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4話 続部活動見学

「えっと、本当に今日も部活見学行くの?」

放課後になり、蓮は光里に向かって尋ねた。

光里は昨日にバレー部の説明聞いた後に手が痛いと泣きながら帰ったというのに、

懲りずに今日も部活見学に行きたいと言い出したのだった。


「うん、昨日は室内だったから、今日は屋外の部活動を見に行きたいんなって思ってるんだ。」

光里は笑みを浮かべ元気よく言った。

「手は大丈夫なの?」

「あぁそれはなんだけどね。昨日の夜まで痛かったんだけど、朝になったら痛くなくなってたの。

それに手を使わない部活にすれば良いはずだし。」

「そうだとは思うけど。」

蓮が乗り気でない感じで答えると、光里はまた懇願したような表情で蓮をじっと見る。

光里のその表情に蓮は負けた。


「……わかった。じゃあ今日もついていくだけだからね。」

「ありがとう!蓮ちゃん!」

光里はパッと可愛らしい笑顔になった。


蓮と光里は教室を出ると、陸上部が活動をしているグラウンドに向かった。

光里は、手を使わない部活として、走る競技を挙げたのだった。


屋外のグラウンドには、多くの部が活動していた。

ソフトボール、サッカー、陸上と、逞しく焼けた肌をした生徒が多かった。

一方で肌の白い生徒は部活見学に来ている一年生と一目見てわかった。


陸上部はトラックのそばに集まるということで、二人は向かった。

すでに部活説明は始まっているようで、一年生は熱心に説明を聞いているようだった。

蓮と光里はその後ろについて説明を聞く。ちょうど中長距離走の説明のタイミングだった。

光里は熱心に話を聞いているようだった。

蓮はあまり気乗りしないので、説明は聞き流しながら、周りを見た。


「あれ?」

蓮は昨日バレー部に見学に来ていた一年生が多く見学に来ていることに気がついたのだった。

そして、部活の説明を聞くというよりは、一心に何かをじっと見ているようだった。

目線を追っていくと、そこにはスラリとした褐色の長身、黒いショートヘアのキリッとした顔つきの選手がいた。

どうも一年生の目当てはあの先輩のようで、過半数が羨望の眼差しで見つめているようだった。

光里はそんなこと気にも留めないようで、部活の説明を見ていたが。


部活説明が終わると陸上部体験として、100m測定をすることになった。

任意参加ではあるが、全員体験する流れだったので、蓮も乗り気ではなかったが参加することになったのだった。

光里はというと乗り気なようだった。


準備運動から入り、体が温まってから100mトラックに着く。

陸上部の実力を見せるということで、一年生と一緒に陸上部の選手も走る。

選手たちは普段から鍛えているだけあって、前にぐんぐん進んで行き、差をつけて一年生達に勝っていた。


蓮の番になったので、位置に着く。

すると説明会の時に一年生から視線を浴びていた選手が隣に着いた。

蓮が見ているとその選手も向き、目が合う。

視線を前に向け、走るコースに集中する。


「あんまり力まないようにね。深呼吸して落ち着いて走るように。」

蓮の緊張に気がついたのか、声をかけてくれる。

言われたように蓮は深呼吸する。

そして、ホイッスルが鳴り、蓮は走り出す。

前にも隣にも人は見えない。なんと蓮はフライング気味ではあったが、スタートダッシュに成功し先頭を切ったのだ。


しかし、さすがは陸上部。

ぐんぐん追い上げてきていた。

蓮も負けじと前に出ようとする。

しかし70mあたりから蓮はそれ以上加速ができかったが、隣のコースではさらに前に出てきていた。

そして90mあたりで蓮は抜かされ、そのままゴールとなった。

蓮ははぁはぁと息を吐く。


「早いね。もしかして中学の頃、陸上やってた?」

少し息を切らしたくらいで、軽やかに可愛らしい笑みで話しかけられる。

遠くで見るとキリッとしているように見えたが、近くで見ると可愛らしさがある人だった。


「いえ、特に何もしてなかったです。」

「本当に?それなら陸上の才能あると思う。」

「そんなことないですよ。先輩の方が早かったですし。」

