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16話 再来

何事もなく日々は過ぎていった。

蓮は忘れたくても、忘れられない思いを抱えながら、毎日を過ごしていた。

そして、気がつけば文化祭の季節になっていた。


学校の文化祭は保護者や関係者は参加可能だった。

そういうこともあり、クラス全員張り切って、展示物の準備をし、文化祭当日になった。

クラス一同、力を合わせて展示物をセットしていただけあって、満足のいくものを作り上げていて

一同は、訪問者を今かと待ち受けていた。

そんな中ではあったが、光里は浮かない顔をしていた。


「光里ちゃん、何か顔色悪いけど何かあった?」

「ううん、大丈夫。」

蓮は前日までとは違う光里の様子に気がつき、声を掛けたが、光里は問題ないと言うだけだった。


そして、文化祭始まりの放送が流れ、外部の人が学校内への入場してくる。

蓮は教室の前で集客をしていた。

普段見慣れない生徒もいたし、保護者もいていつもと違う空気が流れていた。

その中に、異彩を放ち、周りの視線を浴びている人が教室に向かってきていた。

「こんにちは。光里ちゃんのお友達の蓮ちゃんだね?久しぶりです。覚えていてくれたかな?」

「……。悠紀さんですよね。お久しぶりです。」

それは、光里の許嫁の悠紀だった。

今日も社会人らしくスーツを着こなしていて、格好良く見えたが、それが蓮の癪に障る。


「光里ちゃんに会いにきたんですか?」

「そうなんだ。光里ちゃんは教室にいるのかな?」

悠紀はそういうと教室を覗く。

そして、光里を見つけたようで手を振る。

蓮も教室を覗くと、光里は微笑んでいたが、硬く手を振り返していた。


「入っていいのかな?」

「……。どうぞ。」

蓮は内心嫌だったが、そうとも言えず悠紀を教室に案内した。


「光里ちゃん、喫茶店の店員さんなんだね。服装似合ってるよ。」

「ありがとうございます。」

光里は固く応答する。

同じクラスの生徒は、光里に挨拶するかっこいい社会人が何者なのかと、気になって見ているようだった。


「休憩時間とか一緒に文化祭回ろう。昨日連絡したんだけど見てくれた?」

「……。はい、あと少しで休憩時間なんで、少し待っててください。」

光里はそう言うと、蓮の方に向かっていった。


「蓮ちゃん、今日一緒に文化祭回ろうって言ってたけど、悠紀さんと一緒に回らないといけなくなっちゃった。」

光里は残念そうにそして悲しそうに言った。

まるで悠紀とは回りたくないように蓮は感じた。

「ごめんね。」

そう言うと、光里は振り返り、悠紀の元に向かっていこうとした。

気づけば蓮は光里の手を取ってしまった。

「!?」

光里は驚いた表情をして、蓮を見た。

蓮も自分の取った行動に驚いたが、その勢いに任せた。

「光里ちゃん、私も一緒に回りたいな。」


蓮と光里は二人で、悠紀の元に向かう。

悠紀は落ち着いた表情をして、二人を見ている。

蓮は悠紀に近づき、光里と許嫁の間に入りながら、開口一番に言った。

「私も一緒に回ってもいいですか?」

「蓮さんも一緒に案内してくれるなんて、光栄だな。光里ちゃん、三人で回ろうか?」

「……。はい、悠紀さんがそれでいいなら。」

そして、文化祭は三人で回ることになった。

悠紀は何かを察知しているようで、冷たく微笑んでいるように見えた。


文化祭では、蓮は光里には笑みを、悠紀には睨みを利かすようにしていた。

しかし、悠紀はというと大人の落ち着きがあり、上品で面白い人だった。

三人で回る時間が長くなるにつれて、気づけば蓮も気さくに悠紀と話すようになっていた。

認めたくなかったが、蓮は悠紀のことを認めざる得なくなっていた。


悠紀はかっこうがよく人望がありそうだと。

会話も面白く、素敵そうで楽しい人だと。

そして、だんだんとこの人なら、光里を任せられる、と感じはじめていた。

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