筆頭にクラスメイトから質問が飛びそうになりそうな状況だったが、

チャイムが絶妙のタイミングでなり、まのがれたのだった

光里の方を見ると、ニッコリと笑を返してくれた。


授業が終わり、放課後になった。

蓮は光里を連れて、そそくさと教室を出ようとする。


「蓮さん、お昼に翼咲様と何を話されたのかしら?」

しかし、さすがは報道部というべきか噂好きというべきか、隣子は速かった。

背後から隣子に声をかけたのだった。

蓮は気にせず駆け抜けるべきか一瞬迷う。

ただ、誤解を生む可能性を鑑みて、正直に話したのだった。


「バレー部への勧誘とか、学校生活のことだけだよ。本当にそれだけ。」

「あら、そうなの。ふーん。」

隣子は欲しかった回答ではないようで、意地悪く見てくる。


「本当にそれだけだから。光里ちゃん行こ。」

蓮はそういうと、蓮の手を取り、教室を出たのだった。


「ふぅー、ここまでこればいいでしょ。」

他のクラスメイトからの質問は回避して、校門の外で息をつく。

すると光里は訝しむように蓮を見つめていた。


「蓮ちゃん、本当に何もなかったの?」

「う、光里ちゃんまで聞いてくるんだ。」

悲しそうに蓮が言うと、光里は慌てて首を振る。


「違うよ。蓮ちゃんが言いたくないなら、聞かないよ。」

そういい、手で口を塞ぐ仕草をする。

「冗談だって。光里ちゃんなら安心して話すよ。ただ、本当に雑談してたくらいだから。」

「えっ、でも翼咲先輩は蓮ちゃんのこと好きなんじゃないの?お昼にわざわざ一年生の教室まで来るくらいだし。」

「好きって。ただのバレー部への勧誘くらいの感覚だったはず。」

「なーんだ。少し残念かも。」

と光里は残念そうな表情をした。

光里は恋愛脳なのかもと、蓮は思った。


「蓮ちゃんは、翼咲先輩とも白先輩とも仲良いみたいだけど、」

光里が蓮の方を見て、言った。

「どっちの方が好きなの?」

「……どっちかって」

蓮は翼咲と白のことを思い浮かべる。蓮にとってどちらも好ましく素敵な人だった。

ただ、恋人として考えると、翼咲、白の間で少し揺れ動いてしまう。

翼咲はカッコよく、積極的で誰よりも熱いところは魅力的に感じるし、

白のキリッとした中にある落ち着つきと、時折見せる可愛らしいところも魅力的に思えた。

そもそも、翼咲と白は幼なじみで、今は違うかもしれないがお互いを認め合っている友人同士なはずだ。

その二人から選ぶとすると。。。蓮は迷った。

むしろ二人が


「蓮ちゃんは迷ってるんだね。迷えるのはいいことだよ。」

「?」

光里が寂しそうに言うことに、蓮は一瞬驚いたが、

光里は蓮のことをやさしくフォローしてくれるようだった。

ただ翼咲と白のいずれかと恋人になることは、蓮は想像できなかった。


「じゃあ逆に聞くけど、光里ちゃんはどっちのほうが好きなの?」

「私は……二人とも好きだな。もちろん蓮ちゃんも。」

「何それ。」

光里と蓮は二人向かい合って笑い合った。

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