「私は中長距離だけど、毎日走ってるから。えっとあなたは、」

「私は蓮といいます。」

「蓮さんね、私は2年の(ハク)、よろしく。」

蓮は白と話しながら、元の場所に歩いて戻る。

トラックでは次の走者である光里が走り始めようとしていた。


「蓮さん、もしよかったら、明日から」

「光里ちゃん!?」

白が何かを言おうとしていたが、蓮は目の前の出来事に驚く。


光里がトラックの途中で転んだのだった。

蓮は光里に駆け寄る。

光里ははぁはぁと息を上げ、足を抱える。

蓮が膝を見ると軽く擦り切れているようだった。


「光里ちゃん、大丈夫!?」

「蓮ちゃん……、足が……。」


「うーん、これは擦り切れてるだけだけど……立てる?」

白も光里のそばで声を掛ける。

「うぅ、痛い。」

光里が一人で立てそうにないので、白と協力して蓮は光里の肩を担ぎ、立ち上げる。


「光里ちゃん、歩ける?」

「多分……。」


光里は立ち上がるとなんとか歩けそうだったので、蓮は光里の肩を担いだまま保健室に向かった。

光里は走ったばかりということもあり、暖かな体温が伝わる。


保健室に着き、保険の先生に見てもらったが、白の言った通り、擦り傷だけだった。

光里は先生に消毒と絆創膏を貼ってもらう。

さらに、保健室のベッドを使わせてもらえることになり、光里は倒れ込む。


「うぅー。」

と100mの途中まで走っただけのはずだが、光里はバテているようだった。


「光里ちゃん、体力なさすぎない?」

「うぅ、言い返しぇません……。」

光里は力なくそういうと、少し眠りについたようだった。

蓮は光里の安らかな寝顔を見て、ほっとした。

そして、陸上部の体験に戻る気にもなれなかったので光里が起きるまで、そばでその日の授業の復習と明日の予習をした。



次の日、学校に校門を抜け、玄関口に向かうとそこに白が立っていた。

「蓮さん、おはよう。」

白に声をかけられて、蓮は挨拶を返す。


「光里さんはあの後大丈夫だった?」

「はい、保健室で治療してもらって、そのあとベッドで寝て起きたら、膝の擦り傷のことも忘れているくらいでした。」

と言うと、蓮も白の二人は笑い合った。


「それならよかった。」

と白が言い、蓮と真正面に向き合う。

白はバレー部の翼咲よりも低かったが、蓮より高身長だった。

その顔は黒く焼けて整っていてかっこいい感じだったが、可愛らしくも見えた。


「ところで蓮さん、陸上部に興味持ってくれた?」

「面白いとは思うんですけど、正直なところそこまでは……」

「そう……。」

残念そうに白がそういうと、蓮は何か罪悪感を感じてしまう。

すると白はフッとやさしそうな笑みを浮かべる。

「でも諦めたくないな。またね。」

そういうと、蓮を残して白は去っていった。

「またね?」

デジャブと思いながらも、蓮は教室に向かった。


教室に入り、席に着くとその日も隣の席の隣子は蓮に勢いよく話しかけた。

「蓮さん、今日は白様と話してたみたいだけど、何の話をしてたの?」

「白様……。隣子さん、昨日陸上部見学に行ったから、その話。」

「ふーん。そうなんだ。でも本当にそれだけ?」

「それだけ。あと陸上部に興味あるかって話をしたよ。」

「え、でもしかして陸上部進められた?」

「進められたのかな?ただあんまりって話はしたけどね。毎日走るなんでなんかやだし。」

「そうなんだ……。断ったんだ……。」

隣子は意味深に考えるような表情をした。

そして、一人納得したような表情をしてぽつり呟いた。

「やっぱり蓮さんすごいわ。昨日は翼咲様、今日は白様、学園の二大王子様に迫られるなんて。」

「に、二大王子様とは……。」

「ふふ、それはね。」

と隣子は翼咲と白が王子様としても学校内で特に人気があることを教えてくれた。

蓮は白も王子様の一人であることを知り、ふに落ちるものがあった。

あと、蓮は白に迫られてはいないと隣子に釘を刺しておいた。


授業中、グラウンドを眺めながら、

もしかして二人目の出会いイベントきたかのかしら、と蓮は思った。

蓮は、翼咲と白のことが気になってきたのだった。

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