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17話 想い発露

文化祭も終わりに近づく。三人で一緒に校内を回り疲れて、体育館側のベンチに座っていた。

蓮は悠紀を認め、悠紀と光里を隣同士で、光里の隣に蓮は小さく座っていた。

蓮は二人の間を邪魔することはやめ、そして自身の恋は諦めよう、と思ったのだった。


「悠紀さんって、光里ちゃんのどんなところが好きなんですか?」

蓮は二人の中を冷やかすように言っていた。


「それ光里ちゃんの側で聞かれると恥ずかしいかな。」

と悠紀は珍しく照れて言った。こういう可愛いところも好印象だなと蓮は思った。

「光里ちゃんとは昔から一緒にいて、可愛い妹って感じ。このままずっと一緒にいたいなって思ってる。」


「そうなんですね。」

蓮は寂しそうにそう言うと、光里の方を見た。

光里はぎゅっと拳を握り締めていた。


急に光里は立ち上がり、悠紀の方を見た。


「悠紀さん、私、許嫁解消してもらっていいですか?」

蓮だけでなく、悠紀も驚いたように光里を見た。

「……。いきなりだね。光里ちゃん、今日僕が何か悪いことしたかな?」

「違うんです。ずっと前から思ってました。」

光里は顔を俯けながら、そう言う。

悠紀は立ち上がり、光里の肩に触れようとした。


蓮の動きが早かった。すぐに悠紀と光里の間に立ちはだかった。

「悠紀さん、光里ちゃんの話を最後まで聞いてください。」

「蓮ちゃん、」

光里は蓮の後ろでほっとしたように息をついた。

そして、話を続けた。


「私まだ恋って何がわかりません。小さい頃に許嫁をつけられて、

その人と結ばれることが決まってから、わからないんです。」

悠紀は蓮の肩越しに光里を見つめていた。

悠紀の表情は悲しんでいるようにもみえ、苛立っているようにも見えた。


「でも、この学校に入って蓮ちゃんと付き合ってみたいって思ったんです。」

「光里ちゃん?」

「蓮ちゃん、前に私に告白してくれたよね?

今も同じ気持ちと思っていいのかな。」

光里は泣きそうな声でそう言った。蓮は迷わなかった。

「もちろん。私は光里ちゃんのことが誰よりも大好きだよ。」

蓮が強くそう言うと、光里は笑みを浮かべた。


「光里ちゃん、その気持ちは本心なんだね?」

悠紀は確認するようにそう言った。

光里はうなづく。


「わかった。それなら君の家にも打診してみるよ。」

悠紀は諦めたように、悲しい笑を浮かべてそう言った。

光里も蓮も悠紀があっさりと引くことに驚く。

悠紀ははぁーとため息をついた後に語り出した。


「僕も、本当は光里ちゃんが僕のことを怖がっているとはわかってたんだ。」

「悠紀さん、」

「あの晩の僕はどうかしてた。光里ちゃんの姿が美しくて仕方なかったんだ。

あの日の君の怯えた目が忘れられない。その後も二人きりになると怯えたような表情にさせてしまってたよね。」

悠紀は後悔するように目をギュッとつむる。


「もっと前に僕の方から言うべきだった、でも両家の決めたことで逆うことは考えられなかったんだ。

でも君が立ち上がってくれたことで、気持ちに整理がついたよ。」

「ごめんね。後、あの夜に怖がらせてしまって本当に悪かった。」

悠紀はそう優しい表情で言った。

悠紀と光里の間のしこりも取れたように、蓮も感じた。


悠紀は話終えると、堂々とした佇まいに戻った。

「僕は先に帰るよ。」

そう言うと、笑みを浮かべて去っていく。

最後に蓮に向かって振り返った。

「蓮さん、光里ちゃんのこと……。いやまた三人で会いましょう。じゃあね。」

悠紀は手を振り、そう言って去っていった。


残された蓮と光里はベンチに座る。

光里の方を見ると、赤くなっているようだった。


「光里ちゃん、でも一体どうして急に」

「わかんない。でもね、今日三人でいて、私はやっぱり蓮ちゃんのことが気になってるって思ったの。」

「悠紀さん、すごくいい人だったよ。」

「わかってる。でもね、」

光里はそう言うと、艶っぽい表情で蓮を見つめる。

「蓮ちゃんが一番優しいし、一番かっこいいよ。」


蓮は照れて恥ずかしくなり、顔を背ける。

「わ、私は別に。」

「それに一番美人。」

「そんなことないよ。」

「フフ、気付いてないのは蓮ちゃんだけだよ。蓮ちゃんが一番だってみんな言ってるよ。」

「え!?」

蓮は驚く。そして白に以前言われた話を思い出してしまう。

その蓮が考えている表情を見て、光里は微笑む。


「蓮ちゃん、かわいい。」

光里はそう言いながら、蓮を抱きしめた。

蓮は胸が跳ねるようだったが、光里を抱きしめ返す。

光里は暖かくずっとこのままでいたい、蓮は思った。

二人はそのまま文化祭終わりの放送が流れるまで、抱きしめ合った。


チャイムがなり、二人は教室に戻ることにした。

離れる前に蓮は光里と口付けしようとした。

ただ、とても嬉しそうな光里を見て、今日はこれで十分と思い、できなかった。

教室までの道のり、陽を浴びた草木が光り輝き、二人を祝福しているようだった。

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