6話 委員会決め
翼咲とデートした次の週、蓮は翼咲と遊びにいったことを思い出しては微笑んでいた。
恋人というよりも友達のような感じだったが、それでも蓮は嬉しかったのだ。
学校に来て、授業が始まり、授業の休みになっても思い出し微笑んでいると、
光里が席の近くに来て話しかけてきた。
「蓮ちゃん、休みはどうだった?」
「休みねぇ。楽しかったよ。」
「もしかして翼咲先輩と恋人同士になっちゃった?」
「え、何!?すごい話してない?」
光里が蓮と翼咲が恋人同士という話をした瞬間、隣の席の隣子が勢いよく振り返る。
隣子の目は爛々と、スクープを狙うワシのような目をしていた。
報道部の犬に察知されるとまずい、蓮は直感した。
「隣子さん、聞き間違い。乙女ゲームの話。実在の人物とは関係ありません。」
「あら、そう。蓮さんもゲームなんてするのね。」
隣子は興味を失ったようで、教室を出ていく。
蓮は光里に無言で隣子には伝えないでとポーズする。光里はわかってくれたようで、隣子が出ていくまで何も言わなかった。
隣子が出ていくのを見届けると、蓮は光里に向く。
「恋人にはなってないけど、それなり良い感じだったかな。」
照れながらそう言うと、光里も嬉しそうに微笑む。
「えー、いいなぁ。手はつないだ?キスはした?」
「まだ早い!でも手は……つないだかな。」
「はぁ、いいなぁ。」
光里は何かを思い浮かべているようで、うっとりと宙を見上げる。
「フフ。まぁね。」
蓮はまんざらでもないように答えた。
ただ、蓮は記憶をよくよく思い出すと、翼咲から手を差し出されていたが、
その意味に気が付かず、手を取っていなかったことに気がついてしまった。
その日の午後のホームルームで委員会を割り当てすることになった。
クラス全員が何かしらの委員会に入らないといけないのだった。
蓮は可能な限り楽な委員会に入ろうと、誰もやりたがらない地味な委員に手を上げ、すぐに決まった。
一方で光里は何にしたものか迷っているようだったが、ある委員で手を上げた。
それは、学級委員だった。
周囲から驚きの声と訝しがる声が上がる。
光里はお世辞にも学級委員としてやっていけるように見えないからだった。
光里が先に手を上げたのは良いが、学級委員は2名でもう1名が立候補しない。
すると、クラスの中の一人が声を上げた。
「先生、光里さんが学級委員会になると、もう一人の方の負担が大きくて、誰も立候補できないと思います。」
それを聞いて、光里は寂しそうな表情をした。
そして一瞬蓮のことを見た気がした。
「先生、あの私、……やっぱり学級委員は」
「私も学級委員をやらせてください。」
光里の発言を遮るように、蓮は勢いよく立ち上がり、手を上げて立候補していた。
クラス一同驚いた表情をしていたが、蓮さんなら安心と安堵の声が聞こえてくる。
蓮が光里の方を見ると涙を目に浮かべながらも嬉しそうな表情で笑みを返してくれた。
ホームルームが終わり、放課後になると光里は蓮のもとに駆け寄る。
そして、蓮の手を両手で取る。光里の手は暖かかった。
「蓮ちゃん、ありがとう。」
「何がよ。」
「一緒に学級委員になってくれたじゃない。」
「まぁね。たまにはそういう委員会に入るのも悪くないかなって。」
と蓮は翼咲の話し方がうつったかもと思いながら、キザっぽく言った。
「あらあら、蓮さん、翼咲様や白様だけには飽き足らず、光里さんにも手を出そうとしているのかしら?」
隣子さんが、冗談めかして言う。
光里は照れて手を引っ込める。
すると蓮は隣子の方に向き、真剣な眼差しで隣子の手を掴む。
「いや、それだけじゃないよ。」
蓮にじっと見つめられて隣子は驚き、頬を染める。
隣子の反応に満足すると、蓮は大きく笑った。
そして、蓮の冗談だとわかると隣子も笑った。
光里は二人を見ながら優しく微笑んでいた。