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5話 恋人候補

蓮が部活説明会でバレー部の翼咲、陸上部の白と出会ってから、

報道部に入った隣子から話を聞いたり、噂話で聞いたりして、二人のことをよく知るようになっていた。

二人とも王子と言われているだけあって、翼咲、白ともにルックスが良く、家柄も良く、スポーツ万能、さらに成績優秀と四拍子揃っているようだった。

翼咲は熱くなるタイプで、白はクールという性格の違いも人気を二分していることもわかってきた。

蓮はだんだんと翼咲、白が恋人として良いように思えていた。


しかし、部活動説明会の後は、蓮は翼咲、白とも接点はなくなっていた。

部活見学のときに途中で抜けたこともあり、結局、蓮と光里も陸上部にもバレー部にも、そもそも部活動に入らなかったのだ。


そして、その日も二人は放課後になると帰途につこうとした。

蓮と光里は下駄箱から靴を取り出し、校舎から出る。


「蓮ちゃん」

大きい声で呼びかけられ、蓮が振り返るとそこには、蓮の方に走ってくる翼咲がいた。

「翼咲先輩、どうしたんですか?」

翼咲は蓮の前に立ち、蓮と目を合わせる。

真剣な眼差しだったので、蓮はドキリとした。


「蓮ちゃん、いつまで立っても部活体験に来てくれないし、こっちから来て、って言いに来たわけ。」

「えっと、その、私は今は部活動は入らないつもりなんです。自分の時間を持ちたいので。」

「……。うん、それなら仕方ないかな。」

蓮が遠慮がちに答えると、翼咲は残念そうではあるが納得したみいだった。


「ところで、今週の休みは空いてたりする?空いてるなら、遊びに行こうよ。」

「え、私とですか?」

「他に誰かいるの?」

「いえ、」

蓮は、翼咲に急に遊びにいくことを提案されて驚く。


「へぇ、いいじゃん、行ってきなよ。」

側にいた光里は意味深な笑みを浮かべながら言った。


「うーん、それじゃあ、行きます。」

「良かった。どこか行きたいところある?」

「今は特にないです。」

「そう、なら私の行きたいとこ、ついてきてくれる?」

「はい、大丈夫です。」

「じゃあ、約束ね。」


翼咲は、そういうと嬉しそうに颯爽と体育館に向かって走っていった。

蓮は翼咲を見送りながら、デートイベントが来た?とぼんやり思った。

ふと我に帰って、光里を見ると、光里は微笑ましいものを見たような表情をしていた。


「蓮ちゃん、翼咲先輩と良い感じだね。」

と囃し立てるように言った。

「……うるさい。」

蓮は照れながら、ムスッと返した。


蓮は帰宅して自室のベッドに倒れ込む。

頭の中では翼咲のことを考えていた。

起き上がり、予行演習的に何を着ていくか、服を見ながら考える。

そして、悩んだ結果、最終的に自分の好きな服を着て行こうと決めたのだった。


そして、翼咲と遊びに行く日になった。

駅前で待ち合わせし、時間通りに蓮は到着する。


「蓮ちゃん」

声をかけられ、見ると白いシャツと黒いズボンをスマートに着こなした翼咲が立っていた。

いつもと違う雰囲気に、普段よりも格好が良い気がして見惚れてしまいそうになる。

「翼咲さん、お待たせしました。」

「ううん、こっちも今来たとこ。じゃあいこっか。」

翼咲はそう言うと何気なく手をさし出す。

「はい、行きましょう。どこに向かうんですか?」

蓮がそう言うと、翼咲は一瞬戸惑ったような表情をした。

そして、翼咲は手を引き込み、行先を告げた。


蓮と翼咲は、翼咲の好きなお店やカフェを回った。

翼咲は行動的で、コロコロと表情が変わり、見ていると楽しい気持ちになった。


そして、夕方になり、二人は帰途に着くことになった。

帰り道に二人は駅まで歩く。


「翼咲先輩は、どうして私を誘ってくれたんですか?」

蓮は気になったことを伝えた。

「え、それ聞いちゃうの」

翼咲は照れ笑いをしながら話す。


「見学会のときに、蓮ちゃんが目立ってた。」

「私目立ってましたか?」

「うん。一年生って子供っぽくて垢抜けない感じな子が多いのに、一人だけ違う子がいたって感じだった。」

何か蓮は真正面から褒められて顔を赤らめて照れてしまう。


「ふふ、照れるところもすごく可愛いね。」

翼咲はそういうと、自然に手を伸ばし、蓮の髪を撫でる。

「!?」

蓮は驚き、体を引いてしまう。

翼咲自身も自然と手が出たことに驚いたようで、ごめんと謝る。


「蓮ちゃん見てると、昔の白を思い出す。」

翼咲がぽつりと呟くようにいった。

「白先輩?もしかして陸上部の?」

「そうそう、もしかして知ってるの?」

「はい、陸上部も部活見学に行ったんです。」

「あの子、ブスッとしていたと思うけど、前はもっと可愛らしい感じだったんだよ。」

蓮は白のことを思い出すが、ブスッとしていたようではなかったので、不思議に思った。


「翼咲先輩と白先輩って知り合いだったんですね。」

「子供の頃からの幼なじみ。幼稚園に行く前から知ってるよ。」

翼咲は優しい表情で、懐かしむようにそう言った。


「またね。」

駅に到着し、二人は別れて帰途に着く。

フフっまたね、か。蓮は帰り際に翼咲に言われたことを思い出し、微笑む。

今日のデートは楽しく、また翼咲と一緒にデートに行けるのは楽しみだったからだ。

ただ、半面、何かが違う、とも思った気がした。

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